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黎明期
第26話 連関②
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リィバの発言に、誰もが〝は??〟と不思議がったところ、
「初めまして。」
「パナーアと申します。」
先ほど地面に体を打ち付けていた女性が、丁寧に会釈した。
「その名前は確か…、“癒しを司る神”ですよね?」
記憶を辿ったマリーに、
「ええ。」
「そうした解釈で合っています。」
女性が穏やかに微笑む。
「まさか??」
「……、本当ですかな?」
怪しんだルシム大公が、慎重に窺う。
女性は〝ニコニコ〟しながら、
「間違いありませんよ。」
「これが証拠です。」
後光を発生させた。
全員が「ぬおッ!??」や「眩しい!!」といった感じで騒いだので、
「あ。」
「近距離で失礼しました。」
輝きを止めてくれる。
「ふむ…、きっと本物であろう。」
独り呟いた大公が、
「だとすれば、とんだ御無礼を!」
リィバのように跪く。
(いや、あれだけで信じてしまうのは安易すぎるのでは?)
僕が疑問を抱いていたところ、他の者たちが大公に倣おうとしていた。
〝え??〟と僕が困惑したタイミングで、
「ああ、そういうのは結構ですから、皆さん立ってください!!」
女性が突き出した両手を〝ブンブン〟と左右に振る。
それに従った流れで、
「して??」
「パナーア神様は何故ここに落ち……、お出ましになられたのですか?」
大公が言葉を選んだ。
「実は…。」
「ラルーシファさんと、アシャーリーさんに、お話しがあります。」
女神様が述べたら、
「では、一旦、中に入りましょう。」
こう提案する大公だった……。
▽
[客間]に主だった顔ぶれが集まっている。
それぞれに紅茶が配られたところで、
「よろしいでしょうか??」
パナーア様が見回す。
各自が頷いた事によって、
「まず…、お二人を始め、日本の方々を、この世界に転生させたのは、私です。」
このようにパナーア様が伝えられた。
「ん?」
「武神様ではなく??」
首を傾げた僕に、
「……、あぁー。」
「およそ五百年前の件は、私の伯母上様によるものですが、こちらは別です。」
パナーア様が答えてくれる。
「え?!」
「武神様って、女性だったんですか??」
僕がビックリしたら、
「そうですけど…。」
「あ、もしかして、文献に残されていなかったのですか?」
逆にパナーア様に質問されてしまった。
周りも、
「てっきり男神だとばかり……。」
といった反応を示す。
そうしたなかで、
「あの…、先ほどの口ぶりからして、〝私達以外も転生している〟っていうことですよね??」
アシャーリーが窺う。
「はい、その通りです。」
「が。」
「生まれ変わったのは、全体の半分ぐらいです。」
こう返したパナーア様に、
「なぜですか?」
アシャーリーが聞いたところ、
「亡くなった人の数が、そうでしたので。」
との事だった。
「……、つまり、〝生き残った人たちもいる〟と??」
新たに僕が尋ねてみたら、
「ええ。」
肯定したパナーア様が、
「あのとき、残念ながら助からなかったのは、男子生徒さん10名に、女子生徒さん10名、学級担任さんとバスガイドさんの1名ずつです。」
「他の生徒さんや、運転手さん、計19名は、傷を負いながらも命拾いしました。」
そのように教えてくれる。
「そうですか…。」
僕や、アシャーリーが、少なからず安堵しつつ、冷静になっていったところ、
「ラルーシファ王子達は、どのようにして転生なされたのでしょう?」
マリーが興味津々で伺う。
パナーア様は、
「えーっとですね……。」
「今から約10年前に、私は“思念体”を飛ばして、日本を観光していました。」
「そして、あの土砂崩れを、目撃したのです。」
「私が上空で戸惑っていると、天に召されようとしていた幾つもの魂が寄ってきました。」
「〝神様だぁー〟〝お迎えに来てくれたんだぁー〟〝わぁーい〟と、それはもう無邪気に…。」
「追い払うことなどできなかった私は、宙に漂っていた全ての魂を、つい、神殿の自室に連れ帰ってしまった後に、この世界に生まれ変わらせてあげたのです。」
こう喋られたのだ。
「〝その際に神法を授けられた〟という訳ですな??」
レオディンの問いに、
「いえいえ。」
「伯母上様のときもそうだったようですが……、魂そのものが神気に触れたことで、自動的に備わったみたいです。」
「ただし、個々の性質によって扱える種類が異なります。」
パナーア様が説明した。
誰もが〝ふぅ~む〟と納得するなか、
「初代ラダーム様と近衛衆は、同じ地域に転生していたり、15歳で前世の記憶が甦った、との事ですが…。」
「僕らは何故そうではないのでしょうか?」
再び疑問を投げかけてみたところ、
「伯母上様も、私も、できうる限りの範囲で皆さんの要望に応じた結果ですよ。」
そう告げたパナーア様が、ここから詳細を語ってゆく―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
[パナーア神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。
「初めまして。」
「パナーアと申します。」
先ほど地面に体を打ち付けていた女性が、丁寧に会釈した。
「その名前は確か…、“癒しを司る神”ですよね?」
記憶を辿ったマリーに、
「ええ。」
「そうした解釈で合っています。」
女性が穏やかに微笑む。
「まさか??」
「……、本当ですかな?」
怪しんだルシム大公が、慎重に窺う。
女性は〝ニコニコ〟しながら、
「間違いありませんよ。」
「これが証拠です。」
後光を発生させた。
全員が「ぬおッ!??」や「眩しい!!」といった感じで騒いだので、
「あ。」
「近距離で失礼しました。」
輝きを止めてくれる。
「ふむ…、きっと本物であろう。」
独り呟いた大公が、
「だとすれば、とんだ御無礼を!」
リィバのように跪く。
(いや、あれだけで信じてしまうのは安易すぎるのでは?)
僕が疑問を抱いていたところ、他の者たちが大公に倣おうとしていた。
〝え??〟と僕が困惑したタイミングで、
「ああ、そういうのは結構ですから、皆さん立ってください!!」
女性が突き出した両手を〝ブンブン〟と左右に振る。
それに従った流れで、
「して??」
「パナーア神様は何故ここに落ち……、お出ましになられたのですか?」
大公が言葉を選んだ。
「実は…。」
「ラルーシファさんと、アシャーリーさんに、お話しがあります。」
女神様が述べたら、
「では、一旦、中に入りましょう。」
こう提案する大公だった……。
▽
[客間]に主だった顔ぶれが集まっている。
それぞれに紅茶が配られたところで、
「よろしいでしょうか??」
パナーア様が見回す。
各自が頷いた事によって、
「まず…、お二人を始め、日本の方々を、この世界に転生させたのは、私です。」
このようにパナーア様が伝えられた。
「ん?」
「武神様ではなく??」
首を傾げた僕に、
「……、あぁー。」
「およそ五百年前の件は、私の伯母上様によるものですが、こちらは別です。」
パナーア様が答えてくれる。
「え?!」
「武神様って、女性だったんですか??」
僕がビックリしたら、
「そうですけど…。」
「あ、もしかして、文献に残されていなかったのですか?」
逆にパナーア様に質問されてしまった。
周りも、
「てっきり男神だとばかり……。」
といった反応を示す。
そうしたなかで、
「あの…、先ほどの口ぶりからして、〝私達以外も転生している〟っていうことですよね??」
アシャーリーが窺う。
「はい、その通りです。」
「が。」
「生まれ変わったのは、全体の半分ぐらいです。」
こう返したパナーア様に、
「なぜですか?」
アシャーリーが聞いたところ、
「亡くなった人の数が、そうでしたので。」
との事だった。
「……、つまり、〝生き残った人たちもいる〟と??」
新たに僕が尋ねてみたら、
「ええ。」
肯定したパナーア様が、
「あのとき、残念ながら助からなかったのは、男子生徒さん10名に、女子生徒さん10名、学級担任さんとバスガイドさんの1名ずつです。」
「他の生徒さんや、運転手さん、計19名は、傷を負いながらも命拾いしました。」
そのように教えてくれる。
「そうですか…。」
僕や、アシャーリーが、少なからず安堵しつつ、冷静になっていったところ、
「ラルーシファ王子達は、どのようにして転生なされたのでしょう?」
マリーが興味津々で伺う。
パナーア様は、
「えーっとですね……。」
「今から約10年前に、私は“思念体”を飛ばして、日本を観光していました。」
「そして、あの土砂崩れを、目撃したのです。」
「私が上空で戸惑っていると、天に召されようとしていた幾つもの魂が寄ってきました。」
「〝神様だぁー〟〝お迎えに来てくれたんだぁー〟〝わぁーい〟と、それはもう無邪気に…。」
「追い払うことなどできなかった私は、宙に漂っていた全ての魂を、つい、神殿の自室に連れ帰ってしまった後に、この世界に生まれ変わらせてあげたのです。」
こう喋られたのだ。
「〝その際に神法を授けられた〟という訳ですな??」
レオディンの問いに、
「いえいえ。」
「伯母上様のときもそうだったようですが……、魂そのものが神気に触れたことで、自動的に備わったみたいです。」
「ただし、個々の性質によって扱える種類が異なります。」
パナーア様が説明した。
誰もが〝ふぅ~む〟と納得するなか、
「初代ラダーム様と近衛衆は、同じ地域に転生していたり、15歳で前世の記憶が甦った、との事ですが…。」
「僕らは何故そうではないのでしょうか?」
再び疑問を投げかけてみたところ、
「伯母上様も、私も、できうる限りの範囲で皆さんの要望に応じた結果ですよ。」
そう告げたパナーア様が、ここから詳細を語ってゆく―。
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[パナーア神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。
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