19 / 111
黎明期
第19話 初めての島にて・結
しおりを挟む
僕はページを捲っていき、
「あった、これだ。」
[神剣ムラクモ]について記されていた箇所を見つける。
そこには…、
〝もともと此の剣を所有なさっておられた武神様によれば、柄より神力を流し込むとのことであった〟
〝なお、神力は、神通力とも呼ばれておる〟
〝話しを戻すと、魔術士らが専用の杖に魔力を注ぐかの如く成さねばならぬ〟
〝これによって剣身は神秘の光りを宿す〟
〝その状態で、剣を縦や横などに振るえば、光は弓なりに飛び、対象者を斬る〟
〝また、突きを繰り出せば、一直線に放たれた光が、敵を貫通す〟
〝故に、余は、これらを閃光斬に閃光貫と名付けた〟
こう書かれていた。
僕が伝えた事によって、
「“閃光斬”と“閃光貫”ですか!??」
「興味深いですね!!」
リィバの両目が〝キラキラ〟しだす。
「“神力”あるいは“神通力”というのは……?」
それとなく質問するマリーに、
「“神法”を使う際の力であろうな。」
「儂らに置き換えるならば“魔力”に該当するのじゃろう。」
レオディンが答えた。
「どうりで、これまで発動できなかった訳だ。」
苦笑いしたのは、ベルーグだ。
「ま、初代国王が本に残してくれていたお陰で判明したことだし…。」
「やってみせてください!」
「ラルーシファ王子!!」
より一層に瞳を輝かせるリィバの頼みを、
「いや、ムラクモは、大人用で重たいから、僕には上手く操れないんじゃないかな??」
やんわり断ろうとしたものの、
「後生ですからぁあ――ッ!!!!」
「お願いしますよぉお――ッ!!!!」
駄々を捏ねられてしまった。
「えぇ~?!」
僕が嫌がるなか、
「儂も興味ありますな。」
ルシム大公が、リィバを援護してしまう。
更には、僕の“教育係”と“お世話係”が〝うん うん〟と頷く。
〝はぁー〟と溜息を吐いた僕は、
「じゃあ、一回だけだよ??」
全員を窺う。
「では、庭にて。」
こう提案した大公に、
「いえ、どれほどの威力なのか分からないので、都市外のほうがよろしいでしょう。」
「周囲に被害が及ぶかもしれませんので。」
マリーが意見する。
「となると、ユニコーン車を手配する必要がありますね。」
そのようにユーンが喋ったところ、
「いや。」
「“瞬間移動”を扱える者に声をかけて、この館から赴くと致そう。」
ルシム大公が告げた。
これに対して、
「でしたら、儂が行ないましょう。」
「タケハヤ島には、それで渡ってきましたので。」
「それに……。」
「今はまだ、ラルーシファ殿下の情報があまり洩れないように慎重を期しておきたいのです。」
「まぁ、いずれは広まってしまうでしょうがな。」
レオディンが説明する。
それを受け、
「ふむ。」
「成程のぉう。」
理解を示す大公だった…。
▽
一階のエントランスで、レオディンが魔法を用いる。
ちなみに、“例の紳士”などは、お留守番だ。
いずれにしろ。
僕達は、初日に訪れた場所へと【テレポート】していた。
つまり、[南門]の近くだ。
「この距離だと、いささか人目が気になりますね。」
マリーの指摘によって、
「ならば、もう少し南下するとしよう。」
こう促すルシム大公だった……。
▽
暫く歩いた僕らは、適当な場所で足を止める。
「アイテムボックス、オープン。」
“縦40㎝×最大横幅20㎝”といった[楕円形で白銀色の渦]を出現させた僕は、両手で掴んだ剣を引っ張った。
ベルーグに協力してもらいながら抜いた[ムラクモ]の先端を地面に着けて、
「それで?」
「どうすればいいの??」
僕がレオディンに視線を送ったところ、
「そうですなぁ。」
「“魔法の杖”と同じ要領であれば…。」
「〝神法陣を構築するときの感覚で〟としか言いようがございません。」
そのように返されてしまう。
困惑した僕ではあったけど、なんとなくイメージしていく。
すると……、剣身が“金色”に輝きだした。
「これ、どうしよう?」
誰ともなく尋ねた僕に、
「現時点でのラルーシファ殿下は、空に向かって払い上げるのが精一杯でしょう。」
「もしかしたら、飛行中のペガサス便かモンスターに直撃してしまうかもしれませんが…。」
ベルーグが述べる。
「えッ??」
おもわず固まってしまった僕を、
「きっと大丈夫ですよぉー。」
「ささ、王子。」
「〝どぉ~んッ〟といっちゃいましょう!!」
リィバが〝ニコニコ〟しながら煽ってきた。
他に方法が無さそうだったので、
(当たったら、ごめん!)
心の中で謝った僕は、[ムラクモ]を下から上に振るう。
これによって、最大幅10㎝×長さ2Mといった“金色の閃光”が三日月状に放たれる。
その反動で僕が草原に背中を打ち付けるなか、居合わせたメンバーは[閃光斬]に〝おお――ッ!!!!〟と興奮していた。
とりあえず立とうとした僕は、途中で〝ガクンッ!!〟と脱力して、前のめりに倒れ、両手を地に着く。
こうした容態が視界に入ったらしく、
「ラルーシファ様!?」
ユーンが案じる。
「魔力、いや、〝神力切れ〟かもしれん。」
そう推測したレオディンが、
「亜空間収納よ、開くべし。」
「……、殿下、こちらを。」
栓を抜いた[透明の瓶]を差し出す。
どうにか座った僕は、中身の“ピンク色の液体”を飲み干していく。
「如何ですかな??」
レオディンに心配されながら、改めて起きようとするも、無理だった。
「うぅ~む。」
「〝魔力回復ポーションは神力には効かない〟ということか。」
このようにレオディンが呟いたところで、
「館に帰り、安静にしていただくのはどうだ?」
「さすれば、徐々に治っていくかもしれん。」
「魔力がそうであるように。」
大公が勧める。
その考えに、皆が賛同したようだ。
ベルーグが[神剣]を拾ってくれるなか、
「時空よ、我らに狭間の境界を越えさせ、彼方へと導け。」
こう唱えるレオディンだった―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
[神通力]
読み方:じんずうりき/あるいは「じんつうりき」とも
※ネット調べ
あしからず。
「あった、これだ。」
[神剣ムラクモ]について記されていた箇所を見つける。
そこには…、
〝もともと此の剣を所有なさっておられた武神様によれば、柄より神力を流し込むとのことであった〟
〝なお、神力は、神通力とも呼ばれておる〟
〝話しを戻すと、魔術士らが専用の杖に魔力を注ぐかの如く成さねばならぬ〟
〝これによって剣身は神秘の光りを宿す〟
〝その状態で、剣を縦や横などに振るえば、光は弓なりに飛び、対象者を斬る〟
〝また、突きを繰り出せば、一直線に放たれた光が、敵を貫通す〟
〝故に、余は、これらを閃光斬に閃光貫と名付けた〟
こう書かれていた。
僕が伝えた事によって、
「“閃光斬”と“閃光貫”ですか!??」
「興味深いですね!!」
リィバの両目が〝キラキラ〟しだす。
「“神力”あるいは“神通力”というのは……?」
それとなく質問するマリーに、
「“神法”を使う際の力であろうな。」
「儂らに置き換えるならば“魔力”に該当するのじゃろう。」
レオディンが答えた。
「どうりで、これまで発動できなかった訳だ。」
苦笑いしたのは、ベルーグだ。
「ま、初代国王が本に残してくれていたお陰で判明したことだし…。」
「やってみせてください!」
「ラルーシファ王子!!」
より一層に瞳を輝かせるリィバの頼みを、
「いや、ムラクモは、大人用で重たいから、僕には上手く操れないんじゃないかな??」
やんわり断ろうとしたものの、
「後生ですからぁあ――ッ!!!!」
「お願いしますよぉお――ッ!!!!」
駄々を捏ねられてしまった。
「えぇ~?!」
僕が嫌がるなか、
「儂も興味ありますな。」
ルシム大公が、リィバを援護してしまう。
更には、僕の“教育係”と“お世話係”が〝うん うん〟と頷く。
〝はぁー〟と溜息を吐いた僕は、
「じゃあ、一回だけだよ??」
全員を窺う。
「では、庭にて。」
こう提案した大公に、
「いえ、どれほどの威力なのか分からないので、都市外のほうがよろしいでしょう。」
「周囲に被害が及ぶかもしれませんので。」
マリーが意見する。
「となると、ユニコーン車を手配する必要がありますね。」
そのようにユーンが喋ったところ、
「いや。」
「“瞬間移動”を扱える者に声をかけて、この館から赴くと致そう。」
ルシム大公が告げた。
これに対して、
「でしたら、儂が行ないましょう。」
「タケハヤ島には、それで渡ってきましたので。」
「それに……。」
「今はまだ、ラルーシファ殿下の情報があまり洩れないように慎重を期しておきたいのです。」
「まぁ、いずれは広まってしまうでしょうがな。」
レオディンが説明する。
それを受け、
「ふむ。」
「成程のぉう。」
理解を示す大公だった…。
▽
一階のエントランスで、レオディンが魔法を用いる。
ちなみに、“例の紳士”などは、お留守番だ。
いずれにしろ。
僕達は、初日に訪れた場所へと【テレポート】していた。
つまり、[南門]の近くだ。
「この距離だと、いささか人目が気になりますね。」
マリーの指摘によって、
「ならば、もう少し南下するとしよう。」
こう促すルシム大公だった……。
▽
暫く歩いた僕らは、適当な場所で足を止める。
「アイテムボックス、オープン。」
“縦40㎝×最大横幅20㎝”といった[楕円形で白銀色の渦]を出現させた僕は、両手で掴んだ剣を引っ張った。
ベルーグに協力してもらいながら抜いた[ムラクモ]の先端を地面に着けて、
「それで?」
「どうすればいいの??」
僕がレオディンに視線を送ったところ、
「そうですなぁ。」
「“魔法の杖”と同じ要領であれば…。」
「〝神法陣を構築するときの感覚で〟としか言いようがございません。」
そのように返されてしまう。
困惑した僕ではあったけど、なんとなくイメージしていく。
すると……、剣身が“金色”に輝きだした。
「これ、どうしよう?」
誰ともなく尋ねた僕に、
「現時点でのラルーシファ殿下は、空に向かって払い上げるのが精一杯でしょう。」
「もしかしたら、飛行中のペガサス便かモンスターに直撃してしまうかもしれませんが…。」
ベルーグが述べる。
「えッ??」
おもわず固まってしまった僕を、
「きっと大丈夫ですよぉー。」
「ささ、王子。」
「〝どぉ~んッ〟といっちゃいましょう!!」
リィバが〝ニコニコ〟しながら煽ってきた。
他に方法が無さそうだったので、
(当たったら、ごめん!)
心の中で謝った僕は、[ムラクモ]を下から上に振るう。
これによって、最大幅10㎝×長さ2Mといった“金色の閃光”が三日月状に放たれる。
その反動で僕が草原に背中を打ち付けるなか、居合わせたメンバーは[閃光斬]に〝おお――ッ!!!!〟と興奮していた。
とりあえず立とうとした僕は、途中で〝ガクンッ!!〟と脱力して、前のめりに倒れ、両手を地に着く。
こうした容態が視界に入ったらしく、
「ラルーシファ様!?」
ユーンが案じる。
「魔力、いや、〝神力切れ〟かもしれん。」
そう推測したレオディンが、
「亜空間収納よ、開くべし。」
「……、殿下、こちらを。」
栓を抜いた[透明の瓶]を差し出す。
どうにか座った僕は、中身の“ピンク色の液体”を飲み干していく。
「如何ですかな??」
レオディンに心配されながら、改めて起きようとするも、無理だった。
「うぅ~む。」
「〝魔力回復ポーションは神力には効かない〟ということか。」
このようにレオディンが呟いたところで、
「館に帰り、安静にしていただくのはどうだ?」
「さすれば、徐々に治っていくかもしれん。」
「魔力がそうであるように。」
大公が勧める。
その考えに、皆が賛同したようだ。
ベルーグが[神剣]を拾ってくれるなか、
「時空よ、我らに狭間の境界を越えさせ、彼方へと導け。」
こう唱えるレオディンだった―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
[神通力]
読み方:じんずうりき/あるいは「じんつうりき」とも
※ネット調べ
あしからず。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!


憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる