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黎明期
第13話 交錯するもの③
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▽
儂は、レオディン・セル―ロ。
ダイワの王宮魔術師にして、ラルーシファ殿下の教育係である。
この三年、殿下は、いろいろと励んでこられた。
それによって、[戦闘系のスキル]を身に付けられておられる。
まぁ、【神法】は“低級”のままだが…。
とはいえ、[中級魔法]に匹敵するほどの威力だ。
決して悪くはなかろう。
ちなみに、実戦を積めば【スキル】や【魔法】は成長しやすくなる。
おそらく【神法】にも当てはまるのだろうが、殿下は未だ10歳であらせられる。
王陛下も王妃様も許可なさらないであろう。
いや、申請したことがないので、分からんが……。
ラダン殿下でさえ〝15歳になってから〟と陛下に止められておるらしく、これは[イズモ王家]の仕来たりらしいので、無理な相談に違いない。
なお、ラダン殿下は数ヶ月後の夏には条件を満たされるので、護衛者を何十人か伴ってモンスター討伐にでも赴かれるじゃろう。
教育係は、王族の方が13歳になった時点で、その任を解かれるのだが…、儂はラルーシファ殿下に忠誠を誓った身である。
やがてラルーシファ殿下が討伐などを行なう際には、ぜひ、お声がけいただきたい。
故に、儂の当面の目標は“長生き”である!
……、それはさて置き。
先日、殿下が、[神剣ムラクモ]を、お抜きになられた。
あの場に居た誰もが驚きを隠せないでいたなか、儂は感動で震えたのを覚えておる。
(やはりラルーシファ殿下の教育係になれて良かった!!)
心底このように思うばかりだ。
[玉座の間]を出てからというもの、廊下で“ハーフエルフのリィバ殿”と大はしゃぎしてしまった次第である。
年を忘れて。
またも童の如く。
こうした儂らに、冷静になった“細長眼鏡のマリー殿”が、
「派閥争いが起きるかもしれませんね。」
「ラルーシファ王子が下手に巻き込まれぬよう、注意を払うべきでしょう。」
そのように発言した。
確かに、一理ある。
これを受けて、警戒を強める儂ら5名であった…。
話しが逸れてしまうかもしれんが、王都は、“高い壁”で囲われており、東西南北には[門]が備わっている。
それらの門から都の中心に聳えている[王城]までは、徒歩で五日ほどの距離だ。
儂は、もともと、都の真ん中あたりで暮らしておった。
あそこからだと城まで三日ぐらいとなる。
いささか老いてしまった儂の足では、更に日数が掛かるじゃろう。
しかしながら、ダイワ王国にも“馬車”や“ユニコーン車”が有るので、これらを利用すれば割と速い。
歩きで五日のところ、早くとも、馬車で二日、ユニコーン車では一日もあれば、到着できる。
それでも、儂が住んでいた家からだと、なかなかの時間を要するので、王城で暮らす運びとなった。
なのに、儂は、殿下が襲撃されたとき、全くもって気づかなかったのである。
一度ならず二度までも。
歳の所為か、少なからず耳が遠くなっておるのは否めない。
ま、殿下が御無事だったので、一応は安堵しておる。
じゃが、(これからは出来うる限り殿下のお役に立ちたい)と願ってやまない儂だった……。
▽
ボクは、リィバ・シルブ。
ハーフエルフだ。
(ラルーシファ王子の全ての神法を全身で受けてみたい)と思っている。
というか、何度となく王子に進言してみたけど、おもいっきり却下され続けてきた…。
ん?
いやいや、ボクは断じて変態などではない!
好奇心旺盛なだけだ!!
……、何はともあれ。
王子には、またまた興奮させられてしまった。
あの[ムラクモ]を抜剣したのだから無理もない。
確実に予想できていた訳ではないけれど、(神法を扱える王子であればもしかして)という期待はあった。
目の当たりにした瞬間には叫びそうになって、慌てたボクは自分の手で口を塞いだ。
すぐ側に佇んでいたレオディン殿も同じ状況だった。
ちょっと余談になるけれど、〝エルフ族は神の存在や力を感じやすい〟のだそうだ。
他種族のなかにも、これに該当する者がチラホラいるらしい。
そういうのを特に察しやすいのが“ハイエルフ”だ。
ボクは普通のエルフより劣る混血なので、神秘的なものは、はっきりとは分からない。
だけども、ラルーシファ王子からは神々しさが伝わってくる。
〝第二王子の教育係になる〟といったボクの判断は間違っていなかったのだ。
これが証明されたような気がして、なんだか嬉しくなった。
マリー殿の意見によって、すぐさま改めけれど…。
彼女の考えどおり、ラルーシファ王子を推す派閥が形成されていった。
その顔ぶれは、宰相たちに対抗心を燃やしてきた連中が殆どだ。
なかには王子に敬服した人々もいるみたいだけど、大半は野心を抱いているだけだろう。
〝ラノワマ宰相の派閥を退けて権力を掴みたい〟と。
単純にラルーシファ王子を傀儡にして私腹を肥やそうと企む者が多そうだ。
一方で、宰相などの“ラダン王子派”は、地位が揺らぎかねない。
陛下が「今まで宣べ伝えてきた通り王の座はラダンに継がせる」と告げているけど、いつ気が変わるか定かではないのだから。
これによって猜疑心が生じたのか、ラルーシファ王子が命を狙われた。
二回も……。
少し脱線するけど、ボクは、お城から徒歩で半日は掛からない所に在る[小屋敷]で過ごしている。
ラルーシファ王子を指導する際には、王城から“ユニコーン車”で送り迎えしてもらうのが常となっていた。
それであれば片道1時間30分くらいで済む。
つまり、ボクは、普段お城には居ないのだ。
このため、王子が暗殺されかけたとき、何もしてあげられなかった。
一回目のとき、ボクは、(ラノワマ宰相が糸を引いている可能性が高い)と睨むようになったのである。
ところが、つい先日、〝ラルーシファ王子を庇った宰相が毒矢で死にかけた〟と聞いて、頭を悩ませるようになった。
(だとすれば黒幕は誰なんだ??)と…。
まぁ、それ以外にも怪しい人物はいるのだけれど、(内乱が勃発しかねないので陛下も慎重になっているのだろう)と推測するボクだった―。
儂は、レオディン・セル―ロ。
ダイワの王宮魔術師にして、ラルーシファ殿下の教育係である。
この三年、殿下は、いろいろと励んでこられた。
それによって、[戦闘系のスキル]を身に付けられておられる。
まぁ、【神法】は“低級”のままだが…。
とはいえ、[中級魔法]に匹敵するほどの威力だ。
決して悪くはなかろう。
ちなみに、実戦を積めば【スキル】や【魔法】は成長しやすくなる。
おそらく【神法】にも当てはまるのだろうが、殿下は未だ10歳であらせられる。
王陛下も王妃様も許可なさらないであろう。
いや、申請したことがないので、分からんが……。
ラダン殿下でさえ〝15歳になってから〟と陛下に止められておるらしく、これは[イズモ王家]の仕来たりらしいので、無理な相談に違いない。
なお、ラダン殿下は数ヶ月後の夏には条件を満たされるので、護衛者を何十人か伴ってモンスター討伐にでも赴かれるじゃろう。
教育係は、王族の方が13歳になった時点で、その任を解かれるのだが…、儂はラルーシファ殿下に忠誠を誓った身である。
やがてラルーシファ殿下が討伐などを行なう際には、ぜひ、お声がけいただきたい。
故に、儂の当面の目標は“長生き”である!
……、それはさて置き。
先日、殿下が、[神剣ムラクモ]を、お抜きになられた。
あの場に居た誰もが驚きを隠せないでいたなか、儂は感動で震えたのを覚えておる。
(やはりラルーシファ殿下の教育係になれて良かった!!)
心底このように思うばかりだ。
[玉座の間]を出てからというもの、廊下で“ハーフエルフのリィバ殿”と大はしゃぎしてしまった次第である。
年を忘れて。
またも童の如く。
こうした儂らに、冷静になった“細長眼鏡のマリー殿”が、
「派閥争いが起きるかもしれませんね。」
「ラルーシファ王子が下手に巻き込まれぬよう、注意を払うべきでしょう。」
そのように発言した。
確かに、一理ある。
これを受けて、警戒を強める儂ら5名であった…。
話しが逸れてしまうかもしれんが、王都は、“高い壁”で囲われており、東西南北には[門]が備わっている。
それらの門から都の中心に聳えている[王城]までは、徒歩で五日ほどの距離だ。
儂は、もともと、都の真ん中あたりで暮らしておった。
あそこからだと城まで三日ぐらいとなる。
いささか老いてしまった儂の足では、更に日数が掛かるじゃろう。
しかしながら、ダイワ王国にも“馬車”や“ユニコーン車”が有るので、これらを利用すれば割と速い。
歩きで五日のところ、早くとも、馬車で二日、ユニコーン車では一日もあれば、到着できる。
それでも、儂が住んでいた家からだと、なかなかの時間を要するので、王城で暮らす運びとなった。
なのに、儂は、殿下が襲撃されたとき、全くもって気づかなかったのである。
一度ならず二度までも。
歳の所為か、少なからず耳が遠くなっておるのは否めない。
ま、殿下が御無事だったので、一応は安堵しておる。
じゃが、(これからは出来うる限り殿下のお役に立ちたい)と願ってやまない儂だった……。
▽
ボクは、リィバ・シルブ。
ハーフエルフだ。
(ラルーシファ王子の全ての神法を全身で受けてみたい)と思っている。
というか、何度となく王子に進言してみたけど、おもいっきり却下され続けてきた…。
ん?
いやいや、ボクは断じて変態などではない!
好奇心旺盛なだけだ!!
……、何はともあれ。
王子には、またまた興奮させられてしまった。
あの[ムラクモ]を抜剣したのだから無理もない。
確実に予想できていた訳ではないけれど、(神法を扱える王子であればもしかして)という期待はあった。
目の当たりにした瞬間には叫びそうになって、慌てたボクは自分の手で口を塞いだ。
すぐ側に佇んでいたレオディン殿も同じ状況だった。
ちょっと余談になるけれど、〝エルフ族は神の存在や力を感じやすい〟のだそうだ。
他種族のなかにも、これに該当する者がチラホラいるらしい。
そういうのを特に察しやすいのが“ハイエルフ”だ。
ボクは普通のエルフより劣る混血なので、神秘的なものは、はっきりとは分からない。
だけども、ラルーシファ王子からは神々しさが伝わってくる。
〝第二王子の教育係になる〟といったボクの判断は間違っていなかったのだ。
これが証明されたような気がして、なんだか嬉しくなった。
マリー殿の意見によって、すぐさま改めけれど…。
彼女の考えどおり、ラルーシファ王子を推す派閥が形成されていった。
その顔ぶれは、宰相たちに対抗心を燃やしてきた連中が殆どだ。
なかには王子に敬服した人々もいるみたいだけど、大半は野心を抱いているだけだろう。
〝ラノワマ宰相の派閥を退けて権力を掴みたい〟と。
単純にラルーシファ王子を傀儡にして私腹を肥やそうと企む者が多そうだ。
一方で、宰相などの“ラダン王子派”は、地位が揺らぎかねない。
陛下が「今まで宣べ伝えてきた通り王の座はラダンに継がせる」と告げているけど、いつ気が変わるか定かではないのだから。
これによって猜疑心が生じたのか、ラルーシファ王子が命を狙われた。
二回も……。
少し脱線するけど、ボクは、お城から徒歩で半日は掛からない所に在る[小屋敷]で過ごしている。
ラルーシファ王子を指導する際には、王城から“ユニコーン車”で送り迎えしてもらうのが常となっていた。
それであれば片道1時間30分くらいで済む。
つまり、ボクは、普段お城には居ないのだ。
このため、王子が暗殺されかけたとき、何もしてあげられなかった。
一回目のとき、ボクは、(ラノワマ宰相が糸を引いている可能性が高い)と睨むようになったのである。
ところが、つい先日、〝ラルーシファ王子を庇った宰相が毒矢で死にかけた〟と聞いて、頭を悩ませるようになった。
(だとすれば黒幕は誰なんだ??)と…。
まぁ、それ以外にも怪しい人物はいるのだけれど、(内乱が勃発しかねないので陛下も慎重になっているのだろう)と推測するボクだった―。
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