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黎明期

第8話 変位

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あれから二日間の休みを挟んだ僕は、レオディンと再び魔法…、というか、【神法しんぽう】の練習を行なおうとしている。

そこへ、父上と、将軍や、宰相に、数名の大臣が、訪れた。

余談になるけど、宰相は、六代目ダイワ国王の“従兄妹の子孫”らしい。

ちなみに、父上は、二十八代目にあたる。

宰相はというと、36歳の男性で、肩あたりまでの長さがある銀髪をオールバックにしていて、瞳は青色だ。

ハーフエルフではないので、耳は尖っていない。

れっきとした人間だ。

さて……。

「ラルーシファ。」
「我々に“神法”を披露してくれないか?」

父上に声をかけられ、

「かしこまりました。」

了解した僕は、[木製人形]に右のてのひらを向けた。

この流れで構築した“ホワイトゴールド白金のサークル”に、大臣たちが〝おぉッ!??〟と興味を示す。

僕は以前と同じく、

「ウィンド・アロー!」

50発の【風の矢】を放つ。

やはり“蜂の巣”みたいになった[木製人形]が倒れたところで、

「おお――ッ!!」

「本物であろう事は疑いありませんな!」

「まさか、じかに“伝説”を拝める日が来るとは!!」

「これは国にとって良い兆しに違いありますまい!」

など、大臣らが一斉に騒ぎだした。

父上は嬉しそうにしており、40歳の将軍は〝ほぉう〟といった感じで、宰相は目を丸くしている。

「皆の者、落ち着け。」

大臣たちに指示して、

「実に素晴らしい。」
「だが…。」
おごることなく励めよ。」

優しく微笑んだ父上が、

「これからもラルーシファの事を頼んだぞ、レオディン。」

そのように告げる。

御意ぎょい。」

レオディンが頭を下げるなか、

評定ひょうじょうに赴くぞ。」

家臣らを率いて、父上が去っていく。

これをきっかけに、僕が神法を扱える件が、城内で噂になった。

それは、やがて、王城の外にも広まっていったようだ……。



時は一気に3年ほど進む。

あと二週間で、僕は誕生日を迎える。

これまでは、たいした動きがなく、割と平穏だったので、話しても面白味がないだろうから、勘弁してもらいたい。

ただ、まぁ、知らせておくとするならば…、【狙撃術】【剣術】【打撃術】【槍術】【武術】は、どれもが[壱]になっていた。

【神法】は、相変わらず[低級]のままだ。

【解読】には段階が無く、【亜空間収納】は[小規模]で止まっている。

また、いろんな分野を勉強してきたので、さまざまな知識を身につけられた。

一方で……。

今年の冬に5歳となる妹のエルーザは、姉上みたいな“おてんば”に成長していきつつある。

エルーザの“お世話係たち”は悩ましい限りのようだ。

逆に、秋には13歳になるリーシア姉上は、最近、大人びてきた。

とは言え、まだまだ元気を持て余しているらしく、たまに周囲を困らせているけれど。

それでも、かつてよりは悪戯いたずらの回数が減っている。

夏に15歳となるラダン兄上は、精悍せいかんな雰囲気になっていた。

なお、現在は“春”である…。



10歳になった日の夜に、僕は、ある夢を見ていた。

まるで“早送り再生”ではあったが、全てが鮮明だ。

とある少年が日本・・とかいう国で生まれ育っていく。

は、どうやら、らしい。

髪や瞳などが黒いため、別人のようではあったけど、何故だか〝これは自分だ〟と確信できた。

名前は“日之永新ヒノト・シン”だ。

高校二年生とやらになったは、学級委員長なるものを務めている。

暫くして、修学旅行とかいう行事が起きた。

バス・・と呼ばれる[箱型の不思議な乗り物]で、山道を進んでいる。

すると……、いきなり、土砂崩れが発生した。

運転手がけようとするも、左側面に“岩”が当たったバスは、道路の右側へと飛び出す。

おもいっきり転落したところで、こっちの僕・・・・・が〝ハッ!!〟と目を覚ました。

汗だくになっていた僕は、

(今のは…、前世の記憶?)
(ということは、つまり……、僕は転生者??)
(いや、どうなんだろう?)
(んんー、でも、その可能性は高そうだし…。)
(副委員長とか、こういうのに詳しい人が居れば、はっきりしそうだけど……。)
(!)
(他のクラスメイトは、どうなったんだ?)
(この状況は僕だけか??)
(…………。)
(ダメだ。)
(考えたところで分からないから、一旦やめよう。)

〝すぅ――、はぁ――〟と深呼吸して気持ちを整える。

そうして、

(とりあえず、この世界で生きていくのを最優先にしよう。)

と、決意を固める僕だった…。



更に一週間が過ぎている。

ダイワ王家では[抜剣ばっけんの儀]というものが催されてきたそうだ。

なんでも四代目あたりから始まったらしい。

〝この国の王族は、男女問わず、10歳となった際に、必ず挑まなければならない〟とのことだった。

ちなみに〝初代ラダーム=イズモ陛下が、まだ平民だった頃に、武神の一柱ひとはしらより授かった物である〟〝ラダーム陛下は、これに、神剣しんけんムラクモと名付けられた〟〝このムラクモを鞘から抜くことが出来たのは、初代陛下のみであった〟と伝えられている。

要は、二代目以降の“王家の人々”が試みたものの、誰も成し遂げられなかったとの話しだ。

僕の兄や姉はもとより、父上も、この儀式には失敗していた。

昼食後に、

(それにしても……。)
(“イズモ”に“ムラクモ”って、完全に和風・・だよね?)
(ひょっとして…、初代様は、僕みたいに日本から転生してきたのかな??)
(あと、僕や初代様と同じように神法を使えたっていう“近衛衆このえしゅう”も謎なんだけど……。)

こうした疑問を抱きつつ、専属の教育係たちと共に[玉座の間]へと向かっている―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

現時点での[ラルーシファ=イズモ]

【神法】
・火/風/氷/地/雷/爆発のみ使用可能
  ※どれもが低級の攻撃系

【スキル】
 ・亜空間収納(アイテムボックス)
  ※小規模

【特殊スキル】
 ・解読
  ※どのような文字であっても読み解ける

【戦闘スキル】
・狙撃術/剣術/打撃術/槍術/武術
 ※どれもが[壱]
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