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黎明期
第3話 課程・序
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お城の[外廊下]から、
「お待ちなさぁ――――いッ!!!!」
といった声が聞こえてきた。
ビックリした僕とレオディンが、そちらに視線を送る。
すると、リーシア姉上が走って逃げていた。
僕の3つ年上である姉は、肩より少し長い赤茶髪をツインテールにしている。
ちなみに、兄上の髪も同じ色だ。
それは〝二人の母君の血筋によるものだ〟という話しを、以前、誰かに聞いたことがある。
なお、僕と妹は、金髪だ。
あと、兄妹4人とも瞳は青い。
父上と一緒で。
……、話しを戻そう。
「今日という今日は、ほんっとうに許しませんからねぇえッ!!」
こう怒鳴ったのは、リーシア姉上の教育係だ。
60歳ぐらいの女性は、背中あたりまでの長さがある“ホワイトゴールドの髪”を一つ結びにしていて、眼鏡を掛けている。
また悪戯されたんだろうけど…、姉上の“教育係”と“お世話係”の人たちは、いつも大変そうだ。
「さて。」
「ラルーシファ殿下。」
「他の魔法も披露しますので、神法で再現してみてください。」
レオディンに促され、
「うん、わかった。」
改めて練習していく僕だった……。
▽
少し休憩を挟んだ僕らは、城内の小部屋に移動している。
その室内には、大きめの教壇や、子供用の机に、椅子などが、置かれていた。
ここで、さまざまな勉強が行なわれる。
レオディンからは文字の読み書きを教わる事になっていた。
「そう言えば、殿下には“かいどく”なるものも備わっているのでしたな??」
そのように聞かれて、
「うん。」
僕が頷いたところ、
「ふむ…。」
「候補としては、回読、会読、買得、貝毒、と、幾つか考えられるが、おそらくは“解読”じゃろうな。」
〝ブツブツ〟と呟いたレオディンが、
「殿下。」
「口に出しても、頭の中でも良いので、試しに“かいどく”と唱えて、こちらに目を通してくださいませんか?」
一冊の本を差し出してくる。
「りょうかい。」
本を受け取って、脳内でスキルを発動した僕は、題名の書かれていない表紙を、とりあえず開いてみた。
結果……、僕は知らない文字を〝スラスラ〟と読めたのだ。
この状況に、
「おぉお―ッ!」
「やはり、そうであったか!!」
「これまた珍しい能力じゃわい!!!!」
再び小躍りしそうになったレオディンが、〝ピタッ〟と止まる。
そうして、なんだか〝ぐぬぬぬぬぅ~ッ〟といった感じで、自分を抑え込んでいた。
きっと、僕に引かれると思って、我慢したのだろう。
別に、はしゃいでも構わないんだけど…。
いや、まぁ、心の距離は確実に出来ちゃうけどね。
優秀な筈の魔術師のことは放っといて……。
本を読み進めていたら、〝ハッ!〟としたレオディンが、
「“神法”に“解読”とは…、儂が殿下に伝えられる事など、一つも無いのでは??」
「……、ぬおッ!?」
「このままでは、お役御免ではないかぁあッ!!」
両手で頭を抱える。
「いや、レオディン。」
「僕には未だ知らないことが沢山あるから、これからも、いろいろと教えてほしい。」
このように告げたところ、
「例えば?」
レオディンがチラ見してきた。
「あぁー、…、えーっと。」
「……、そうだ!」
「“亜空間収納”って、何??」
僕の質問によって、
「それは、いつしか“アイテムボックス”とも呼ばれるようになったものでして、小規模であれば3M級のオークを10体まで保管できます。」
「ただし、小規模の場合、食料などは一ヶ月ほどで腐ってしまいますので、注意が必要です。」
レオディンの表情が明るくなる。
一方で、オークなど目の当たりにした経験がない僕は、困惑してしまう。
ま、レオディンの機嫌が直ったみたいだから、いいんだけど。
「今みたいに、これからもよろしくね。」
そう頼んでみたところ、
「殿下…、なんと、お優しい。」
「一生ついてゆきますぞぉおッ!!!!」
忠誠を誓われてしまった。
ただ、教育係の期日は、対象者が13歳になった時点で満了するのだが……。
▽
小休止になったので、レオディンと別れた僕は、自室に戻ってきた。
ここに、僕の専属である“お世話係”の5名が訪れている。
メイド服とかいうものを着ている彼女たちは、人間の容姿をしているものの、“動物の耳と尻尾”が生えていた。
なんでも[獣人族]という名称らしい。
「お疲れ様です、ラルーシファ様。」
リーダーの女性が会釈して、残りの四名が倣う。
ボブショートの髪/瞳/猫の耳&尻尾が黒い“筆頭の女性”が、
「何かお飲みになりますか?」
そのように窺ってくる。
「ううん、大丈夫。」
「ちょっと休んだら、また外に行くから。」
「次は、“リィバ”に弓の稽古を付けてもらうんだぁ。」
〝ニッコリ〟と述べた僕に、
「かしこまりました。」
彼女も笑顔で返してくれた…。
▽
改めて庭に赴いたら、
「あッ。」
僕に気づいた男性が、
「王子ぃ―!!」
高々と挙げた右手を〝ブンブン〟と振りだす。
側まで駆け寄った僕に、
「おはようございます、ラルーシファ王子。」
リィバが貴族らしい会釈を披露した。
彼は、スラッとした体型であり、背中あたりまでの長さがある髪は銀色で、緑の瞳をしている。
肌は白く、耳が尖っているリィバは、“ハーフエルフ”という種族らしい。
30代後半くらいに見えるが、実際は〝100歳を過ぎている〟のだそうだ。
なにはともあれ。
〝スッ〟と姿勢を正して、
「ところで、王子。」
「レオディン殿によると〝神法を扱った〟とか??」
目を輝かせる“リィバ・シルブ”だった―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
現時点での[ラルーシファ=イズモ]
【神法】
・火/風/氷/地/雷/爆発のみ使用可能
※どれもが低級の攻撃系
【スキル】
・亜空間収納(アイテムボックス)
※小規模
【特殊スキル】
・解読
※どのような文字であっても読み解ける
「お待ちなさぁ――――いッ!!!!」
といった声が聞こえてきた。
ビックリした僕とレオディンが、そちらに視線を送る。
すると、リーシア姉上が走って逃げていた。
僕の3つ年上である姉は、肩より少し長い赤茶髪をツインテールにしている。
ちなみに、兄上の髪も同じ色だ。
それは〝二人の母君の血筋によるものだ〟という話しを、以前、誰かに聞いたことがある。
なお、僕と妹は、金髪だ。
あと、兄妹4人とも瞳は青い。
父上と一緒で。
……、話しを戻そう。
「今日という今日は、ほんっとうに許しませんからねぇえッ!!」
こう怒鳴ったのは、リーシア姉上の教育係だ。
60歳ぐらいの女性は、背中あたりまでの長さがある“ホワイトゴールドの髪”を一つ結びにしていて、眼鏡を掛けている。
また悪戯されたんだろうけど…、姉上の“教育係”と“お世話係”の人たちは、いつも大変そうだ。
「さて。」
「ラルーシファ殿下。」
「他の魔法も披露しますので、神法で再現してみてください。」
レオディンに促され、
「うん、わかった。」
改めて練習していく僕だった……。
▽
少し休憩を挟んだ僕らは、城内の小部屋に移動している。
その室内には、大きめの教壇や、子供用の机に、椅子などが、置かれていた。
ここで、さまざまな勉強が行なわれる。
レオディンからは文字の読み書きを教わる事になっていた。
「そう言えば、殿下には“かいどく”なるものも備わっているのでしたな??」
そのように聞かれて、
「うん。」
僕が頷いたところ、
「ふむ…。」
「候補としては、回読、会読、買得、貝毒、と、幾つか考えられるが、おそらくは“解読”じゃろうな。」
〝ブツブツ〟と呟いたレオディンが、
「殿下。」
「口に出しても、頭の中でも良いので、試しに“かいどく”と唱えて、こちらに目を通してくださいませんか?」
一冊の本を差し出してくる。
「りょうかい。」
本を受け取って、脳内でスキルを発動した僕は、題名の書かれていない表紙を、とりあえず開いてみた。
結果……、僕は知らない文字を〝スラスラ〟と読めたのだ。
この状況に、
「おぉお―ッ!」
「やはり、そうであったか!!」
「これまた珍しい能力じゃわい!!!!」
再び小躍りしそうになったレオディンが、〝ピタッ〟と止まる。
そうして、なんだか〝ぐぬぬぬぬぅ~ッ〟といった感じで、自分を抑え込んでいた。
きっと、僕に引かれると思って、我慢したのだろう。
別に、はしゃいでも構わないんだけど…。
いや、まぁ、心の距離は確実に出来ちゃうけどね。
優秀な筈の魔術師のことは放っといて……。
本を読み進めていたら、〝ハッ!〟としたレオディンが、
「“神法”に“解読”とは…、儂が殿下に伝えられる事など、一つも無いのでは??」
「……、ぬおッ!?」
「このままでは、お役御免ではないかぁあッ!!」
両手で頭を抱える。
「いや、レオディン。」
「僕には未だ知らないことが沢山あるから、これからも、いろいろと教えてほしい。」
このように告げたところ、
「例えば?」
レオディンがチラ見してきた。
「あぁー、…、えーっと。」
「……、そうだ!」
「“亜空間収納”って、何??」
僕の質問によって、
「それは、いつしか“アイテムボックス”とも呼ばれるようになったものでして、小規模であれば3M級のオークを10体まで保管できます。」
「ただし、小規模の場合、食料などは一ヶ月ほどで腐ってしまいますので、注意が必要です。」
レオディンの表情が明るくなる。
一方で、オークなど目の当たりにした経験がない僕は、困惑してしまう。
ま、レオディンの機嫌が直ったみたいだから、いいんだけど。
「今みたいに、これからもよろしくね。」
そう頼んでみたところ、
「殿下…、なんと、お優しい。」
「一生ついてゆきますぞぉおッ!!!!」
忠誠を誓われてしまった。
ただ、教育係の期日は、対象者が13歳になった時点で満了するのだが……。
▽
小休止になったので、レオディンと別れた僕は、自室に戻ってきた。
ここに、僕の専属である“お世話係”の5名が訪れている。
メイド服とかいうものを着ている彼女たちは、人間の容姿をしているものの、“動物の耳と尻尾”が生えていた。
なんでも[獣人族]という名称らしい。
「お疲れ様です、ラルーシファ様。」
リーダーの女性が会釈して、残りの四名が倣う。
ボブショートの髪/瞳/猫の耳&尻尾が黒い“筆頭の女性”が、
「何かお飲みになりますか?」
そのように窺ってくる。
「ううん、大丈夫。」
「ちょっと休んだら、また外に行くから。」
「次は、“リィバ”に弓の稽古を付けてもらうんだぁ。」
〝ニッコリ〟と述べた僕に、
「かしこまりました。」
彼女も笑顔で返してくれた…。
▽
改めて庭に赴いたら、
「あッ。」
僕に気づいた男性が、
「王子ぃ―!!」
高々と挙げた右手を〝ブンブン〟と振りだす。
側まで駆け寄った僕に、
「おはようございます、ラルーシファ王子。」
リィバが貴族らしい会釈を披露した。
彼は、スラッとした体型であり、背中あたりまでの長さがある髪は銀色で、緑の瞳をしている。
肌は白く、耳が尖っているリィバは、“ハーフエルフ”という種族らしい。
30代後半くらいに見えるが、実際は〝100歳を過ぎている〟のだそうだ。
なにはともあれ。
〝スッ〟と姿勢を正して、
「ところで、王子。」
「レオディン殿によると〝神法を扱った〟とか??」
目を輝かせる“リィバ・シルブ”だった―。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
現時点での[ラルーシファ=イズモ]
【神法】
・火/風/氷/地/雷/爆発のみ使用可能
※どれもが低級の攻撃系
【スキル】
・亜空間収納(アイテムボックス)
※小規模
【特殊スキル】
・解読
※どのような文字であっても読み解ける
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