GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第六章・吉凶禍福 ―

第278話 防衛戦・其之零

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午前十時半あたり……。

[ニッショウ陣営]の一角に“輪”を作っている人々やサーヴァントが、声援を飛ばしている。

この中心部で、二人の男性が闘技していた。

どちらも、兜を被っておらず、鎧は軽装で、武器は[木槍きやり]だ。

片や、長身で、30代後半あたりの者が、[得物えもの]を次から次へと繰り出している。

それを、[木槍]で連続的に防いでいるのは、“グーラン大将軍”であった。

間合いを見計らっていたグーランが、途端に動きを変えて、武器を躱す。

と同時に、自身の[得物の穂先]を、相手の喉元に突き付けた。

これによって、

「うッ…。」
「参りました。」

そう対戦者が喋る。

「おし。」
「……、さぁて、次は。」

グーランが言いかけたところで、周囲の一部が騒ぎだした。

「船が空を飛んでる??!」

「マジかよ!!?」

「なんだあれ??」

「おい、着地するみたいだぞ!」

といった具合に。

東の方角を確認したグーランが、〝すぅ―ッ〟と息を吸い、

国主こくしゅ一同だ!!」
「俺と副将軍に憲兵隊長は、現状を報告しに行く!」
「よって、今日の試合はこれまでとする!!」

このように伝えたのである…。


作戦本部の[テント(ゲル)]に、

「よぉ。」
「待たせちまったか?」

グーランが訪れた。

その背後には“フゥーリカン”と“百桃星ももせ”が続いて来る。

「いや、今しがた椅子に座ったとこだ。」

静かに述べた紫蓮しれんに、

「そっか。」

グーランが〝ニカッ〟とした。

彼ら三人も席に着いたタイミングで、

「この天幕てんまくまで案内あないしてくれた者によれば、毎日、誰かしらと手合わせしておるそうだな。」

撫子なでしこが声をかける。

「ああ、まぁな。」
「血気にはやって敵軍に突撃したがる連中に待ったをかけたんだが、納得いってねぇみたいだったから、憂さ晴らしさせてやろうと思ってよ。」
「あと……、やっぱ、西方さいほうは、どうも俺らのことを舐めてるっつーか、値踏みしてる感じがしたから、主に指揮官たちの挑戦を受けてた。」
「〝強さを知らしめる〟ために。」
「じゃねぇと、足並みが揃わなさそうだったからな。」

こう説明したグーランに、

い判断です。」

“軍師でもあるタリアノ”が頷く。

「それで??」
「状況は?」

“剣士のペイニー”に訊かれ、

「えっと…。」
「うちらの中央と南方の計100万ぐらいは、だいたい昼過ぎには合流できる予定だ。」
「敵は450万あたりになってみるたいだが、今んとこ動きはねぇな。」

そう語るグーランだった。

「……。」

少し考えた様子のタリアノが、

「おそらく、あちらの残り50万は“本隊”でしょうね。」
「となれば、その“主力部隊”が陣を構えるまでは、仕掛けてこないかと。」

このように推測する。

「では、こちらの味方が到着したら、開戦しますか??」

“クレリックのルウェー”による質問に、

「いえ、ここに赴くまでの進軍で、それなりに疲れているでしょうから、休ませてあげたがいいでしょう。」
「ただ…、こちらはまだ完全には統率が取れないでしょうし、敵より兵数が劣るので、先手を打ちたいところではありますが。」

そう答える軍師であった―。
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