GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第六章・吉凶禍福 ―

第264話 趨勢・其之壱

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妖魔の両軍勢は、それぞれの[港町]に暫く駐屯してくれる運びとなった。

生き残っている神々などが、これらを奪い返しに来るかもしれないので、念の為に警戒しての事である。

その間に、紫蓮しれんたちは、新しい統治者らを決める方針だ。

現時点において、こうした[港町]と、[南方領全域]に[中央領の半分ぐらい]が、〖ニッショウこく〗を名乗っていた。

それら以外は、未だ、動きがない。

ここの王だった“上級神”が討ち取られた件が、全土に広まりきれていないのが原因だ。

今後、隅々にまで伝われば、変化が起きていくであろう。

とは言え、国内に点在している“中小の神ども”が、どう出るかは分からない。

そのため、奴らの心を折るべく、“大規模な連合の結成”が急務であった。

なお、“魔族”と“妖怪”に“オワ-リン”は、既に“ニッショウ”と同盟を結んでいる。

こうした状況を踏まえて、[ゴッド・スレイヤーズ]の面々が実家などに連絡していく…。


一方、龍の姿になっている“新羅しんら”が、よく晴れた空を翔けていた。

その背には、“メタルスライムの来夢らいむ”と“ホブゴブリンの権蔵ごんぞう”が乗っている。

余談になるかもしれないが、どちらも、私服だった。

何はともあれ。

〝おぉ――☆〟と瞳を輝かせる来夢が、黒龍に跨ったまま〝ピョンピョン〟と弾みだす。

この後ろで、

「危ないですよ。」

少なからず〝ハラハラ〟する権蔵であった。

そうしたなか、

「いささか飛ばすぞ。」
「落ちてしまわぬよう、しっかり掴まっておれ。」

新羅が声をかける。

メタルスライムとホブゴブリンが両手でたてがみを握り締めたところで、加速する黒龍だった……。


出発前、三者に、タリアノがテント(ゲル)を貸してくれていたらしい。

代表して預かっているのは、権蔵だ。

このため、彼らは、道中、適当な地を選んでは、テントで休憩しながら、目的地へと向かったのである。

そうして、およそ十日後には、[ヒーゴンの首都]が見えてきた。

徒歩で陸路を進んだなら軽く四ヶ月は掛かるので、かなり短縮できている。

ただし、新羅だけであれば、もっとスピードを出せたので、より早く辿り着けただろう。

来夢と権蔵を気遣って、ある程度は安全面を考慮したらしい。

この龍が着陸したのは、都の東側だ。

メタルスライムとホブゴブリンが降りるなか、門兵らや、首都に入ろうとしていた人などが、騒然となった。

どうやら、〝モンスター達の襲撃〟と勘違いしたようだ。

兵士にいたっては、援軍を呼ぼうとしている。

それを察した権蔵が、

「待ってください!!」
「我々は、侍王の元近衛衆もとこのえしゅうです!」
「主君である“紫蓮”という人物から、清虎公への書状を預かっています!!」

そのように告げた。

これによって、目を凝らした一人の兵が、

「額にサーヴァントのしるしがあるな。」

冷静さを取り戻し、

「詳しい話しを聞かせてもらおう。」

そう述べたのである…。


門の脇にて。

40代前半であろう男性兵士に、ホブゴブリンが経緯いきさつを説明してゆく。

ちなみに、新羅は人型・・になっていた。

勿論、私服である。

さておき……。

「そんなことになっているとはなぁ。」

目を丸くしつつ〝へぇ~〟と理解を示した兵士を、

「ところで。」
「侍王は、今、こちらに??」
「それとも、まだ、“チークゥゴン”で生活していらっしゃるのでしょうか?」

権蔵が窺う。

「いや、つい先日、ご帰還なされた。」
「なので、総帥閣下は、現在、ここの城で暮らしておられる。」

このように教えてくれた兵が、

「さぁ、入るがよい。」

門の通過を穏やかに許可する。

それによって、ひとまず安堵する三体であった―。
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