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― 第六章・吉凶禍福 ―
第259話 暫時
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紫蓮の説明を受け、
「城内へ直に乗り込むとは……。」
「かねてより勇名を馳せてはおられましたが、豪胆な方ですね。」
「侍王は。」
“ラーザの叔母”にあたる“ルリィザ”が、半ば驚き混じりで感心する。
「確かに。」
〝うむ〟と頷いて、
「じゃあ、ボクらも、その策を用いるとしよう!」
立ち上がったラーザを、
「〝王城に瞬間移動できる者がいれば〟ですが…。」
タリアノが落ち着かせた。
〝あッ〟と理解を示したラーザが、
「ん~、どうしたものか??」
改めて椅子に座る。
そのようなタイミングで、
「要は〝ここの都市のお城に行ける魔術士を探せばいい〟って事でしょ?」
「こちらに付いた100万の軍勢のなかに居たりとかしないのかな??」
“兎の半獣”である“ラット”が軽く首を傾げた。
「それだぁあッ!!」
再び昂ぶったラーザが、
「すぐに手配してくれ!」
将軍に依頼する。
〝ハッ〟と会釈して、表に出た将軍は、野外の兵士らに指示した後に、席へと戻って来た。
「これで連中の思惑どおりにはいかなくなるだろう♪」
上機嫌となったラーザに、
「しかし、そうとなれば……、数日前の名演説が台無しになるな。」
「全軍で城に乗り込むのは難しいだろうから、数を限定しないといけないし。」
「結果、多くの者が〝魂を燃やせなくなる〟だろ?」
“近衛衆の隊長”が〝ニヤリ〟とする。
「う、うっさいよ!!」
「今にしてみればあれは自分でも恥ずかしいんだから、わざわざ蒸し返すなって!」
「このッ、弥太郎左衛門め!!」
こうした反撃を受け、
「誰が“左衛門”だ!」
「その呼び方は、やめろ!!」
弥太郎が応戦したところ、〝ゴホンッ!〟と咳払いした将軍が、
「オワ-リンの次期国主であらせられるぞ。」
「公的な場では慎まぬか。」
そのように諭す。
「あ…、これは、失礼しました。」
将軍に頭を下げた弥太郎に、今度はラーザが〝ニヤニヤ〟しだした。
だが、
「貴女様もですよ。」
「少しは周囲の手本になるよう心掛けてください。」
これまた将軍に諫められ、ラーザが〝ぐッ〟と渋い顔つきになり、弥太郎は〝ふふん〟と小気味良くする。
「……、分かっておいでですか??」
左斜め前から〝じぃ――っ〟と視線を送ってくる将軍に対し、ラーザはテント(ゲル)の正面に目を向けながら、
「ああ、勿論だとも。」
「まったくもって忠言痛み入るよ。」
そう述べた。
この態度に、
「いや、せめて、こちらを見られては如何です?」
将軍が眉間にシワを寄せる。
それには、おもわず誰もが〝ドッ!!〟と笑いだすのであった…。
およそ30分後……。
[本部テント]に、十人の男女魔術士が訪れている。
なかでも年長者らしき60代前半の女性が、
「私どもは、かつて“城仕え”でございました。」
「数年前、強欲な神次を何度となく戒めようとしたところ、疎ましがられ、各地に左遷された者らの一部であります。」
こう伝えてきた。
「つまり…、〝王城の造りに詳しい〟と??」
そのように訊ねたラーザに、
「仰せの通りでございます。」
女性魔術士が会釈する。
それによって、
「よし!」
「話しを詰めていくとしよう!!」
ラーザの意気が新たに揚がるのだった―。
「城内へ直に乗り込むとは……。」
「かねてより勇名を馳せてはおられましたが、豪胆な方ですね。」
「侍王は。」
“ラーザの叔母”にあたる“ルリィザ”が、半ば驚き混じりで感心する。
「確かに。」
〝うむ〟と頷いて、
「じゃあ、ボクらも、その策を用いるとしよう!」
立ち上がったラーザを、
「〝王城に瞬間移動できる者がいれば〟ですが…。」
タリアノが落ち着かせた。
〝あッ〟と理解を示したラーザが、
「ん~、どうしたものか??」
改めて椅子に座る。
そのようなタイミングで、
「要は〝ここの都市のお城に行ける魔術士を探せばいい〟って事でしょ?」
「こちらに付いた100万の軍勢のなかに居たりとかしないのかな??」
“兎の半獣”である“ラット”が軽く首を傾げた。
「それだぁあッ!!」
再び昂ぶったラーザが、
「すぐに手配してくれ!」
将軍に依頼する。
〝ハッ〟と会釈して、表に出た将軍は、野外の兵士らに指示した後に、席へと戻って来た。
「これで連中の思惑どおりにはいかなくなるだろう♪」
上機嫌となったラーザに、
「しかし、そうとなれば……、数日前の名演説が台無しになるな。」
「全軍で城に乗り込むのは難しいだろうから、数を限定しないといけないし。」
「結果、多くの者が〝魂を燃やせなくなる〟だろ?」
“近衛衆の隊長”が〝ニヤリ〟とする。
「う、うっさいよ!!」
「今にしてみればあれは自分でも恥ずかしいんだから、わざわざ蒸し返すなって!」
「このッ、弥太郎左衛門め!!」
こうした反撃を受け、
「誰が“左衛門”だ!」
「その呼び方は、やめろ!!」
弥太郎が応戦したところ、〝ゴホンッ!〟と咳払いした将軍が、
「オワ-リンの次期国主であらせられるぞ。」
「公的な場では慎まぬか。」
そのように諭す。
「あ…、これは、失礼しました。」
将軍に頭を下げた弥太郎に、今度はラーザが〝ニヤニヤ〟しだした。
だが、
「貴女様もですよ。」
「少しは周囲の手本になるよう心掛けてください。」
これまた将軍に諫められ、ラーザが〝ぐッ〟と渋い顔つきになり、弥太郎は〝ふふん〟と小気味良くする。
「……、分かっておいでですか??」
左斜め前から〝じぃ――っ〟と視線を送ってくる将軍に対し、ラーザはテント(ゲル)の正面に目を向けながら、
「ああ、勿論だとも。」
「まったくもって忠言痛み入るよ。」
そう述べた。
この態度に、
「いや、せめて、こちらを見られては如何です?」
将軍が眉間にシワを寄せる。
それには、おもわず誰もが〝ドッ!!〟と笑いだすのであった…。
およそ30分後……。
[本部テント]に、十人の男女魔術士が訪れている。
なかでも年長者らしき60代前半の女性が、
「私どもは、かつて“城仕え”でございました。」
「数年前、強欲な神次を何度となく戒めようとしたところ、疎ましがられ、各地に左遷された者らの一部であります。」
こう伝えてきた。
「つまり…、〝王城の造りに詳しい〟と??」
そのように訊ねたラーザに、
「仰せの通りでございます。」
女性魔術士が会釈する。
それによって、
「よし!」
「話しを詰めていくとしよう!!」
ラーザの意気が新たに揚がるのだった―。
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