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― 第六章・吉凶禍福 ―
第246話 ラーザレゾナンス
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翌朝。
オワ-リンの要人らが、城に集まっている。
割と遠くに住んでいる者は、配下の【瞬間移動】で訪れたようだ。
[会議室]では、方針を巡って話し合いが進められていた。
なお、紫蓮などは[広間]で待機している。
そこには、“ラーザの近衛衆”の姿も見受けられた…。
会議室にて。
「やはり、難しいのではありませんかな??」
「〝連合を成して全ての神を討ち取る〟などといった大業は。」
痩せ型の中年男性が難色を示す。
「然り。」
「そもそも妖怪や魔族を信用してよいものやら。」
「“南陸第十三神国”に攻め込んでいるときに、妖魔どもに裏切られでもしたならば、元も子もありませんぞ。」
「他にも、〝我々の国に利益が無い〟という問題点もございますしなぁ。」
こう便乗したのは、太った中年男性だ。
「金銭に関しては大丈夫だ。」
「幾つかの国で神を倒してきた紫蓮達によれば、ヤツラは使いきれないほどの金銀財宝を溜め込んでいるらしい。」
「十三神国を制圧した際には、それらが手に入るだろうから、対価として一部を支払ってくれるそうだ。」
「て、言うか。」
「この件は損得勘定じゃあないだろッ?!」
「ボクらが“ゴッド・スレイヤーズ”を支援して、十三神国に勝利すれば、世界が大きく変わるきっかけとなるかもしれないんだ!!」
「神どもに虐げられている多くの者を救うために、立ち上がるべきでなはいのかッ!??」
ラーザが説得を試みたところ、二十人中の半数ぐらいがザワつきだした。
どうやら、反対意見を口にしているみたいだ。
少し間を置いて、
「黙らっしゃい!!」
右手でテーブルを〝バンッ!〟と叩いたのは、“ラーザの叔母”こと“ルリィザ”である。
金色でロングの髪を“お団子”にしている初老の女性ではあるが、凛としており、鋭気がみなぎっていた。
「次期国主は〝大局を見よ〟と言っているのです。」
「〝神々が威張り散らしてきた歴史を刷新しよう〟というのに、保身や私欲を優先するつもりとは、実に嘆かわしい。」
半ば呆れて〝ふぅ〟と息を吐いたルリィザが、
「私は、此度の策に賛成です。」
「兄上、どうか、ご明断を。」
“現国主”に働きかける。
「……、相分かった。」
静に返した国主が、
「オワ-リンは、第十三神国を叩く。」
「軍勢の総大将はラーザが務め、ルリィザが補佐せよ。」
「なお、異論を唱えておった面々は、戦が終わるまで謹慎と致す故、自宅から一歩も外に出るな。」
「兵士らに監視させるため、命令に反した場合は、厳罰に処す。」
そのように告げた。
これによって、先ほどの約10人が、肩を落として俯く…。
夕刻。
城のエントランスに、ラーザ/近衛衆/国主/ルリィザ/将軍が佇んでいる。
背後の室内には、[GOD SLAYER’S]が控えていた。
ちなみに、将軍は、以前、ラーザに「お嬢様」と声をかけ、あの頃のオワ-リン国の内情を伝えた男性だ。
……、いずれにしろ。
庭には、数千の兵隊が整列している。
「まず、国主に先んじて、ボクから述べておきたい…。」
「“北上”や“連合”に関しては、既に誰もが聞き及んでいるだろう。」
「なかには〝お膳立てに利用されるだけじゃないか〟と、不満を抱いている者がいてもおかしくない。」
「しかし……。」
「皆に思い出してもらいたい!!」
「数ヶ月前、この国を侵略しようとした十三神国との戦いを!」
「あのとき、家族に親戚であったり友や恋人を亡くした者も少なくないはずだ!!」
「まさか、もう、悲しみや悔しさの炎が消え失せたわけではないよなッ?!」
「今回は“弔い合戦”でもある!!」
「しかも!」
「“神の軍”を撃退して、この国を救ってくれた英雄たちの協力要請だ!!」
「恩に報いらないのは、恥ずべき行為でしかない!」
「それでも納得いかない者は直ちに去れ!!」
「責任は問わないから案ずるな!」
「だが…。」
〝すぅ――ッ〟
「気概があるのならば、新しい時代を切り拓くためにも、魂を燃やせぇえ!!!!」
ラーザの熱に、拳を上げて〝うおおおおおおおお――――ッ!!!!!!!!〟と呼応する兵士らであった―。
オワ-リンの要人らが、城に集まっている。
割と遠くに住んでいる者は、配下の【瞬間移動】で訪れたようだ。
[会議室]では、方針を巡って話し合いが進められていた。
なお、紫蓮などは[広間]で待機している。
そこには、“ラーザの近衛衆”の姿も見受けられた…。
会議室にて。
「やはり、難しいのではありませんかな??」
「〝連合を成して全ての神を討ち取る〟などといった大業は。」
痩せ型の中年男性が難色を示す。
「然り。」
「そもそも妖怪や魔族を信用してよいものやら。」
「“南陸第十三神国”に攻め込んでいるときに、妖魔どもに裏切られでもしたならば、元も子もありませんぞ。」
「他にも、〝我々の国に利益が無い〟という問題点もございますしなぁ。」
こう便乗したのは、太った中年男性だ。
「金銭に関しては大丈夫だ。」
「幾つかの国で神を倒してきた紫蓮達によれば、ヤツラは使いきれないほどの金銀財宝を溜め込んでいるらしい。」
「十三神国を制圧した際には、それらが手に入るだろうから、対価として一部を支払ってくれるそうだ。」
「て、言うか。」
「この件は損得勘定じゃあないだろッ?!」
「ボクらが“ゴッド・スレイヤーズ”を支援して、十三神国に勝利すれば、世界が大きく変わるきっかけとなるかもしれないんだ!!」
「神どもに虐げられている多くの者を救うために、立ち上がるべきでなはいのかッ!??」
ラーザが説得を試みたところ、二十人中の半数ぐらいがザワつきだした。
どうやら、反対意見を口にしているみたいだ。
少し間を置いて、
「黙らっしゃい!!」
右手でテーブルを〝バンッ!〟と叩いたのは、“ラーザの叔母”こと“ルリィザ”である。
金色でロングの髪を“お団子”にしている初老の女性ではあるが、凛としており、鋭気がみなぎっていた。
「次期国主は〝大局を見よ〟と言っているのです。」
「〝神々が威張り散らしてきた歴史を刷新しよう〟というのに、保身や私欲を優先するつもりとは、実に嘆かわしい。」
半ば呆れて〝ふぅ〟と息を吐いたルリィザが、
「私は、此度の策に賛成です。」
「兄上、どうか、ご明断を。」
“現国主”に働きかける。
「……、相分かった。」
静に返した国主が、
「オワ-リンは、第十三神国を叩く。」
「軍勢の総大将はラーザが務め、ルリィザが補佐せよ。」
「なお、異論を唱えておった面々は、戦が終わるまで謹慎と致す故、自宅から一歩も外に出るな。」
「兵士らに監視させるため、命令に反した場合は、厳罰に処す。」
そのように告げた。
これによって、先ほどの約10人が、肩を落として俯く…。
夕刻。
城のエントランスに、ラーザ/近衛衆/国主/ルリィザ/将軍が佇んでいる。
背後の室内には、[GOD SLAYER’S]が控えていた。
ちなみに、将軍は、以前、ラーザに「お嬢様」と声をかけ、あの頃のオワ-リン国の内情を伝えた男性だ。
……、いずれにしろ。
庭には、数千の兵隊が整列している。
「まず、国主に先んじて、ボクから述べておきたい…。」
「“北上”や“連合”に関しては、既に誰もが聞き及んでいるだろう。」
「なかには〝お膳立てに利用されるだけじゃないか〟と、不満を抱いている者がいてもおかしくない。」
「しかし……。」
「皆に思い出してもらいたい!!」
「数ヶ月前、この国を侵略しようとした十三神国との戦いを!」
「あのとき、家族に親戚であったり友や恋人を亡くした者も少なくないはずだ!!」
「まさか、もう、悲しみや悔しさの炎が消え失せたわけではないよなッ?!」
「今回は“弔い合戦”でもある!!」
「しかも!」
「“神の軍”を撃退して、この国を救ってくれた英雄たちの協力要請だ!!」
「恩に報いらないのは、恥ずべき行為でしかない!」
「それでも納得いかない者は直ちに去れ!!」
「責任は問わないから案ずるな!」
「だが…。」
〝すぅ――ッ〟
「気概があるのならば、新しい時代を切り拓くためにも、魂を燃やせぇえ!!!!」
ラーザの熱に、拳を上げて〝うおおおおおおおお――――ッ!!!!!!!!〟と呼応する兵士らであった―。
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