GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第五章・魔の領域 ―

第234話 情勢

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紫蓮しれんたちは北上を続けていた。

道中に幾つかの町が点在しているのだが、それらには立ち寄っていない。

数日前に、タリアノが、

「まだ敵か味方か分からない状況なので、迂回したほうがいいでしょう。」
「面倒ごとに巻き込まれないようにするために。」

こう提案し、誰も反対しなかったので、リーダーたる紫蓮が承諾した結果である。

そのため、百桃星ももせが〝取り敢えずの目的〟と定めていた場所には、通常であれば二週間ほどで辿り着くところが、20日を要していた……。


北方領土の中央に“主要都市”がある。

四方の門には、妖怪軍の“第二陣”が、兵をいて、待機していた。

ここに至るまで、鬼王きおうみたいに、4つの町に100万ずつを駐屯させてきたらしく、現在は合計で600万になっているようだ。

そうした南側に[GOD SLAYER‘S]が接近したら、一部の妖怪達が警戒しだしたのである。

だが、次の瞬間には、鬼姫に気づいて、跪いたのだった。

「お主らの総大将は何処いずこじゃ?」

百桃星の問いに、

「はッ。」
「西におられます。」

“天狗”が返したのである…。


昼過ぎの西門にて――。

「これは、百桃星様。」

半ば驚いた[総大将]が片膝を着き、周囲の妖怪たちがならう。

この流れで、総大将が、

「わざわざ赴かれるとは……、如何なされました??」

不思議そうに窺った。

彼は、“二足歩行の黒馬”で、額に二本のツノを有している。

身長は2.5Mといったとこだろう。

【武士】の鎧を装備していた。

なんでも、[馬頭鬼めずき]という名称で、“馬頭”とも呼ばれているらしい。

その妖怪に、

「まずはラクにせよ。」

鬼姫が声をかける。

「それでは、失礼して…。」

馬頭はもとより、配下の者らが立ち上がったところで、

「実はの……。」

事情を説明していく百桃星であった…。


「魔王との同盟とは……、さすがは陛下。」
「良き判断をなされましたな。」

〝フッ〟と笑みを零した馬頭鬼に、

「うむ!」
「そうであろう!!」

百桃星が誇らしげになる。

しかし、すぐに真顔となり、

「して?」
「戦況は??」

こう訊ねたのだった。

「我々は、つい先日、この場に訪れ、降伏を勧告したばかりでございます。」
「あの町の神どもは既に逃げており、残った人間らが方針を話し合っている最中です。」
「今後、衝突するのか、無血で済ませるのか…、期限を設けて答えを待っております。」

そう説明した馬頭である。

〝ふむ〟と頷いた百桃星が、

わらわは、このまま魔王領へと向かう。」
「そなたらは任務に準じておる故、見送りは無用じゃ。」
「父に代わって申しておこう……。」
「大儀である!」

そのように告げるなり、

「はは―ッ!!」

一斉に頭を下げる妖怪達であった…。


再び遠回りして進んだところ、1週間ぐらいの距離に10日を使ったようだ。

途中で雨に降られたりもしたが、基本的には順調な旅路だった。

何はともあれ。

[魔族の領土]との国境に差し掛かる紫蓮たちであった―。
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