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― 第五章・魔の領域 ―
第233話 好適
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百桃星にとっては、人生、いや、鬼生初の挑戦だった。
それは……、“料理”である。
カボチャを切ろうとしては、まな板をも両断して、
「なぬッ?!」
フリーズし…。
[鉄鍋]で肉を炒めようとしては、火力を間違い、おもいっきり焦がして、
「何故じゃあ―ッ!?」
大騒ぎする始末。
挙句の果てには、
「ふっふっふっふっふっ。」
邪悪な笑みを浮かべ、
「妾を手こずらせおって、生意気な。」
「斯くなる上は……。」
[亜空間]から引っ張り出した“金棒”を、
「こうしてくれるわ―ッ!!」
おもいっきり振りかぶった。
これを、近くに居たルウェーとペイニーが、
「いやいやいやいや、ダメですよ!」
「ちょっと落ち着きなさいってば!!」
慌てて止める。
そこに、撫子・涼音・ランソワ・スリアと、人型になっている女性サーヴァント達が寄って来た。
なお、四足歩行などの調理に適していない者たちは、不参加である。
さて。
「百桃星よ。」
「最初から上手くいかないのは当然なのだから、癇癪を起こす必要はあるまい。」
「かく言う私も、かつては似たようなものだった。」
ふと遠い目をしたのは、撫子だ。
「うぅ~む。」
「しかしのう…。」
「このままでは皆に迷惑を掛け続けそうじゃからして、妾は、男連中の“後片付け班”に回してもらったほうが良いやもしれん。」
難しい表情となった鬼姫に、
「あっちも割と面倒くさいぞ。」
このように述べたのは、スリアであった。
「そうなのか??」
百桃星が首を傾げたところ、
「まぁ、食器洗い、テーブル拭き、台所に床の清掃と、いろいろやる事がありますからね。」
涼音が説明し、
「それと、ゴミの処理ですね。」
「基本的には、燃やして灰にするので、その魔法やスキルを使える方々が、外で対処しています。」
「雨の日も、風の日も、夏場も、冬場も、関係なく、です。」
ランソワが捕捉する。
「ふむ。」
「成程のぉう。」
理解を示した百桃星に、
「そうですよ。」
〝うん うん〟と頷いたルウェーが、
「まずは女性陣で和気あいあいと親睦を深めていきましょう。」
優しく伝えた。
それによって、
「で、あるな。」
穏やかに納得した百桃星である。
ちなみに、焜炉には、[火炎系の魔鉱石]が内蔵されているのだそうだ……。
翌日――。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、改めて、北へと向かっていた。
草原を歩きながら、ランダ―が、
「鬼王陛下は、今後どうなさるおつもりなのですか?」
「現在、都の軍勢では、神々が巻き返してきた場合、不利になるでしょう。」
「特に、この国の東側は未だ制圧していないのですから、隣の神国に援軍を要請されてしまったならば対応しきれないのでは??」
こうした疑問を投げかけた。
「それならば、心配は無用じゃ。」
「父上は、中央と西方の町に駐屯させた妖怪らを、半数ずつ王都に送るよう、既に命令を発しておられたからの。」
「これによって、400万が馳せ参じることになるゆえ、合わせれば600万を超えよう。」
「ま、都より西側の地域は殆どが恭順するじゃろうからして、戦が勃発しそうになった際には、よりもっと多くの兵を動員できるだろうのッ。」
百桃星が告げたところ、
「あとは、北方と南方の状況次第ですね。」
タリアノが新たに意見する。
それを受けて、
「第二陣も第三陣も大丈夫じゃろう、きっと。」
「何せ、この国の王だった神が滅せられたのは、全土に広まっていっておるじゃろうからな。」
「戦意を喪失して、まともにはやり合えんじゃろうし…、人間あたりは、これを機に、まだ残っておる神どもに反旗を翻すじゃろうからの。」
「案ずる事はない。」
楽観的に答える鬼姫だった―。
それは……、“料理”である。
カボチャを切ろうとしては、まな板をも両断して、
「なぬッ?!」
フリーズし…。
[鉄鍋]で肉を炒めようとしては、火力を間違い、おもいっきり焦がして、
「何故じゃあ―ッ!?」
大騒ぎする始末。
挙句の果てには、
「ふっふっふっふっふっ。」
邪悪な笑みを浮かべ、
「妾を手こずらせおって、生意気な。」
「斯くなる上は……。」
[亜空間]から引っ張り出した“金棒”を、
「こうしてくれるわ―ッ!!」
おもいっきり振りかぶった。
これを、近くに居たルウェーとペイニーが、
「いやいやいやいや、ダメですよ!」
「ちょっと落ち着きなさいってば!!」
慌てて止める。
そこに、撫子・涼音・ランソワ・スリアと、人型になっている女性サーヴァント達が寄って来た。
なお、四足歩行などの調理に適していない者たちは、不参加である。
さて。
「百桃星よ。」
「最初から上手くいかないのは当然なのだから、癇癪を起こす必要はあるまい。」
「かく言う私も、かつては似たようなものだった。」
ふと遠い目をしたのは、撫子だ。
「うぅ~む。」
「しかしのう…。」
「このままでは皆に迷惑を掛け続けそうじゃからして、妾は、男連中の“後片付け班”に回してもらったほうが良いやもしれん。」
難しい表情となった鬼姫に、
「あっちも割と面倒くさいぞ。」
このように述べたのは、スリアであった。
「そうなのか??」
百桃星が首を傾げたところ、
「まぁ、食器洗い、テーブル拭き、台所に床の清掃と、いろいろやる事がありますからね。」
涼音が説明し、
「それと、ゴミの処理ですね。」
「基本的には、燃やして灰にするので、その魔法やスキルを使える方々が、外で対処しています。」
「雨の日も、風の日も、夏場も、冬場も、関係なく、です。」
ランソワが捕捉する。
「ふむ。」
「成程のぉう。」
理解を示した百桃星に、
「そうですよ。」
〝うん うん〟と頷いたルウェーが、
「まずは女性陣で和気あいあいと親睦を深めていきましょう。」
優しく伝えた。
それによって、
「で、あるな。」
穏やかに納得した百桃星である。
ちなみに、焜炉には、[火炎系の魔鉱石]が内蔵されているのだそうだ……。
翌日――。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、改めて、北へと向かっていた。
草原を歩きながら、ランダ―が、
「鬼王陛下は、今後どうなさるおつもりなのですか?」
「現在、都の軍勢では、神々が巻き返してきた場合、不利になるでしょう。」
「特に、この国の東側は未だ制圧していないのですから、隣の神国に援軍を要請されてしまったならば対応しきれないのでは??」
こうした疑問を投げかけた。
「それならば、心配は無用じゃ。」
「父上は、中央と西方の町に駐屯させた妖怪らを、半数ずつ王都に送るよう、既に命令を発しておられたからの。」
「これによって、400万が馳せ参じることになるゆえ、合わせれば600万を超えよう。」
「ま、都より西側の地域は殆どが恭順するじゃろうからして、戦が勃発しそうになった際には、よりもっと多くの兵を動員できるだろうのッ。」
百桃星が告げたところ、
「あとは、北方と南方の状況次第ですね。」
タリアノが新たに意見する。
それを受けて、
「第二陣も第三陣も大丈夫じゃろう、きっと。」
「何せ、この国の王だった神が滅せられたのは、全土に広まっていっておるじゃろうからな。」
「戦意を喪失して、まともにはやり合えんじゃろうし…、人間あたりは、これを機に、まだ残っておる神どもに反旗を翻すじゃろうからの。」
「案ずる事はない。」
楽観的に答える鬼姫だった―。
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