GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第五章・魔の領域 ―

第232話 心躍りて

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紫蓮しれんたちは、途中で[大きめの宿]に泊まっていた。

こういう施設に入ったことのない“鬼姫”などにとっては割と面白いらしい。

なかでも特に上機嫌なのは、百桃星ももせである…。


一同は、翌日の夕刻に[王都の北門]を出た。

そこで野営していた妖怪の一部が、百桃星を視界に捉えるなり、急ぎ跪く。

「〝さすがは〟と言ったとこだな。」

少なからず感心する撫子なでしこに、

「まぁのッ。」

百桃星が得意気になる。

ここへ、前方より“鎧武者”が近づいて来た。

総面そうめんを着けているので表情は分からないが、瞳が赤い。

その“隊長らしき武士”が、足を止め、お辞儀した流れで、

「何用でしょうか? 百桃星様。」

鬼姫に伺う。

「いや、そうではなく……、父上の考えにて、魔王に会いに行くのじゃ。」
「本格的に同盟を結ぶためになッ。」

百桃星が笑顔で告げたところ、

「なんと!」
「左様でございましたか…。」
「魔族との関係を強化できれば、我らが陛下は、この国を統べる事に専念できるでしょうから、目出度めでたい限りですな。」

納得した“武者”が、脇に逸れて、

「いってらっしゃいませ。」

再び会釈したのである。

百桃星が〝うむ〟と頷き、一同は改めて歩きだす。

ふと、

「さっきのも妖怪か??」

グーランに訊かれ、

「“外道兵げどうへい”だ。」
「禍々しい容姿になっているらしく、ああやって全体的に隠しておる。」
「〝周囲に不快な思いをさせぬように〟との配慮にて。」
「それなりの数が存在しておるが、どれもが結構な怪力じゃぞ。」

こう説明する鬼姫だった……。


野営地を抜けてから暫く経ち、日が沈みきったので、タリアノがテント(ゲル)を設置している。

その内部にて、

「なんじゃ?! これは!!」

百桃星が驚いた。

彼女のサーヴァントに、使者らも、唖然として立ち尽くしている。

「話しは俄かに信じられんかったが…、まさかこれほどまでとは。」

目を丸くしたまま述べた百桃星に、

「まぁ、そういう反応になりますよねぇ。」
「私も初めて見たときはビックリさせられましたし。」

ルウェーが当時を懐かしむ。

もともと“人見知り”な彼女ではあるものの、[大聖堂]で暮らしていた頃よりは改善されているみたいだ。

幾つもの経験を積んできた結果であろう。

さて。

「ふむ?」
「人間の誰しもが所有しておる訳ではないのか??」

百桃星が首を傾げたら、

「こういのを持ってんのはタリアノだけだぜ。」
「“大魔導師”の祖父と、ドワーフの技術で、造り上げたんだとさ。」

フゥーリカンが教えてくれた。

〝ほぉーう〟と百桃星達が理解を示したところで、

「まだ部屋は余っていますので、各自でお使いください。」

タリアノが勧める。

「良いのか!?」

瞳を輝かせる百桃星に、

「ええ。」
「ご自由にどうぞ。」

タリアノが優しく微笑む。

これを受け、“黒い猫又”が代表して、

「かたじけない。」
「感謝いたす。」

頭を下げたら、他の使者たちと、百桃星のサーヴァントが、ならったのである。

一方、興味が勝って、それどころではなく、あちらこちらを〝キョロ キョロ〟と観察する鬼姫であった―。
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