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― 第五章・魔の領域 ―
第228話 遷移
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敵と味方、本隊同士の直接対決から二日が経っている。
あの戦によって、こちらは約20万の死者が出たので、兵数は180万となっていた。
相手側は、およそ100万が討ち取られたのと、40万あたりが逃亡に成功したので、捕虜になったのは残りの60万ぐらいのようだ。
そういった状況で、[妖怪の軍]は、東陸第四神国の“王都”に辿り着いている。
西門付近で、妖怪・人間・サーヴァントが、捕虜らを囲むようにして、野営を行なう運びとなった。
ただし、鬼王一族は、5万の兵と、ユナーダ達や、ペッテェーロンの派閥を連れて、城を目指している。
ちなみに、“武功第一”と認められた[GOD SLAYER’S]など、かなりの恩賞を授与される約束になっている傭兵たちも、いささか伴わられていた。
なにはともあれ。
大通りを進む鬼王達を、都の民衆らが、住宅の窓から観察している。
改革を期待する人々もいるようだが、どちらかといえば妖怪に恐れを抱いている者が多いみたいだ……。
鬼王らは、城の敷地へと足を踏み入れた。
殆どを庭で待機させる事にした鬼王は、自身の一族/千数ほどの妖怪/ユナーダやペッテェーロンたちと共に、建物の内部へと歩いてゆく…。
一階のエントランスには、杖を突いた“男性の老人”と、宮廷魔術士らしき50名くらいの者が、佇んでいる。
両脇の二人に背を支えられている老体は、長めの髪&髭と、眉が、白い。
その男に、
「神次様!」
声をかけたユナーダなど、数十名が、跪く。
ペッテェーロン派は、立ったままであり、不機嫌そうだ。
「よい。」
「ラクにせよ。」
穏やかな口調の神次によって、ユナーダたちが姿勢を戻す。
「……。」
「お初に御目に掛かります。」
「鬼王陛下…、で、間違いございませんな?」
こう尋ねた神次に、
「うむ。」
[妖怪の君主]が静かながらも力強く頷いた。
「この国の王どもを倒してくださったこと、心より感謝いたします。」
会釈した神次が、
「反対勢力と、その家族は、既に捕らえて、一ヵ所に集めておりますので、いかようにも。」
そう告げる。
「相分かった。」
「まずは、王都の隅々に至るまで知らしめるとしよう。」
「〝変革の時、来たれり〟とな。」
〝フッ〟と優しい笑みを浮かべる鬼王に、
「お、おお、おー。」
「ついに、長年に亘る望みが叶う……。」
「これで、私も安心して隠居できるというものだ。」
神次が嬉しそうに涙ぐむ。
彼の配下のなかには、憚らずに泣いている者も少なくない。
無論、これは、喜びからくるものであった…。
一時間程が過ぎ、昼間の市中で、磔にされたペッテェーロン達は、前もっての宣告どおり、処刑されたのである。
派閥の軸でなかった者らは、妖怪たちが未だ征圧していない東へと追放するらしい。
鬼王にしてみれば、これから先、弱きを虐げて私腹を肥やす輩が出てこないようにする為の“見せしめ”だった。
捕虜となっている敗残兵に関しては、自由にしてあげるみたいだ。
そうした流れで、夕刻となり、[玉座の間]に招かれた紫蓮たちであった―。
あの戦によって、こちらは約20万の死者が出たので、兵数は180万となっていた。
相手側は、およそ100万が討ち取られたのと、40万あたりが逃亡に成功したので、捕虜になったのは残りの60万ぐらいのようだ。
そういった状況で、[妖怪の軍]は、東陸第四神国の“王都”に辿り着いている。
西門付近で、妖怪・人間・サーヴァントが、捕虜らを囲むようにして、野営を行なう運びとなった。
ただし、鬼王一族は、5万の兵と、ユナーダ達や、ペッテェーロンの派閥を連れて、城を目指している。
ちなみに、“武功第一”と認められた[GOD SLAYER’S]など、かなりの恩賞を授与される約束になっている傭兵たちも、いささか伴わられていた。
なにはともあれ。
大通りを進む鬼王達を、都の民衆らが、住宅の窓から観察している。
改革を期待する人々もいるようだが、どちらかといえば妖怪に恐れを抱いている者が多いみたいだ……。
鬼王らは、城の敷地へと足を踏み入れた。
殆どを庭で待機させる事にした鬼王は、自身の一族/千数ほどの妖怪/ユナーダやペッテェーロンたちと共に、建物の内部へと歩いてゆく…。
一階のエントランスには、杖を突いた“男性の老人”と、宮廷魔術士らしき50名くらいの者が、佇んでいる。
両脇の二人に背を支えられている老体は、長めの髪&髭と、眉が、白い。
その男に、
「神次様!」
声をかけたユナーダなど、数十名が、跪く。
ペッテェーロン派は、立ったままであり、不機嫌そうだ。
「よい。」
「ラクにせよ。」
穏やかな口調の神次によって、ユナーダたちが姿勢を戻す。
「……。」
「お初に御目に掛かります。」
「鬼王陛下…、で、間違いございませんな?」
こう尋ねた神次に、
「うむ。」
[妖怪の君主]が静かながらも力強く頷いた。
「この国の王どもを倒してくださったこと、心より感謝いたします。」
会釈した神次が、
「反対勢力と、その家族は、既に捕らえて、一ヵ所に集めておりますので、いかようにも。」
そう告げる。
「相分かった。」
「まずは、王都の隅々に至るまで知らしめるとしよう。」
「〝変革の時、来たれり〟とな。」
〝フッ〟と優しい笑みを浮かべる鬼王に、
「お、おお、おー。」
「ついに、長年に亘る望みが叶う……。」
「これで、私も安心して隠居できるというものだ。」
神次が嬉しそうに涙ぐむ。
彼の配下のなかには、憚らずに泣いている者も少なくない。
無論、これは、喜びからくるものであった…。
一時間程が過ぎ、昼間の市中で、磔にされたペッテェーロン達は、前もっての宣告どおり、処刑されたのである。
派閥の軸でなかった者らは、妖怪たちが未だ征圧していない東へと追放するらしい。
鬼王にしてみれば、これから先、弱きを虐げて私腹を肥やす輩が出てこないようにする為の“見せしめ”だった。
捕虜となっている敗残兵に関しては、自由にしてあげるみたいだ。
そうした流れで、夕刻となり、[玉座の間]に招かれた紫蓮たちであった―。
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