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― 第五章・魔の領域 ―
第227話 本懐
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右翼隊も含めて、[妖怪の軍]は、勢いに乗っている。
もはや、敵は逃げ惑うより他なかった。
なかには、武器を捨て、後頭部で両手を組んでいる人々やサーヴァントが見受けられる。
どうやら、諦めて投降するつもりらしい。
一方で、特に神どもは、追撃を振り切ろうと必死になっていた。
だが、飛行できる者たちの【スキル】や【魔法】によって、次々と撃ち落とされていく。
暫く経ったところで、
「ここらあたりで良かろう。」
「勝鬨を上げよ!」
そう指示する鬼王だった……。
野外にて。
木製の簡易的な椅子に、鬼王夫婦が、別々に腰掛けている。
この両脇には、彼らの子供達が佇んでいた。
また、幹部たちを中心に、数十の妖怪も控えている。
そういった状況で、鬼王らの正面に跪いた“二足歩行の三毛猫”が、
「敵の四割ほどは、この場から去った模様です。」
「中級は殲滅できたものの、下級の神々は幾らか生き延びております。」
「ただ、〝王都に避難するのは危険〟と判断したのか、あちらこちらの方角へと向かっておりました。」
このように報告したのであった。
声からしてオスに違いない猫は、黒装束に[忍び甲冑]を纏っている。
〝ふむ〟と頷いて、
「相分かった。」
「…、して?」
「神次の配下どもは??」
そう訊いた鬼王に、
「残らず捕まえておりますので、ここに連れてまいります。」
お辞儀する“三毛猫”だった。
何分後かに、鬼王らの眼前で、12人の男女が正座させられている。
誰もが、後ろ手に縄で縛られているようだ。
これら集団の先頭にいるのは、“ペッテェーロン”であった。
「我は、この国の人間を出来うる限り殺したくはない。」
「だが。」
「お前の派閥は〝最も灰汁どい〟と聞き及ぶ。」
「故に、そのほう達は“百害あって一利なし”のため、今ここに居ない者らも含めて、命を絶たせてもらう。」
「多くの民を虐げてきた報いだと思え。」
鬼王に言い渡されて、
「我々の情報を、どこで?」
「まさか……。」
ペッテェーロンが訝しがる。
〝フッ〟と口元を緩めた鬼王が、右側へと視線を送ったら、妖怪たちに紛れていた“人間の女性”が進み出てきた。
「ユナーダ。」
〝ギリッ!!〟と歯軋りしたペッテェーロンが、
「貴様、裏切ったな!」
怒りを露わにする。
その近くで止まって、
「いえ、そうではなく…。」
「計画通りだったのですよ。」
冷ややかに述べたユナーダに、
「は??」
ペッテェーロンが首を傾げた。
「そもそも、神次様は、国の将来を憂い、内側から変えていこうとなさっていました。」
「しかし、貴方がたのような“強欲な輩”に阻まれ上手くいかず、嘆いておられたのです。」
「そうして、希望を失いかけていらっしゃったものの、私が鬼王陛下との接触に成功した事によって、妙案を示されました。」
「〝国王を倒してもらうのと同時に、最大の膿であるペッテェーロン派を一掃する〟と。」
「要は、〝鬼王陛下の力を借りて、外側から改革を成す〟とのお考えを、私に授けられたのです。」
こうユナーダが語ったところ、
「つまり…、我々は〝踊らされていた〟という訳か。」
ペッテェーロンが愕然として、俯いたのである。
〝スゥ―ッ〟と立ち上がった鬼王が、
「今頃、都の城内では、神次に従う者らが、お前の手下どもを捕縛しておろう。」
「ゆくゆく、公開処刑を執行する故、覚悟しておれ。」
そのように伝えたのだった―。
もはや、敵は逃げ惑うより他なかった。
なかには、武器を捨て、後頭部で両手を組んでいる人々やサーヴァントが見受けられる。
どうやら、諦めて投降するつもりらしい。
一方で、特に神どもは、追撃を振り切ろうと必死になっていた。
だが、飛行できる者たちの【スキル】や【魔法】によって、次々と撃ち落とされていく。
暫く経ったところで、
「ここらあたりで良かろう。」
「勝鬨を上げよ!」
そう指示する鬼王だった……。
野外にて。
木製の簡易的な椅子に、鬼王夫婦が、別々に腰掛けている。
この両脇には、彼らの子供達が佇んでいた。
また、幹部たちを中心に、数十の妖怪も控えている。
そういった状況で、鬼王らの正面に跪いた“二足歩行の三毛猫”が、
「敵の四割ほどは、この場から去った模様です。」
「中級は殲滅できたものの、下級の神々は幾らか生き延びております。」
「ただ、〝王都に避難するのは危険〟と判断したのか、あちらこちらの方角へと向かっておりました。」
このように報告したのであった。
声からしてオスに違いない猫は、黒装束に[忍び甲冑]を纏っている。
〝ふむ〟と頷いて、
「相分かった。」
「…、して?」
「神次の配下どもは??」
そう訊いた鬼王に、
「残らず捕まえておりますので、ここに連れてまいります。」
お辞儀する“三毛猫”だった。
何分後かに、鬼王らの眼前で、12人の男女が正座させられている。
誰もが、後ろ手に縄で縛られているようだ。
これら集団の先頭にいるのは、“ペッテェーロン”であった。
「我は、この国の人間を出来うる限り殺したくはない。」
「だが。」
「お前の派閥は〝最も灰汁どい〟と聞き及ぶ。」
「故に、そのほう達は“百害あって一利なし”のため、今ここに居ない者らも含めて、命を絶たせてもらう。」
「多くの民を虐げてきた報いだと思え。」
鬼王に言い渡されて、
「我々の情報を、どこで?」
「まさか……。」
ペッテェーロンが訝しがる。
〝フッ〟と口元を緩めた鬼王が、右側へと視線を送ったら、妖怪たちに紛れていた“人間の女性”が進み出てきた。
「ユナーダ。」
〝ギリッ!!〟と歯軋りしたペッテェーロンが、
「貴様、裏切ったな!」
怒りを露わにする。
その近くで止まって、
「いえ、そうではなく…。」
「計画通りだったのですよ。」
冷ややかに述べたユナーダに、
「は??」
ペッテェーロンが首を傾げた。
「そもそも、神次様は、国の将来を憂い、内側から変えていこうとなさっていました。」
「しかし、貴方がたのような“強欲な輩”に阻まれ上手くいかず、嘆いておられたのです。」
「そうして、希望を失いかけていらっしゃったものの、私が鬼王陛下との接触に成功した事によって、妙案を示されました。」
「〝国王を倒してもらうのと同時に、最大の膿であるペッテェーロン派を一掃する〟と。」
「要は、〝鬼王陛下の力を借りて、外側から改革を成す〟とのお考えを、私に授けられたのです。」
こうユナーダが語ったところ、
「つまり…、我々は〝踊らされていた〟という訳か。」
ペッテェーロンが愕然として、俯いたのである。
〝スゥ―ッ〟と立ち上がった鬼王が、
「今頃、都の城内では、神次に従う者らが、お前の手下どもを捕縛しておろう。」
「ゆくゆく、公開処刑を執行する故、覚悟しておれ。」
そのように伝えたのだった―。
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