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― 第五章・魔の領域 ―
第223話 遠征地にて・急
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西方領土の“中心都市”に200万を置いた[妖怪の第一陣]は、東へと向かった。
そこから七日ほどが経っている。
更には二つの町に100万ずつを駐屯させ、現在400万となった軍勢は、中央領土との境で休憩していた。
零時を回り、多くの者が寝静まっているなか、自分専用のテント(ゲル)内にて、暗がりでブレスレットを操作した“神次の配下”たる女性が、[通話機能]で誰かしらと〝コソコソ〟喋っている。
“黒いフードマント”を脱いでいる彼女は、なかなかの美形であった。
赤茶色の髪は“ふんわりセミロング”で、瞳はライトブラウンである。
[薄型画面]に映し出されているのは、50代後半らしき男性だ。
やや小太りで、金色の髪は薄く、瞳は青い。
「“妖怪の軍”は、中央領土の町にも100万ずつを配置していくみたいですので、王都に辿り着く頃には200万にまで減少していることでしょう。」
こう伝えた女性に、
『信じてよいのだな?』
『ユナーダよ。』
男性が探りを入れた。
「ええ、勿論です。」
「私は、捕まってからというもの、鬼王の信頼を得てきましたので、確かな情報でございます。」
『うぅ~む。』
『だとすれば、勝機はあるかもしれんな…。』
「左様ですとも。」
「此度の戦、総大将である鬼王の首を獲りさえすれば、およそ3000万の妖怪どもは撤退を余儀なくされるでしょう。」
「この件を我らの王陛下にお伝えになれば、ペッテェーロン殿は重宝がられるようになるかと……。」
“ユナーダ”が意見したところ、
『おおー、一理あるな。』
“ペッテェーロン”が瞳を輝かせたのである。
「ところで…、そちらは、どれくらいの規模になりそうですか??」
『うむ。』
『中央と東方の各地より、兵隊たちが急ぎ都に駆け付けようとしておる。』
『それでも、結局は200万ぐらいにしかならんだろうが……。』
「数のうえでは互角ですね。」
「だとしても…、妖怪どもにとっては不慣れな敵地。」
「神国のほうが何かと有利でございましょう。」
「それに。」
「戦闘が始まった際には、捕虜らが呼応する事になっておりますので、神側の敗北は無いかと。」
ユナーダの説明に、
『……、そなたの言う通りであるな。』
ペッテェーロンが深く頷いた。
『しかし、解せんな…。』
『お前は、神次の“子飼い”だというのに、何故、私に教える?』
相手に疑われ、
「それは簡単な理由でございます。」
「神次様は、すでに齢80を超えられ、年々、体が弱ってきておられますので、いつ寿命が尽きてもおかしくありません。」
「となれば、継承する人物を見極める必要が出てきます。」
「幾人かの候補者のなかでも〝ペッテェーロン殿こそが相応しい〟と、そう思ったまでのことですよ。」
そのようにユナーダが返したのである。
『つまりは〝先々を考えた〟という訳か。』
『……、良かろう。』
『上手くいった暁には、そなたを最高幹部に就任させてやろうぞ。』
「ありがとうございます。」
「それでは、数日後に。」
連絡を切って、
「これで、ようやく終わる。」
独り呟き、〝ふふふふふッ〟と笑みを浮かべる“ユナーダ”だった―。
そこから七日ほどが経っている。
更には二つの町に100万ずつを駐屯させ、現在400万となった軍勢は、中央領土との境で休憩していた。
零時を回り、多くの者が寝静まっているなか、自分専用のテント(ゲル)内にて、暗がりでブレスレットを操作した“神次の配下”たる女性が、[通話機能]で誰かしらと〝コソコソ〟喋っている。
“黒いフードマント”を脱いでいる彼女は、なかなかの美形であった。
赤茶色の髪は“ふんわりセミロング”で、瞳はライトブラウンである。
[薄型画面]に映し出されているのは、50代後半らしき男性だ。
やや小太りで、金色の髪は薄く、瞳は青い。
「“妖怪の軍”は、中央領土の町にも100万ずつを配置していくみたいですので、王都に辿り着く頃には200万にまで減少していることでしょう。」
こう伝えた女性に、
『信じてよいのだな?』
『ユナーダよ。』
男性が探りを入れた。
「ええ、勿論です。」
「私は、捕まってからというもの、鬼王の信頼を得てきましたので、確かな情報でございます。」
『うぅ~む。』
『だとすれば、勝機はあるかもしれんな…。』
「左様ですとも。」
「此度の戦、総大将である鬼王の首を獲りさえすれば、およそ3000万の妖怪どもは撤退を余儀なくされるでしょう。」
「この件を我らの王陛下にお伝えになれば、ペッテェーロン殿は重宝がられるようになるかと……。」
“ユナーダ”が意見したところ、
『おおー、一理あるな。』
“ペッテェーロン”が瞳を輝かせたのである。
「ところで…、そちらは、どれくらいの規模になりそうですか??」
『うむ。』
『中央と東方の各地より、兵隊たちが急ぎ都に駆け付けようとしておる。』
『それでも、結局は200万ぐらいにしかならんだろうが……。』
「数のうえでは互角ですね。」
「だとしても…、妖怪どもにとっては不慣れな敵地。」
「神国のほうが何かと有利でございましょう。」
「それに。」
「戦闘が始まった際には、捕虜らが呼応する事になっておりますので、神側の敗北は無いかと。」
ユナーダの説明に、
『……、そなたの言う通りであるな。』
ペッテェーロンが深く頷いた。
『しかし、解せんな…。』
『お前は、神次の“子飼い”だというのに、何故、私に教える?』
相手に疑われ、
「それは簡単な理由でございます。」
「神次様は、すでに齢80を超えられ、年々、体が弱ってきておられますので、いつ寿命が尽きてもおかしくありません。」
「となれば、継承する人物を見極める必要が出てきます。」
「幾人かの候補者のなかでも〝ペッテェーロン殿こそが相応しい〟と、そう思ったまでのことですよ。」
そのようにユナーダが返したのである。
『つまりは〝先々を考えた〟という訳か。』
『……、良かろう。』
『上手くいった暁には、そなたを最高幹部に就任させてやろうぞ。』
「ありがとうございます。」
「それでは、数日後に。」
連絡を切って、
「これで、ようやく終わる。」
独り呟き、〝ふふふふふッ〟と笑みを浮かべる“ユナーダ”だった―。
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