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― 第五章・魔の領域 ―
第207話 試合・破
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闘技場の中央には、石造りで円形の[舞台]が設置されている。
その四方には、これまた石で出来た階段が一つずつ付属していた。
そんな舞台の周囲は“砂地”である。
一つ前の試合が終わり、対戦していた両者が退場していくなかで、〝スッ〟と立ち上がった鬼王が、
「皆の者ぉ!!」
「聞くがよい!」
「本来は、ここで休憩に入ることになっておるが、この後すぐに“特別な試合”を開催いたす!!」
「それは、戦事に関して我が国の軍が協力するか否かを決定づけるための勝負である!」
「南陸のサガーミィーより訪れし使者には、江司郎に挑んでもらう故、とくと刮目せよ!!」
大声で報せた。
これによって、観客が〝おおおお――――ッ!!!!〟と盛り上がったのである。
そのような光景に、入場口で待機している紫蓮が、
「かなり人気が高いみたいだな、俺の相手は。」
独り言かのように述べたところ、
「まぁ、二年連続で優勝していますし…、ここ一年ほどは負け知らずですので。」
案内係である[飛縁魔]が伝えたのであった……。
舞台の宙には、一体の妖怪が浮いている。
5Mぐらいの全長は蛇であり、鳥の翼と足を有していた。
人のような顔には嘴が見受けられる。
なんでも、[以津真天]という名称らしい。
この妖怪が、
「両者、入場!」
そう告げたことによって、西から紫蓮が、東からは“二足歩行の蛙”が出てきた。
[大蝦蟇]という妖怪で、背丈が4Mくらいあり、恰幅がいい。
皮膚は、青紫色である。
鎧を含めた具足は簡易的であり、“突盔形陣笠”を被っていた。
これら【武士】の装備品は黒色で、陣羽織は赤色を基調としている。
右手で握った“5Mぐらいの槍”を肩に担いでおり、その穂は[十文字]のようだ。
左手では、1Mありそうな[煙管]を、口に運んではタバコを吸っていた…。
舞台の中央で、紫蓮と江司郎が対峙する。
両者の側では、審判を務める以津真天が、試合の規則を説明していた。
ちなみに、場外は“反則負け”となる。
闘い方については〝なんでもあり〟の自由だが、選手に死ぬ危険がありそうなときは審判が強制的に中断させるとの事だ。
また、どちらかが降参した場合にも、当然ながら試合が終了する。
“南の特別室”にて、
「対戦相手は結構デカイみたいだな。」
隊長のフーマーが呟く。
彼の近くで、
「紫蓮殿は大丈夫でしょうか?」
副隊長である女性が少なからず不安がる。
やり取りが聞こえたらしいナーガリーが、
「信じるほかありません。」
自分の胸元で、祈るかのように指を組んだ。
“北の部屋”では、
「お手並み拝見、といこうか。」
鬼王が〝フッ〟と笑みを零した。
大蝦蟇が煙管を帯縄に差し、紫蓮が抜刀したところで、以津真天が〝スゥ――〟と上昇する。
双方が武器を構え、会場が静寂に包まれていくなか、空中で〝ピタッ〟と止まった審判が、
「それでは……、始めぇえ!!」
と、告げたのだった―。
その四方には、これまた石で出来た階段が一つずつ付属していた。
そんな舞台の周囲は“砂地”である。
一つ前の試合が終わり、対戦していた両者が退場していくなかで、〝スッ〟と立ち上がった鬼王が、
「皆の者ぉ!!」
「聞くがよい!」
「本来は、ここで休憩に入ることになっておるが、この後すぐに“特別な試合”を開催いたす!!」
「それは、戦事に関して我が国の軍が協力するか否かを決定づけるための勝負である!」
「南陸のサガーミィーより訪れし使者には、江司郎に挑んでもらう故、とくと刮目せよ!!」
大声で報せた。
これによって、観客が〝おおおお――――ッ!!!!〟と盛り上がったのである。
そのような光景に、入場口で待機している紫蓮が、
「かなり人気が高いみたいだな、俺の相手は。」
独り言かのように述べたところ、
「まぁ、二年連続で優勝していますし…、ここ一年ほどは負け知らずですので。」
案内係である[飛縁魔]が伝えたのであった……。
舞台の宙には、一体の妖怪が浮いている。
5Mぐらいの全長は蛇であり、鳥の翼と足を有していた。
人のような顔には嘴が見受けられる。
なんでも、[以津真天]という名称らしい。
この妖怪が、
「両者、入場!」
そう告げたことによって、西から紫蓮が、東からは“二足歩行の蛙”が出てきた。
[大蝦蟇]という妖怪で、背丈が4Mくらいあり、恰幅がいい。
皮膚は、青紫色である。
鎧を含めた具足は簡易的であり、“突盔形陣笠”を被っていた。
これら【武士】の装備品は黒色で、陣羽織は赤色を基調としている。
右手で握った“5Mぐらいの槍”を肩に担いでおり、その穂は[十文字]のようだ。
左手では、1Mありそうな[煙管]を、口に運んではタバコを吸っていた…。
舞台の中央で、紫蓮と江司郎が対峙する。
両者の側では、審判を務める以津真天が、試合の規則を説明していた。
ちなみに、場外は“反則負け”となる。
闘い方については〝なんでもあり〟の自由だが、選手に死ぬ危険がありそうなときは審判が強制的に中断させるとの事だ。
また、どちらかが降参した場合にも、当然ながら試合が終了する。
“南の特別室”にて、
「対戦相手は結構デカイみたいだな。」
隊長のフーマーが呟く。
彼の近くで、
「紫蓮殿は大丈夫でしょうか?」
副隊長である女性が少なからず不安がる。
やり取りが聞こえたらしいナーガリーが、
「信じるほかありません。」
自分の胸元で、祈るかのように指を組んだ。
“北の部屋”では、
「お手並み拝見、といこうか。」
鬼王が〝フッ〟と笑みを零した。
大蝦蟇が煙管を帯縄に差し、紫蓮が抜刀したところで、以津真天が〝スゥ――〟と上昇する。
双方が武器を構え、会場が静寂に包まれていくなか、空中で〝ピタッ〟と止まった審判が、
「それでは……、始めぇえ!!」
と、告げたのだった―。
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