GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第五章・魔の領域 ―

第205話 譲れぬ両者・後編

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間合いを詰めたフーマー隊長が、振り上げた[鉄製の剣]を、

「うおりゃあぁッ!!」

紫蓮しれんに叩き付けようとする。

だが、それよりも速く、ガラ空きとなっているフーマーの右脇腹に、紫蓮が払った鉄刀を〝ドンッ!〟と当てた。

「ぐッ!?」

苦痛の表情となった隊長が、右膝を着く。

「ま、こんなもんだろうな。」

そう呟いた紫蓮を、

「まだ、終わってないぞ!!」

フーマーが睨みつける。

紫蓮にしてみれば単純に相手の力量を分析したにすぎないのだが、どうやら隊長は見下された気がしたらしい。

「ぬうぅぅうッ!」

根性で立ち上がったフーマーが、改めて両手で掴んだ武器を、

「ふんッ!!」

おもいっきり突き出す。

左に〝スィッ〟と躱した紫蓮が、隊長の無防備な背中を、[鉄の刀]で〝ズバンッ!〟と打った。
この一撃によって、

「がぁッ?!」

フーマーは、うつ伏せで倒れてしまったのである。

「俺の勝ちだな。」

紫蓮が淡々と告げたところ、

「いや…、待て。」
「こっちは、負けを、認めてねぇぞ。」
「故郷の危機を、救う為にも、折れるわけには、いかねぇんだよッ。」

歯を食いしばった隊長が、闘いを続けるべく、起きようとした。

そんなフーマーを、

「だったら、辞退しろ!!」
「お前が試合に出たところで、どうにもなりそうにないのは、ハッキリしただろッ!?」
「妖怪の援軍がなければ、サガーミィーは神どもに蹂躙されちまうのが分かんねぇのか?!」
「お前の我儘で国が滅びてしまった場合、責任とれんのかよ!!?」
「その首ひとつじゃ軽すぎて、釣り合いが取れねぇぞ!」

紫蓮が叱り付けたのである。

このような状況に、

「珍しいですね。」
「あれ程までに怒りを露わにするのは。」

縁側で涼音すずねが少なからず驚いた。

「うむ。」
「……、紫蓮は地元を神々に破壊されているからな。」
「その時の事でも思い出したのではないか?」

そう述べたのは、撫子なでしこである。

「いずれにせよ、ああいうところも素敵ですわよねぇ~。」

なんだか〝ウットリ〟しているのはランソワだ。

これに、

「え?!」
「もしかして…、そういうこと・・・・・・なの??」

ペイニーが尋ねるも、

「はい?」
「どういう事でしょうか??」

いまいち意味を理解できなかったらしいランソワが首を傾げる。

「これは……。」

左手の中指と薬指で、丸眼鏡を〝スチャッ〟と正したルウェーが、

「女子会を開いて、“恋バナ”を行わねばなりませんね!!」

両の拳を握り締め、見えない炎を燃やした。

彼女にとって、そういったたぐいの話しで盛り上がるのは、叶えてみたかった夢の一つである。

さて…。

正座の姿勢となり、空を仰いだフーマー隊長が、〝ふぅ――〟と息を吐き、

「サガーミィー国の安寧を、貴殿に託す。」

観念したかのように、頼んだ。

これを受けた紫蓮は、

「ああ。」
「俺の命をして、必ず、な。」

固く誓ったのであった―。
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