GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第五章・魔の領域 ―

第204話 譲れぬ両者・前編

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[貴賓館]にて。

80畳の広間に、“使節団”が集まっていた。

無論、畳張りである。

北側にはナーガリーと配下らが、南側には[GOD SLAYER’S]が、座っていた。

なお、ナーガリー達と、紫蓮しれんたちは、向き合っている。

ちなみに、西側はふすまで、東側は庭となっていた。

正面の紫蓮に対して、

「貴方がたにお任せしてもよろしいでしょうか?」
「試合の件を。」

ナーガリーが伺う。

この提案に、

「なッ?!」
「お待ちください、お嬢様!」

ナーガリーの左斜め後ろに控えている“美形の男性”が、口を挟む。

年齢は20歳くらいだろう。

金色の髪はショートで、瞳は青い。

「彼らは雇われの身ですので、相応しくないかと…。」
「ここは、サガーミィーの正規兵である我々の中から、お選びください。」
「例えば、護衛隊の隊長であるわたくしめを。」
「そうでなければ、いろいろと示しがつきません。」

男の意見によって、

「そう、ですわよね……。」

ナーガリーが迷いだす。

そこに、

「勝てんのか??」
「お前ら程度が。」

紫蓮が割り込んだ。

「何!?」
「オレ達を愚弄するのか?!」
「冒険者め!!」

立腹した隊長ではあったものの、

「なんだ?」
「忘れてんのか??」
「この国へと渡航している際に、海や空の魔物どもが何度となく襲ってきたとき、お前たちが足手まといでしかなかった事を。」

紫蓮に指摘されて、

「ぐッ!」

言い返せず、黙ってしまったのである。

実際のところ、平和に慣れきっていた正規兵達は、百戦錬磨たる紫蓮らのお陰で、全滅せずに済んでいたのだ。

両の拳を握りしめ、

「しかし…。」

声を振り絞った男性が、

「それでも引けんのだ!!」
「祖国のためにッ!」

このように主張した。

誰もが静寂に包まれていくなか、

「……、では、試合の出場権を賭けて、あなたと、紫蓮とで、ひと勝負しては如何でしょうか?」

タリアノが提案する。

それを、

「俺は、別に、構わねぇけど。」

紫蓮が承諾し、

「いいだろう!!」
「打ち負かしてやる!」

隊長もまた同意したのであった…。


二人は、庭に移動している。

他の者たちは、縁側や広間から見物することになっていた。

金髪の男性は、ブラックの隊服に、ダークブランのロングブーツで、鉄剣、といった格好だ。

紫蓮の方は、紺青こんじょう色でスーツ仕立ての着物と、黒のショートブーツに、鉄刀、である。

「改めて名乗っておくとしよう。」
「オレは、“フーマー”だ。」

隊長に応じて、

「……、紫蓮。」

こちらも簡単ではあるが自己紹介を終えた。

「本気でいかせてもらうぞ!!」

睨み付けてきたフーマーに、自身の首を〝ゴキッ ゴキッ〟と鳴らした紫蓮が、

「こっちは、割と加減してやるよ。」

そう告げる。

これに〝カチン!〟ときたらしく、

「舐めやがってぇ~ッ。」
「必ず後悔させてやる!!」

隊長が怒りを露わにした。

険悪な雰囲気に耐えきれなくなったのか、縁側より、黒髪セミロングの女性が、

「あ、あの!?」
「そろそろ、いいでしょうか?」

二人に確認してきたのである。

なんでも、彼女は、“副隊長”との事だ。

「ああ…。」
「いつでも!」

フーマーが目を合わせずに頷いた流れで、

「それでは……、始めぇえ!!」

合図を送る副隊長だった―。
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