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― 第五章・魔の領域 ―
第202話 妖怪ノ国
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ナーガリーは、現在、紫蓮と同年齢の17歳である。
母親は40代後半で、長兄は24歳であり、次兄は20歳らしい。
そもそも、[妖怪ノ国]には長男が発つ予定であったが、ナーガリーが反対したとの事だ。
跡継ぎ候補第一位の長兄が、命を落としたり、人質にされてしまうかもしれないことを、危惧したのである。
〝ならば〟と次兄が使節団代表になろうとしたものの、もしも長男が戦や病で亡くなってしまった際には、彼に将来の国主となってもらわないと困るので、やはりナーガリーが止めたのだそうだ。
二人の兄に何かあった際には、ナーガリーが国主になるという手もあるのだが、〝私はその器ではありません〟と本人が断っているらしい。
こういった経緯で、別名[鬼ノ国]へは、ナーガリーが赴く事になった。
万が一のときには、宮廷魔術士の【瞬間移動】で、城に退却することを条件に……。
南東へと出航してから五日目の朝に、“大きな島国”が見えてきた。
その途中で、海や空のモンスター達に幾度も襲撃されたのである。
これによって、兵士の20人が絶命してしまった。
残りは30名となっている。
なお、[GOD SLAYER’S]に犠牲者はいない。
ちなみに、島から北東に5日ほど船で行った所に[東陸第四神国]が存在している。
奴らは、今頃、サガーミィー国へと進軍しているに違いなかろう。
とかく。
沖に停泊した“サガーミィーの大型船”から小舟が降ろされた。
一人が櫂を漕ぎ、もう一人は座っている。
どちらも男性みたいだ。
ある程度、港に近づいたところで、腰掛けていた男が立ちあがり、
「我々はサガーミィーの使節団である!!」
「鬼王陛下に交渉したい件があるので、入国を許可されたし!」
そのように大声で告げた。
木製の見張り台で様子を窺っていた者が、これに対して、
「暫し待たれよ!!」
と、返してきたのである。
背丈は165㎝くらいで、【戦士】の甲冑を纏っているが、人間ではなさそうだ。
何故ならば、“一つ目”だったからである。
この妖怪が、自身のブレスレットを用いて、誰かしらに連絡していく…。
数分後。
大型船に二人組が戻ってきた。
甲板で迎えたナーガリーに、
「鬼王殿が、お会いになってくださるそうです。」
「掛け合ってくれた者が〝波止場に案内役が出向いて来るので、取り敢えず船を着けられよ〟と申しておりました。」
男性の一人がそう伝えたら、
「おおー。」
「まずは第一段階を突破しましたな。」
「良かったですね、ナーガリー様。」
など、兵たちが、男女問わず喜びを表したのである。
「ええ、そうですわね。」
「門前払いされずに済んで、ひと安心です。」
微笑みながら頷いたナーガリーではあったが、
「ですが……。」
真顔となって、
「ここからが正念場ですわ。」
「気を引き締め直しましょう。」
兵士らに注意を促す。
その流れで、
「それでは、船長さん。」
「港へと進んでください。」
40代半ばと思しき“男性キャプテン”に、軽く会釈する令嬢だった―。
母親は40代後半で、長兄は24歳であり、次兄は20歳らしい。
そもそも、[妖怪ノ国]には長男が発つ予定であったが、ナーガリーが反対したとの事だ。
跡継ぎ候補第一位の長兄が、命を落としたり、人質にされてしまうかもしれないことを、危惧したのである。
〝ならば〟と次兄が使節団代表になろうとしたものの、もしも長男が戦や病で亡くなってしまった際には、彼に将来の国主となってもらわないと困るので、やはりナーガリーが止めたのだそうだ。
二人の兄に何かあった際には、ナーガリーが国主になるという手もあるのだが、〝私はその器ではありません〟と本人が断っているらしい。
こういった経緯で、別名[鬼ノ国]へは、ナーガリーが赴く事になった。
万が一のときには、宮廷魔術士の【瞬間移動】で、城に退却することを条件に……。
南東へと出航してから五日目の朝に、“大きな島国”が見えてきた。
その途中で、海や空のモンスター達に幾度も襲撃されたのである。
これによって、兵士の20人が絶命してしまった。
残りは30名となっている。
なお、[GOD SLAYER’S]に犠牲者はいない。
ちなみに、島から北東に5日ほど船で行った所に[東陸第四神国]が存在している。
奴らは、今頃、サガーミィー国へと進軍しているに違いなかろう。
とかく。
沖に停泊した“サガーミィーの大型船”から小舟が降ろされた。
一人が櫂を漕ぎ、もう一人は座っている。
どちらも男性みたいだ。
ある程度、港に近づいたところで、腰掛けていた男が立ちあがり、
「我々はサガーミィーの使節団である!!」
「鬼王陛下に交渉したい件があるので、入国を許可されたし!」
そのように大声で告げた。
木製の見張り台で様子を窺っていた者が、これに対して、
「暫し待たれよ!!」
と、返してきたのである。
背丈は165㎝くらいで、【戦士】の甲冑を纏っているが、人間ではなさそうだ。
何故ならば、“一つ目”だったからである。
この妖怪が、自身のブレスレットを用いて、誰かしらに連絡していく…。
数分後。
大型船に二人組が戻ってきた。
甲板で迎えたナーガリーに、
「鬼王殿が、お会いになってくださるそうです。」
「掛け合ってくれた者が〝波止場に案内役が出向いて来るので、取り敢えず船を着けられよ〟と申しておりました。」
男性の一人がそう伝えたら、
「おおー。」
「まずは第一段階を突破しましたな。」
「良かったですね、ナーガリー様。」
など、兵たちが、男女問わず喜びを表したのである。
「ええ、そうですわね。」
「門前払いされずに済んで、ひと安心です。」
微笑みながら頷いたナーガリーではあったが、
「ですが……。」
真顔となって、
「ここからが正念場ですわ。」
「気を引き締め直しましょう。」
兵士らに注意を促す。
その流れで、
「それでは、船長さん。」
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