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― 第五章・魔の領域 ―
第199話 仕儀・前編
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「少し長くなるが…、聞いてくれ。」
前置きした[サガーミィーの国主]が、
「知っている者もおるであろう。」
「今から二年ほど前に、この大陸における“神之国”の半数ぐらいが、魔族の領土を制圧すべく、東陸に乗り込んだのを。」
「しかし、返り討ちにあってしまい、結果は散々たるものであった。」
このように述べたところ、紫蓮が〝ピクッ〟と反応を示した。
そう。
幼馴染を失ったあの大戦の話しである。
「それ以来、“東の大陸”の三割を支配している神々は、徐々にではあるが衰退の一途を辿っておる。」
「一方、魔族も犠牲を支払ったので、膠着状態に陥ったそうだ。」
「だが、魔族は次第に軍事力を回復したらしい。」
「これらは、およそ三ヶ月前に、旅の商人や冒険者らがもたらしたものである。」
「それを知った俺は、ある懸念を抱いた。」
「〝東陸の神どもは、魔族に攻め込まれたとしても現状では勝てないので、先に領土拡大を図るのでは?〟〝ともすれば、南陸に乗り込んでくるかもしれん〟と……。」
「そこで、動向を探るべく、この国の忍者とアサシンの数十名を、あちらの“神の国々”へと送り込んだ。」
「その結果、予想が当たり、むこうの“第四神国”が、サガーミィーを狙って戦準備を整えているとの情報が入った。」
「更には、もうじき、あちらの港から船団が出発するらしい。」
「おそらく、あと10日程で、こちらに到着するであろう。」
「連中を迎え撃つべく、軍勢を集結させて、支度を急がせてはいるが…、我らの国は永らく平和だったので、敗北を喫する可能性が高い。」
「なので、〝どうすべきか〟と会議を開いたところ、一つの結論に至ったのである。」
「〝ここより南西に位置する島国に協力を要請すべし〟とな。」
一息ついた国主に、
「それは、もしや、“妖怪ノ国”ですか??」
【魔術士】のタリアノが尋ねたら、
「妖怪?」
「なんだそれ??」
【騎士】のグーランを筆頭に、西陸出身の面子が、首を傾げた。
ただし、スリアは無反応だったので、何かしら知っているのだろう。
「それなりに大きな島で生活している〝魔物に似た種族〟です。」
タリアノが簡略に説明したところ、
「あれって“御伽噺”じゃなかったのか?」
紫蓮が疑問を呈し、
「私も、そう思ってた。」
【剣士】のペイニーが続いたのである。
これらに対して、
「いや、忍の先輩で、数十年前に、その島国に渡ったことがある人が何名かいるから、本当に存在しているみたいだぞ。」
【くノ一】の撫子が伝え、
「私が子供の頃に、“妖怪ノ国”の出身で〝自身の成長を促すため、南の大陸を旅して回っている〟という方が訪れた事があります。」
「オーガのような印象でしたが、ご本人は“鬼”と名乗っていました。」
【巫女】の涼音が記憶を辿った。
「つまり、〝実在している〟ってことか。」
そう呟いたのは、【戦士】のフゥーリカンである。
[GOD SLAYER’S]のやり取りを黙って見ていた国主が、
「うむ。」
「かの国は、代々、“鬼の一族”が治めてきたそうだ。」
「そのため、“鬼ノ国”とも呼ばれておる。」
このように教えたのであった―。
前置きした[サガーミィーの国主]が、
「知っている者もおるであろう。」
「今から二年ほど前に、この大陸における“神之国”の半数ぐらいが、魔族の領土を制圧すべく、東陸に乗り込んだのを。」
「しかし、返り討ちにあってしまい、結果は散々たるものであった。」
このように述べたところ、紫蓮が〝ピクッ〟と反応を示した。
そう。
幼馴染を失ったあの大戦の話しである。
「それ以来、“東の大陸”の三割を支配している神々は、徐々にではあるが衰退の一途を辿っておる。」
「一方、魔族も犠牲を支払ったので、膠着状態に陥ったそうだ。」
「だが、魔族は次第に軍事力を回復したらしい。」
「これらは、およそ三ヶ月前に、旅の商人や冒険者らがもたらしたものである。」
「それを知った俺は、ある懸念を抱いた。」
「〝東陸の神どもは、魔族に攻め込まれたとしても現状では勝てないので、先に領土拡大を図るのでは?〟〝ともすれば、南陸に乗り込んでくるかもしれん〟と……。」
「そこで、動向を探るべく、この国の忍者とアサシンの数十名を、あちらの“神の国々”へと送り込んだ。」
「その結果、予想が当たり、むこうの“第四神国”が、サガーミィーを狙って戦準備を整えているとの情報が入った。」
「更には、もうじき、あちらの港から船団が出発するらしい。」
「おそらく、あと10日程で、こちらに到着するであろう。」
「連中を迎え撃つべく、軍勢を集結させて、支度を急がせてはいるが…、我らの国は永らく平和だったので、敗北を喫する可能性が高い。」
「なので、〝どうすべきか〟と会議を開いたところ、一つの結論に至ったのである。」
「〝ここより南西に位置する島国に協力を要請すべし〟とな。」
一息ついた国主に、
「それは、もしや、“妖怪ノ国”ですか??」
【魔術士】のタリアノが尋ねたら、
「妖怪?」
「なんだそれ??」
【騎士】のグーランを筆頭に、西陸出身の面子が、首を傾げた。
ただし、スリアは無反応だったので、何かしら知っているのだろう。
「それなりに大きな島で生活している〝魔物に似た種族〟です。」
タリアノが簡略に説明したところ、
「あれって“御伽噺”じゃなかったのか?」
紫蓮が疑問を呈し、
「私も、そう思ってた。」
【剣士】のペイニーが続いたのである。
これらに対して、
「いや、忍の先輩で、数十年前に、その島国に渡ったことがある人が何名かいるから、本当に存在しているみたいだぞ。」
【くノ一】の撫子が伝え、
「私が子供の頃に、“妖怪ノ国”の出身で〝自身の成長を促すため、南の大陸を旅して回っている〟という方が訪れた事があります。」
「オーガのような印象でしたが、ご本人は“鬼”と名乗っていました。」
【巫女】の涼音が記憶を辿った。
「つまり、〝実在している〟ってことか。」
そう呟いたのは、【戦士】のフゥーリカンである。
[GOD SLAYER’S]のやり取りを黙って見ていた国主が、
「うむ。」
「かの国は、代々、“鬼の一族”が治めてきたそうだ。」
「そのため、“鬼ノ国”とも呼ばれておる。」
このように教えたのであった―。
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