GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第五章・魔の領域 ―

第195話 サヨナラの代わりに。

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ラーザは、現在、23歳である。

もともと好奇心旺盛だった彼女には、城での生活は退屈なものでしかなく、昔から〝自由に冒険してみたい〟と思っていたらしい。

そんなラーザが、父である国主と違って、髪が赤く、褐色肌なのは、母の血を濃く引いているからのようだ。

本人は、気高く優しい母親のことが、とても好きだった。

憧れをも抱いていた母が、病に倒れ、帰らぬ人になったのは、五年前の事である。

当時18歳だったラーザは、母親の葬儀を終えたあとに、旅立つ決心を固めた。

子どもの頃からの念願でもあったし、母の死によって生じた心の穴を埋めたかったのかもしれない。

或いは、その両方だろう。

いずれにしろ、彼女は、父親と兄の反対を押し切って、城を飛び出したのである。

あれから五年が経ち、実家に戻ってきたラーザは、戸惑い悩んだ末に、次期国主になる道を選んだ。

[鮮紅せんこうの豹一団]を自身の“近衛衆”にするというのを、父に認めてもらって……。


幾つか在る“大広間”の一つに、[鮮紅の豹一団]と[ゴッド・スレイヤーズ]は移動していた。

全員が起立して、葡萄酒が入った“銀のグラス”を手に持っている。

「最初の一杯は、亡くなった愛しき者たちの冥福を祈って。」

ラーザのリードで、誰もが酒を口に運び、空いたグラスに改めてワインをそそぐ。

「二杯目は、かつて一緒に旅した友らとの再会を祝して。」

「…………。」

「三杯目は、その紫蓮しれん達の仲間との交流を喜んで。」

3回にわたって酒を飲み、

「それじゃあ、皆、座ってくれ。」
「食事にしよう!」

明るく促す“将来の国主”だった…。


翌朝――。

二日酔いの者たちもいるなかで、彼女らは、神どもとのいくさで命を落としたメンバーを、霊園に埋葬した。

墓石は発注している段階なので、まだ、ない。

今回は、“八百万教”の涼音すずねと、“光聖教”のルウェーに、タリアノのサーヴァントで“百獣教”のホルスタウロスが、順番で祈りを捧げ、全員が黙祷もくとうしたのである。


城での昼食中に、

「紫蓮達は、これから、どうするの??」

“兎の半獣”たるラットが尋ねた。

「あー、……。」

少し考えた紫蓮が、

「スリア、予定は?」

【機工士】に視線を送る。

「“サガーミィー国”に赴きたい。」

スリアが答えたところ、

「それでは、私の故郷に寄っても構わないか??」
みなのことを紹介したいしな。」

撫子なでしこが窺った。

「まぁ、問題ないだろう。」

こう返したスリアに続き、

「じゃあ、そうしよう。」

紫蓮が話しを纏めたのである…。


ラーザの要請によって、城に駐屯している50代前半ぐらいで男性の【魔術士】が、[瞬間転移]で都の南門付近に“テレポート”してくれた。

「お別れする前に……、紫蓮。」
「これだけは言っておこう。」
「…、その無精髭ぶしょうひげは、あまり似合ってないから、剃ったがいいぞ。」

ラーザに告げられ、

「そうか?」

紫蓮が軽く首を傾げる。

ほぼ同時に、彼の後ろでは[GOD SLAYER’S]の誰もが〝うん うん〟と揃って頷き、ラーザの意見に賛成していた。

そんな反応の違いに、次期国主と近衛衆このえしゅうが〝ドッ!!〟と笑う。

紫蓮は、何が起きたか分からず、不思議がっている。

「ま、あれだ……。」
「いろいろと、ありがとよ。」

弥太郎やたろうが感謝を述べ、

「達者でな。」

秀嗣ひでつぐが目を細めた。

「いつでも遊びに来てくれたまえよ。」

穏やかな表情のラーザに、

「ああ。」
「またな。」

紫蓮が微笑む。

「それじゃ、これで。」

去りゆく紫蓮らに、

「バイバーイ!」
「元気でねぇ~☆」

ラットが声を掛ける。

これによって、全ての者が、手を振り合ったのであった―。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ランソワのサーヴァント達

メスのホワイトドラゴン白竜
5Mだった全長が10Mに
人型への変化へんげが可能に
その際は、背丈が2Mのドラゴニュート
ジョブは【武闘家】
素手で戦う
スキルは[風撃][雷撃][氷撃][地撃]

メスのアルラウネ
ほぼ変わりなし
下半身の花も含めて160㎝だった背丈が165㎝に
ジョブは【剣士】
武器は“レイピア”で、小型のカイト・シールドアーモンド形の盾も装備

メスのパピヨン大きな蝶々
1.5Mの全長は2Mに
人型への変化へんげが可能に
その際の背丈は160㎝くらいとなり、髪は、腰あたりまでの長さで、色はコバルトブルー
また、頭の触角と、背中の羽は、蝶そのもの
顔立ちはキレカワ系
ちなみに、羽は、群青色を基調として、黒色の模様がある
ジョブは【クレリック】
武器は“鎖のムチ
魔法は[水撃][回復系][補助系]

オスのユニコーン
大きさは通常の馬より倍のまま
人型への変化へんげが可能に
その際の背丈は190㎝ぐらいとなり、見た目は二足歩行のユニコーン
ジョブは【戦士】
武器は“両刃のバトルアックス戦斧
スキルは[雷撃]

オスのサテュロス
変わりなし
二足歩行の白山羊しろやぎ
背丈は180㎝のまま
ジョブは【騎士】
武器は“ツーハンドソード両手剣
スキルは[地撃]
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