GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
188 / 303
― 第五章・魔の領域 ―

第188話 悲愴・後編

しおりを挟む
後方を確認して、

「なんてこった……。」

眉間にシワを寄せた【武士】の弥太郎やたろうに近づいた“一柱の男神”が[ラージソード]を振り上げる。

それに気づいた【騎士】のバウンが、

「危ない!!」

弥太郎へと〝ドス ドス〟走っていく。

「むッ?!」

体勢を整え直そうとする【武士】を、神が大剣で斬り付けてくる。

急ぎ、[刀]を横にして、

ガギィン!

ラージソードを受けた弥太郎ではあったが、バランスが悪かったようで、膝を地に着いてしまった。

ここを狙って、神がラージソードで突こうとしてくる。

躱せそうにない【武士】は、死を覚悟した。

しかし、ギリギリで割って入ったバウンが、

ガツンッ!!

盾で護ってくれたのである。

〝ほっ〟とした二人ではあったが、いつの間にか左側に詰めてきていた別の男神が繰り出した[槍]によて、

ズブシュ!

【騎士】が、首を貫かれた。

神が槍を抜いたところで、バウンが右へと倒れていく。

眼前の出来事に呆然とする弥太郎に、正面の神が大剣を払おうとする。

そこへ、15㎝大の[氷のつぶて]が50個ほど飛んでいき、男神の上半身にヒットした。

これはイザッドによる魔法だが、敵は甲冑に守られ傷を負ってはいない。

それでも、動きを止めることには成功したようだ。

「バウン?」
「おい……。」
「バウン!?」

親友の落命に戸惑う【武士】に、左横の神が[長槍]を叩きつけようとしてくる。

その右腹部に〝ズバン!!〟と、長さ3M×最大直径30㎝で先端の尖った[水の杭]が当たった。

どうやら、【武闘家】のラットが、右足を蹴り上げて発射したスキルらしい。

これによって、男神がグラつく。

「弥太郎!」
「今のうちに立って!!」

“兎の半獣”が後ろから呼び掛けるも、

「バウン。」
「…嘘だろ??」
「なぁ、おいって!」
「バウン!!」

本人の耳には届いていないみたいだ。

そんな弥太郎を、男神が[ラージソード]で刺そうと構える。

この胸元に、“魔法使いの老人”が最小幅5㎝×最大幅25㎝×長さ2.5Mの[風の渦]を放つ。

それ・・が直撃して、2~3歩ほど退がった神が、

「さっきから邪魔ばかりしおって。」
「人間のジジィめが……。」

宙に浮きつつ、

「まずは、お前から始末してくれようぞ!」

怒りを露わにし、イザッドへと向かう。

一方、別の男神は、槍を下から振るって、【武士】を攻撃しようとしていた。

“魔法使い“と“武士”の間に位置するラットは、

「あ、え?」
「ちょっと…。」

どっちの救援に行くべきか、判断に迷っている。

[長槍]が弥太郎に迫るなか、この神へと、最大幅25㎝×長さ2.5Mで三日月状の【火炎の刃】が発射された。

ラーザが、戦士用の大剣にて、[武器伝導]を扱ったみたいだ。

彼女や、【忍者】の秀嗣ひでつぐなどは、群がってきていた30人程の敵兵を殲滅し、ようやく自由になったらしい。

ともあれ、“赤髪の女戦士”によるスキルを、上体にくらった男神が、〝ボゥッ!!〟と燃える。

「しっかりするんだ!」
「弥太郎!!」

右側からラーザに一喝された【武士】が、〝ハッ!〟と我に返った。

そこへ、

「ぐおッ!!」

との“老体の魔法使い”の声が聞こえてきたのである。

“赤髪の戦士”らが視線を送ったところ、右斜め上から斬られたイザッドが、うつ伏せに倒れていってた。

「爺さ」と言いかけたラーザは、仲間の半数ぐらいが亡くなっている事を初めて知り、絶句したのである。

つるぎの神”が反転し、“槍の神”を包んでいた炎が消えるなか、立ち上がった弥太郎が、

「ラットに、秀嗣。」
「ラーザを連れて逃げろ。」

副団長として指示を出す。

「な?!」
「冗談じゃないぞ、弥太郎!」

抗議しようとするラーザに、

「いいから、この場は俺に従え!!」
「……、悔しいが、俺達じゃアイツらには勝てねぇ。」
「ここで全員くたばっちまう可能性が高い。」
「ラーザ…、団長のお前が生き長らえさえすれば、何度でもやり直せるだろ。」

このように述べる弥太郎の近くに、パーティーメンバーが集まって来る。

“二柱の神”は、隙を窺っていた。

「新しい“鮮紅せんこうの豹一団”を、あっち・・・で楽しみにしているぞ。」

〝フ〟と笑みを零した【武士】が、【武闘家】と【忍者】に、

「頼んぞ。」

そう伝える流れで、

「残りは俺と共に戦え!」
「命を懸けるぞ!!」

周囲に告げたのである。

ラット&秀嗣に両脇を挟まれて、連れて行かれようとする団長が、

「離してくれ!」
「皆を置き去りにするわけにはいかない!!」
「“あの世”とやらが存在しているのならば、ボクも一緒に旅立つ!」

子供みたいに駄々を捏ねた。

この間にクール(リキャスト)タイムを終えた神どもが、改めて直径3Mの魔法陣を構築していく。

“スキル”や“魔法”を使い果たしている[鮮紅の豹一団]は、まだクールタイムが済んでいない。

味方が全滅しかねない状況で、“兎の半獣”と“忍者”に引きずられるかのようになっているラーザの、

「嫌だ!!」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
「ボクが戦っちゃいけないんだったら、皆も退避しろぉおッ!!」

といった悲痛な叫びが響き渡ったのである―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...