182 / 294
― 第四章・西陸行路 ―
第182話 仕熟す
しおりを挟む
翌日の午後二時を過ぎた頃である。
[ミーノン軍]が王城を取り囲んだところ、全ての門が内側から開かれた。
その流れで、[武術マスター]のもとに使者が訪れたようだ…。
30代半ばくらいの男性が、
「城には、もはや、神は一柱もおりません。」
「神次様の判断にて、我々は無条件で降伏いたします。」
このように伝えたのである。
「ふむ。」
「……、“護衛隊”のみを連れてゆく故、それ以外は待機しておれ。」
馬上で周囲に指示した利通が、
「安内せよ!」
使いの者を促した。
庭には、甲冑姿の兵士たちが整列している。
戦う意志はなさそうだ。
そこを通過して、城内に入ったところ、50人ほどの[ビショップ]がエントランスに佇んでいた。
「ミーノンの国主である。」
武術マスターが告げたら、
「この国の神次にございます。」
50代前半ぐらいの女性が跪き、他のビショップらも倣ったのである。
「西の大通りで、神どもとの市街戦となり、建物などが、一部、破損したゆえ、早急に修復いたせ。」
「当然、無償での。」
「それと…、“ヒッダー国”の復活を全土に報せよ。」
こう述べた利通に、
「は。」
「あ、いえ……。」
「私どもは、神の庇護を受け、贅沢な暮らしを送ってまいりました。」
「そのため、虐げられてきた国中の人々から憎しみの対象となっております。」
「なので、国主様に王城を明け渡した後に、野に下るつもりでいたのですが…。」
神次が返す。
「……、行く当てはあるのか?」
武術マスターが訊ねたところ、
「いいえ。」
「城を出てから、皆で話し合う予定です。」
神次が気落ちしたかのように俯いた。
「ならば、生まれ変わるヒッダーの為に尽力し、信頼回復に努めよ。」
「そなたらが、これまでどおり都で生活することを許す。」
「ま、地位は剝奪させてもらうがのッ。」
優しげな目をする利通に、
「お、あ…、ありがとうございます。」
心より感謝した神次に司教らが、深々と頭を下げる……。
とりあえずは、武術マスターや、その息子(次男)に、此度の最高幹部らと、五千程のミーノン兵達が、王城を使う運びとなった。
利通などの数名は、神次たちの先導にて、[宝物庫]に訪れている。
「よくも、また、集めおったのぉー。」
山積みとなっている金銀財宝に呆れた武術マスターではあったが、
「しかし、まぁ、これらを投資に回せば、国民は必ずや豊かになるじゃろう。」
前向きに検討していくみたいだ。
とにもかくにも、
「詳細な分配は会議で決めていくとして…、まずは、戦の恩賞を与えていくとするかの。」
「功労第一位は、間違いなく、“ゴッド・スレイヤーズ”であろうぞ。」
どこか嬉しそうに笑みを浮かべる利通だった―。
[ミーノン軍]が王城を取り囲んだところ、全ての門が内側から開かれた。
その流れで、[武術マスター]のもとに使者が訪れたようだ…。
30代半ばくらいの男性が、
「城には、もはや、神は一柱もおりません。」
「神次様の判断にて、我々は無条件で降伏いたします。」
このように伝えたのである。
「ふむ。」
「……、“護衛隊”のみを連れてゆく故、それ以外は待機しておれ。」
馬上で周囲に指示した利通が、
「安内せよ!」
使いの者を促した。
庭には、甲冑姿の兵士たちが整列している。
戦う意志はなさそうだ。
そこを通過して、城内に入ったところ、50人ほどの[ビショップ]がエントランスに佇んでいた。
「ミーノンの国主である。」
武術マスターが告げたら、
「この国の神次にございます。」
50代前半ぐらいの女性が跪き、他のビショップらも倣ったのである。
「西の大通りで、神どもとの市街戦となり、建物などが、一部、破損したゆえ、早急に修復いたせ。」
「当然、無償での。」
「それと…、“ヒッダー国”の復活を全土に報せよ。」
こう述べた利通に、
「は。」
「あ、いえ……。」
「私どもは、神の庇護を受け、贅沢な暮らしを送ってまいりました。」
「そのため、虐げられてきた国中の人々から憎しみの対象となっております。」
「なので、国主様に王城を明け渡した後に、野に下るつもりでいたのですが…。」
神次が返す。
「……、行く当てはあるのか?」
武術マスターが訊ねたところ、
「いいえ。」
「城を出てから、皆で話し合う予定です。」
神次が気落ちしたかのように俯いた。
「ならば、生まれ変わるヒッダーの為に尽力し、信頼回復に努めよ。」
「そなたらが、これまでどおり都で生活することを許す。」
「ま、地位は剝奪させてもらうがのッ。」
優しげな目をする利通に、
「お、あ…、ありがとうございます。」
心より感謝した神次に司教らが、深々と頭を下げる……。
とりあえずは、武術マスターや、その息子(次男)に、此度の最高幹部らと、五千程のミーノン兵達が、王城を使う運びとなった。
利通などの数名は、神次たちの先導にて、[宝物庫]に訪れている。
「よくも、また、集めおったのぉー。」
山積みとなっている金銀財宝に呆れた武術マスターではあったが、
「しかし、まぁ、これらを投資に回せば、国民は必ずや豊かになるじゃろう。」
前向きに検討していくみたいだ。
とにもかくにも、
「詳細な分配は会議で決めていくとして…、まずは、戦の恩賞を与えていくとするかの。」
「功労第一位は、間違いなく、“ゴッド・スレイヤーズ”であろうぞ。」
どこか嬉しそうに笑みを浮かべる利通だった―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる