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― 第四章・西陸行路 ―
第174話 切望
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それは“虫の知らせ”だったのかもしれない。
[武術マスター]が、なんとなく天を見上げた。
次の瞬間、何かに気づき、
「結界を張れぇいッ!!」
大声を出したのである。
利通の右斜め後ろに控えている【神官】が反応を示したところに、
ドォウッ!!!!
かなり上空から直径4Mの白い【光線】が降ってきた。
この流れで〝スゥ――〟と下りて来る神が、
「!!」
地上7~8Mの位置で止まる。
【結界】に守られて、武術マスターたちが無傷だったのを知ったからだ。
利通と暫し睨み合った後に、神が自陣へと飛んでいく。
「諦めおったか…。」
去りゆく神を眺めて呟く武術マスターだった。
後方を振り向いていた[GOD SLAYER‘S]は、その神を視界に捉えた。
『撃ち落とすか?!』
[ブレスレット]の機能を使って確認してきたグーランに、
「いや、あれは“上級”みたいだから、やめておこう。」
紫蓮が冷静に返す。
『そのほうが良いでしょうね。』
『どうやら不意打ちは失敗に終わったようなので、我々が無理する必要もありませんし。』
同意したのはタリアノだ。
紫蓮が全員に方針を伝える間に、彼らの頭上を神が通過していく。
コイツの背丈は4Mといったところだろう。
やはり[騎士の甲冑]を纏っていて、一対(計二枚)の翼を有している。
紫蓮が述べたように “上級の神”であった。
その者が自軍へと戻って行きつつ、何やら合図を送る。
これによって、あちら側から“退却”を告げるラッパが一斉に鳴り響いた。
大半の敵兵が逃げ出すなか、武器を捨て、降伏の意を示す人々も割といるようだ。
[ミーノン軍]が少なからず戸惑っていたら、味方の“伝令係”が至る所で、
「〝深追いはするな〟〝無抵抗の者を捕らえよ〟〝ただし粗雑には扱うぬように〟との、国主殿の御命令です!」
そう報せたのである……。
敵軍は、300万数ほどが亡くなっている。
こちらの犠牲は150万といったところだ。
そのような戦を経て、日が傾くなか、200万ぐらいの捕虜が正座していた。
「そなたらは、何故、捕らえられることを選んだ?」
利通が訊ねたら、
「某が、お答えしましょう。」
眼前の男が口を開いたのである。
年齢は40代前半であろう。
髪も髭も黒い。
装備している鎧からして【武士】のようだ。
おそらく、指揮官の一人に違いない。
この男性が、事の次第を語ってゆく…。
まず、“神の国々”は税金が高すぎる。
国によっては、そのうえで食料も献上させられているらしい。
だというのに生活者への保障は皆無に等しく、厳しい取り立てによって死んでしまう人もいるそうだ。
支配している王や女王などによって差異はあるものの、どこも似たような感じで、裕福なのは一部の特権階級のみである。
それらを踏まえて、 [西陸第八神国]は〝なかなかに酷い有り様〟なのだそうだ。
「我らは、もう、虐げられたくないのです。」
「かような日々に、誰もが限界を迎え、生きる望みを失っております。」
「そこで、武術マスターと名高い貴方様に“国盗り”を成し遂げていただきたく、信用できる者だけで前もって話しを付けておいたのです。」
「〝神が負けた場合は投降して、お願い致そう〟と……。」
「どうか、我々に、お力添えの程を!!」
男が頭を下げ、他の人間やサーヴァント達が倣う。
「もとより、そのつもりじゃ。」
頷いて、息を吸った[武術マスター]が、
「儂は“ヒッダー国”を復活させる!」
「気概がある者らは、共に戦え――ぃッ!!」
このように告げた。
利通の宣言を受けた捕虜たちが〝おおッ!〟と喜びに震える。
その近くで、目頭を熱くする“ランダ―”だった―。
[武術マスター]が、なんとなく天を見上げた。
次の瞬間、何かに気づき、
「結界を張れぇいッ!!」
大声を出したのである。
利通の右斜め後ろに控えている【神官】が反応を示したところに、
ドォウッ!!!!
かなり上空から直径4Mの白い【光線】が降ってきた。
この流れで〝スゥ――〟と下りて来る神が、
「!!」
地上7~8Mの位置で止まる。
【結界】に守られて、武術マスターたちが無傷だったのを知ったからだ。
利通と暫し睨み合った後に、神が自陣へと飛んでいく。
「諦めおったか…。」
去りゆく神を眺めて呟く武術マスターだった。
後方を振り向いていた[GOD SLAYER‘S]は、その神を視界に捉えた。
『撃ち落とすか?!』
[ブレスレット]の機能を使って確認してきたグーランに、
「いや、あれは“上級”みたいだから、やめておこう。」
紫蓮が冷静に返す。
『そのほうが良いでしょうね。』
『どうやら不意打ちは失敗に終わったようなので、我々が無理する必要もありませんし。』
同意したのはタリアノだ。
紫蓮が全員に方針を伝える間に、彼らの頭上を神が通過していく。
コイツの背丈は4Mといったところだろう。
やはり[騎士の甲冑]を纏っていて、一対(計二枚)の翼を有している。
紫蓮が述べたように “上級の神”であった。
その者が自軍へと戻って行きつつ、何やら合図を送る。
これによって、あちら側から“退却”を告げるラッパが一斉に鳴り響いた。
大半の敵兵が逃げ出すなか、武器を捨て、降伏の意を示す人々も割といるようだ。
[ミーノン軍]が少なからず戸惑っていたら、味方の“伝令係”が至る所で、
「〝深追いはするな〟〝無抵抗の者を捕らえよ〟〝ただし粗雑には扱うぬように〟との、国主殿の御命令です!」
そう報せたのである……。
敵軍は、300万数ほどが亡くなっている。
こちらの犠牲は150万といったところだ。
そのような戦を経て、日が傾くなか、200万ぐらいの捕虜が正座していた。
「そなたらは、何故、捕らえられることを選んだ?」
利通が訊ねたら、
「某が、お答えしましょう。」
眼前の男が口を開いたのである。
年齢は40代前半であろう。
髪も髭も黒い。
装備している鎧からして【武士】のようだ。
おそらく、指揮官の一人に違いない。
この男性が、事の次第を語ってゆく…。
まず、“神の国々”は税金が高すぎる。
国によっては、そのうえで食料も献上させられているらしい。
だというのに生活者への保障は皆無に等しく、厳しい取り立てによって死んでしまう人もいるそうだ。
支配している王や女王などによって差異はあるものの、どこも似たような感じで、裕福なのは一部の特権階級のみである。
それらを踏まえて、 [西陸第八神国]は〝なかなかに酷い有り様〟なのだそうだ。
「我らは、もう、虐げられたくないのです。」
「かような日々に、誰もが限界を迎え、生きる望みを失っております。」
「そこで、武術マスターと名高い貴方様に“国盗り”を成し遂げていただきたく、信用できる者だけで前もって話しを付けておいたのです。」
「〝神が負けた場合は投降して、お願い致そう〟と……。」
「どうか、我々に、お力添えの程を!!」
男が頭を下げ、他の人間やサーヴァント達が倣う。
「もとより、そのつもりじゃ。」
頷いて、息を吸った[武術マスター]が、
「儂は“ヒッダー国”を復活させる!」
「気概がある者らは、共に戦え――ぃッ!!」
このように告げた。
利通の宣言を受けた捕虜たちが〝おおッ!〟と喜びに震える。
その近くで、目頭を熱くする“ランダ―”だった―。
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