174 / 303
― 第四章・西陸行路 ―
第174話 切望
しおりを挟む
それは“虫の知らせ”だったのかもしれない。
[武術マスター]が、なんとなく天を見上げた。
次の瞬間、何かに気づき、
「結界を張れぇいッ!!」
大声を出したのである。
利通の右斜め後ろに控えている【神官】が反応を示したところに、
ドォウッ!!!!
かなり上空から直径4Mの白い【光線】が降ってきた。
この流れで〝スゥ――〟と下りて来る神が、
「!!」
地上7~8Mの位置で止まる。
【結界】に守られて、武術マスターたちが無傷だったのを知ったからだ。
利通と暫し睨み合った後に、神が自陣へと飛んでいく。
「諦めおったか…。」
去りゆく神を眺めて呟く武術マスターだった。
後方を振り向いていた[GOD SLAYER‘S]は、その神を視界に捉えた。
『撃ち落とすか?!』
[ブレスレット]の機能を使って確認してきたグーランに、
「いや、あれは“上級”みたいだから、やめておこう。」
紫蓮が冷静に返す。
『そのほうが良いでしょうね。』
『どうやら不意打ちは失敗に終わったようなので、我々が無理する必要もありませんし。』
同意したのはタリアノだ。
紫蓮が全員に方針を伝える間に、彼らの頭上を神が通過していく。
コイツの背丈は4Mといったところだろう。
やはり[騎士の甲冑]を纏っていて、一対(計二枚)の翼を有している。
紫蓮が述べたように “上級の神”であった。
その者が自軍へと戻って行きつつ、何やら合図を送る。
これによって、あちら側から“退却”を告げるラッパが一斉に鳴り響いた。
大半の敵兵が逃げ出すなか、武器を捨て、降伏の意を示す人々も割といるようだ。
[ミーノン軍]が少なからず戸惑っていたら、味方の“伝令係”が至る所で、
「〝深追いはするな〟〝無抵抗の者を捕らえよ〟〝ただし粗雑には扱うぬように〟との、国主殿の御命令です!」
そう報せたのである……。
敵軍は、300万数ほどが亡くなっている。
こちらの犠牲は150万といったところだ。
そのような戦を経て、日が傾くなか、200万ぐらいの捕虜が正座していた。
「そなたらは、何故、捕らえられることを選んだ?」
利通が訊ねたら、
「某が、お答えしましょう。」
眼前の男が口を開いたのである。
年齢は40代前半であろう。
髪も髭も黒い。
装備している鎧からして【武士】のようだ。
おそらく、指揮官の一人に違いない。
この男性が、事の次第を語ってゆく…。
まず、“神の国々”は税金が高すぎる。
国によっては、そのうえで食料も献上させられているらしい。
だというのに生活者への保障は皆無に等しく、厳しい取り立てによって死んでしまう人もいるそうだ。
支配している王や女王などによって差異はあるものの、どこも似たような感じで、裕福なのは一部の特権階級のみである。
それらを踏まえて、 [西陸第八神国]は〝なかなかに酷い有り様〟なのだそうだ。
「我らは、もう、虐げられたくないのです。」
「かような日々に、誰もが限界を迎え、生きる望みを失っております。」
「そこで、武術マスターと名高い貴方様に“国盗り”を成し遂げていただきたく、信用できる者だけで前もって話しを付けておいたのです。」
「〝神が負けた場合は投降して、お願い致そう〟と……。」
「どうか、我々に、お力添えの程を!!」
男が頭を下げ、他の人間やサーヴァント達が倣う。
「もとより、そのつもりじゃ。」
頷いて、息を吸った[武術マスター]が、
「儂は“ヒッダー国”を復活させる!」
「気概がある者らは、共に戦え――ぃッ!!」
このように告げた。
利通の宣言を受けた捕虜たちが〝おおッ!〟と喜びに震える。
その近くで、目頭を熱くする“ランダ―”だった―。
[武術マスター]が、なんとなく天を見上げた。
次の瞬間、何かに気づき、
「結界を張れぇいッ!!」
大声を出したのである。
利通の右斜め後ろに控えている【神官】が反応を示したところに、
ドォウッ!!!!
かなり上空から直径4Mの白い【光線】が降ってきた。
この流れで〝スゥ――〟と下りて来る神が、
「!!」
地上7~8Mの位置で止まる。
【結界】に守られて、武術マスターたちが無傷だったのを知ったからだ。
利通と暫し睨み合った後に、神が自陣へと飛んでいく。
「諦めおったか…。」
去りゆく神を眺めて呟く武術マスターだった。
後方を振り向いていた[GOD SLAYER‘S]は、その神を視界に捉えた。
『撃ち落とすか?!』
[ブレスレット]の機能を使って確認してきたグーランに、
「いや、あれは“上級”みたいだから、やめておこう。」
紫蓮が冷静に返す。
『そのほうが良いでしょうね。』
『どうやら不意打ちは失敗に終わったようなので、我々が無理する必要もありませんし。』
同意したのはタリアノだ。
紫蓮が全員に方針を伝える間に、彼らの頭上を神が通過していく。
コイツの背丈は4Mといったところだろう。
やはり[騎士の甲冑]を纏っていて、一対(計二枚)の翼を有している。
紫蓮が述べたように “上級の神”であった。
その者が自軍へと戻って行きつつ、何やら合図を送る。
これによって、あちら側から“退却”を告げるラッパが一斉に鳴り響いた。
大半の敵兵が逃げ出すなか、武器を捨て、降伏の意を示す人々も割といるようだ。
[ミーノン軍]が少なからず戸惑っていたら、味方の“伝令係”が至る所で、
「〝深追いはするな〟〝無抵抗の者を捕らえよ〟〝ただし粗雑には扱うぬように〟との、国主殿の御命令です!」
そう報せたのである……。
敵軍は、300万数ほどが亡くなっている。
こちらの犠牲は150万といったところだ。
そのような戦を経て、日が傾くなか、200万ぐらいの捕虜が正座していた。
「そなたらは、何故、捕らえられることを選んだ?」
利通が訊ねたら、
「某が、お答えしましょう。」
眼前の男が口を開いたのである。
年齢は40代前半であろう。
髪も髭も黒い。
装備している鎧からして【武士】のようだ。
おそらく、指揮官の一人に違いない。
この男性が、事の次第を語ってゆく…。
まず、“神の国々”は税金が高すぎる。
国によっては、そのうえで食料も献上させられているらしい。
だというのに生活者への保障は皆無に等しく、厳しい取り立てによって死んでしまう人もいるそうだ。
支配している王や女王などによって差異はあるものの、どこも似たような感じで、裕福なのは一部の特権階級のみである。
それらを踏まえて、 [西陸第八神国]は〝なかなかに酷い有り様〟なのだそうだ。
「我らは、もう、虐げられたくないのです。」
「かような日々に、誰もが限界を迎え、生きる望みを失っております。」
「そこで、武術マスターと名高い貴方様に“国盗り”を成し遂げていただきたく、信用できる者だけで前もって話しを付けておいたのです。」
「〝神が負けた場合は投降して、お願い致そう〟と……。」
「どうか、我々に、お力添えの程を!!」
男が頭を下げ、他の人間やサーヴァント達が倣う。
「もとより、そのつもりじゃ。」
頷いて、息を吸った[武術マスター]が、
「儂は“ヒッダー国”を復活させる!」
「気概がある者らは、共に戦え――ぃッ!!」
このように告げた。
利通の宣言を受けた捕虜たちが〝おおッ!〟と喜びに震える。
その近くで、目頭を熱くする“ランダ―”だった―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる