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― 第四章・西陸行路 ―
第152話 温かな雪路・後編
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「今回は、男性と、女性に、分かれようぜ!」
「そっちの方が一人多いから、ハ、ン、デ、ってやつだ!!」
意気込んだのはグーランである。
「ふッ。」
「良いのか? グーラン。」
「ただでさえ負けっぱなしのくせに、強がりおって。」
「再び、やけ酒をあおっても、知らんぞ!」
受けて立つのは、当然、撫子だ。
〝はぁー〟と溜息を吐いたタリアノが、
「また、やるのですか。」
左の掌で、自身の額を押さえながら、困り顔になった。
いずれにしろ、[第三次スノーウォーズ]は、否が応でも開催されるのだ……。
ここ暫く晴天が続いたので、積雪量は減っていた。
現在は、〝脛の中間あたり〟の深さだ。
そんな状態で、男性班と女性班に分かれた両チームが、駆け回りながら“雪玉”を投げ合っている。
普段は割とクールな紫蓮も、このバトルには熱く燃えていた。
〝ただ単に負けず嫌いなだけ〟というのもあるだろうが…。
やがて、均衡が崩れ、タリアノ/涼音/ランソワ/フゥーリカンが脱落していく。
数十秒後には、グーランとペイニーもアウトになったようだ。
意外に粘っていたルウェーも、顔面にヒットさせられてしまい、
「ぁがッ?!」
仰向けで倒れた。
残りは、撫子&ペイニーと、紫蓮である。
外野が大いに盛り上がるなか、紫蓮は一人で奮戦していたものの、二人に翻弄されて、敗れてしまった。
撫子が、腰に両拳を当て、上半身を反らし、
「ふ、はーッはッはッは――ッ!!」
「どうだ!? グーランよ!」
「いい加減、身の程を知ったであろう!!」
かなり愉快そうにする。
「ぐぬぅ~ッ。」
苦虫を噛み潰したような顔になったグーランが、
「まだまだこれからだッ!!」
「次は勝ぁーつ!」
こう宣言した。
その近くで、
「今日は、もう、勘弁してください。」
嫌がったのはタリアノだ。
「私も充分です。」
こっちは涼音である。
寝転がったまま空を眺め微動だにしないルウェーを、
「大丈夫ですか??」
心配したランソワが覗き込もうとした。
それよりも早く、上半身を〝ガバァッ!!〟と起こしたルウェーが、
「私、こんなに楽しかったの、初めてかもしれません!」
満面の笑みを浮かべる。
この様子に、誰もが〝ニッコリ〟していた……。
翌日、雲行きが怪しくなりだした。
三日後には大雪に見舞われてしまったのである。
そういう時は、視界が悪くなり、方角を誤りかねないので、テント(ゲル)を張って、行進しない決まりになっていた。
ちなみに、テント周辺の雪は、火炎系のスキルや魔法で定期的に溶かしている。
PM13:00過ぎ。
男性陣とサーヴァント達は、各自の部屋で、素振りや、筋トレに、読書であったり、昼寝していた。
女性陣は、一階の[休憩室]で、ホットの紅茶/珈琲/緑茶を飲みつつ、談笑している。
あれ以来、自分から積極的に話し掛けるようになったルウェーは、すっかり皆と打ち解けられたようだ。
冒険を始めた頃に不安げだった本人の表情は、今や明るい。
雪の影響で、[ミーノンの首都]に到着するのに、およそ二ヵ月が掛かった。
それがなければ、一ヶ月ほどで済む道程だ。
なお、この期間中に[第四次スノーウォーズ]が実施されたのは、言うまでもない。
何はともあれ。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、都の中央広場まで訪れている。
ここの北西に、石垣と木材に瓦屋根で造られた城が存在していた―。
「そっちの方が一人多いから、ハ、ン、デ、ってやつだ!!」
意気込んだのはグーランである。
「ふッ。」
「良いのか? グーラン。」
「ただでさえ負けっぱなしのくせに、強がりおって。」
「再び、やけ酒をあおっても、知らんぞ!」
受けて立つのは、当然、撫子だ。
〝はぁー〟と溜息を吐いたタリアノが、
「また、やるのですか。」
左の掌で、自身の額を押さえながら、困り顔になった。
いずれにしろ、[第三次スノーウォーズ]は、否が応でも開催されるのだ……。
ここ暫く晴天が続いたので、積雪量は減っていた。
現在は、〝脛の中間あたり〟の深さだ。
そんな状態で、男性班と女性班に分かれた両チームが、駆け回りながら“雪玉”を投げ合っている。
普段は割とクールな紫蓮も、このバトルには熱く燃えていた。
〝ただ単に負けず嫌いなだけ〟というのもあるだろうが…。
やがて、均衡が崩れ、タリアノ/涼音/ランソワ/フゥーリカンが脱落していく。
数十秒後には、グーランとペイニーもアウトになったようだ。
意外に粘っていたルウェーも、顔面にヒットさせられてしまい、
「ぁがッ?!」
仰向けで倒れた。
残りは、撫子&ペイニーと、紫蓮である。
外野が大いに盛り上がるなか、紫蓮は一人で奮戦していたものの、二人に翻弄されて、敗れてしまった。
撫子が、腰に両拳を当て、上半身を反らし、
「ふ、はーッはッはッは――ッ!!」
「どうだ!? グーランよ!」
「いい加減、身の程を知ったであろう!!」
かなり愉快そうにする。
「ぐぬぅ~ッ。」
苦虫を噛み潰したような顔になったグーランが、
「まだまだこれからだッ!!」
「次は勝ぁーつ!」
こう宣言した。
その近くで、
「今日は、もう、勘弁してください。」
嫌がったのはタリアノだ。
「私も充分です。」
こっちは涼音である。
寝転がったまま空を眺め微動だにしないルウェーを、
「大丈夫ですか??」
心配したランソワが覗き込もうとした。
それよりも早く、上半身を〝ガバァッ!!〟と起こしたルウェーが、
「私、こんなに楽しかったの、初めてかもしれません!」
満面の笑みを浮かべる。
この様子に、誰もが〝ニッコリ〟していた……。
翌日、雲行きが怪しくなりだした。
三日後には大雪に見舞われてしまったのである。
そういう時は、視界が悪くなり、方角を誤りかねないので、テント(ゲル)を張って、行進しない決まりになっていた。
ちなみに、テント周辺の雪は、火炎系のスキルや魔法で定期的に溶かしている。
PM13:00過ぎ。
男性陣とサーヴァント達は、各自の部屋で、素振りや、筋トレに、読書であったり、昼寝していた。
女性陣は、一階の[休憩室]で、ホットの紅茶/珈琲/緑茶を飲みつつ、談笑している。
あれ以来、自分から積極的に話し掛けるようになったルウェーは、すっかり皆と打ち解けられたようだ。
冒険を始めた頃に不安げだった本人の表情は、今や明るい。
雪の影響で、[ミーノンの首都]に到着するのに、およそ二ヵ月が掛かった。
それがなければ、一ヶ月ほどで済む道程だ。
なお、この期間中に[第四次スノーウォーズ]が実施されたのは、言うまでもない。
何はともあれ。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、都の中央広場まで訪れている。
ここの北西に、石垣と木材に瓦屋根で造られた城が存在していた―。
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