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― 第四章・西陸行路 ―
第百149話 大聖女
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町の中を住民が定期的に雪掻きしているのだろう、道は通行しやすくなっている。
夕暮れ時の大飯店にて、
「酒も、食べ物も、じゃんじゃん運んできてくれ!!」
愉快そうにしているのは、撫子だ。
「ぐっぬぅ~ッ!」
「あと少しだったというのに…、思い出しただけでも腹が立ぁーつ!!」
まだ客が少なめの店内に響くは、グーランの“心の叫び”だった。
そう。
[雪合戦]に勝利したのは、紫蓮・撫子・タリアノ・ランソワの“A班”である。
「まぁ、負けたとはいえ、なかなかに楽しかったわね。」
ペイニーの意見に、
「ええ。」
涼音が頷く。
「じゃあ、また今度、どこかで開催しようぜ。」
フゥーリカンが提案したところ、
「構わんが……、班変えするのか??」
撫子が尋ねたのである。
これに、
「いや、同じ面子でリベンジだ!」
「次は覚えてろよ!!」
と、宣言するグーランであった。
[GOD SLAYER’S]は、改めて北上していた。
雪が降ったり止んだりするなか、寒さに強いモンスター達と何度か戦闘になったようだ。
背丈が3~5Mで、白い体毛に覆われていて、頭に二本の黒い角が生えている“ウェンディゴ”であったり。
四足歩行の“白狼”や、二足歩行で各自なにかしらを装備している“白熊”である。
他にも、全身が[氷]で出来ている“マンモス”や“サーベルタイガー”が見受けられた。
紫蓮たちは、それらを倒しつつ、[エーチゼェンの首都]を目指している。
この間に、[第二次スノーウォーズ]が実施された。
結果。
涼音/ペイニー/グーラン/フゥーリカンのB班が…、敗北を喫したのである。
またしても。
その夜、テント(ゲル)内で、悔しさのあまりグーランが浴びるほど酒を飲んでいたそうな……。
都には、紫蓮らの姿があった。
通常であれば、“ヤーマートゥー”との国境から二週間ぐらいで到着できるのだが、雪の影響で一ヶ月ほどが掛かったみたいだ。
首都の南東に、まるで城のような[聖堂]が聳え立っている。
石造りである建物の、エントランスを進んでいたところ、
「お待ちなさい!」
「ここは“男子禁制”ですよ。」
「サーヴァントは別として。」
40代前半くらいの修道女に止められてしまった。
「そいつは、すまない。」
「だが、俺の爺様、あー、…、“カーチーの国主”から大聖女への手紙を持って来たんで、面会させてもらいたい。」
フゥーリカンの説明に、
「!!」
顔色を変えた女性が、
「承知しました。」
「このまま少々お待ちください。」
こう告げて、その場から去っていったのである。
紫蓮達は、割と広めの[執務室]に案内されていた。
ちなみに、サーヴァントらは1Fで待機している。
紫蓮たちの眼前には、アンティークなディスク席に腰掛けて、書状を黙読している人物がいた。
座っているので確かな事は分からないが、身長は160㎝といったところだろう。
痩せ型であり、60代半ばの年齢と思しき女性は、穏健そうな印象だ。
纏っている修道服は白く、ところどころに赤糸での刺繍が施されている。
明らかに他の修道女とは格が違う。
「本当に懐かしいわね。」
目を細めた人物が、傍に控えている女性に、
「一つ頼まれてくれるかしら?」
「“ルウェー”を呼んできてほしいの。」
そのように述べた。
先程、エントランスで紫蓮達に対応した修道女が、
「かしこまりました。」
頭を下げた流れで退室していく。
これを見送りながら、
「ところで……、“名も無き旅団”の皆さんは、お元気??」
紫蓮らに訊ねる[大聖女]だった―。
夕暮れ時の大飯店にて、
「酒も、食べ物も、じゃんじゃん運んできてくれ!!」
愉快そうにしているのは、撫子だ。
「ぐっぬぅ~ッ!」
「あと少しだったというのに…、思い出しただけでも腹が立ぁーつ!!」
まだ客が少なめの店内に響くは、グーランの“心の叫び”だった。
そう。
[雪合戦]に勝利したのは、紫蓮・撫子・タリアノ・ランソワの“A班”である。
「まぁ、負けたとはいえ、なかなかに楽しかったわね。」
ペイニーの意見に、
「ええ。」
涼音が頷く。
「じゃあ、また今度、どこかで開催しようぜ。」
フゥーリカンが提案したところ、
「構わんが……、班変えするのか??」
撫子が尋ねたのである。
これに、
「いや、同じ面子でリベンジだ!」
「次は覚えてろよ!!」
と、宣言するグーランであった。
[GOD SLAYER’S]は、改めて北上していた。
雪が降ったり止んだりするなか、寒さに強いモンスター達と何度か戦闘になったようだ。
背丈が3~5Mで、白い体毛に覆われていて、頭に二本の黒い角が生えている“ウェンディゴ”であったり。
四足歩行の“白狼”や、二足歩行で各自なにかしらを装備している“白熊”である。
他にも、全身が[氷]で出来ている“マンモス”や“サーベルタイガー”が見受けられた。
紫蓮たちは、それらを倒しつつ、[エーチゼェンの首都]を目指している。
この間に、[第二次スノーウォーズ]が実施された。
結果。
涼音/ペイニー/グーラン/フゥーリカンのB班が…、敗北を喫したのである。
またしても。
その夜、テント(ゲル)内で、悔しさのあまりグーランが浴びるほど酒を飲んでいたそうな……。
都には、紫蓮らの姿があった。
通常であれば、“ヤーマートゥー”との国境から二週間ぐらいで到着できるのだが、雪の影響で一ヶ月ほどが掛かったみたいだ。
首都の南東に、まるで城のような[聖堂]が聳え立っている。
石造りである建物の、エントランスを進んでいたところ、
「お待ちなさい!」
「ここは“男子禁制”ですよ。」
「サーヴァントは別として。」
40代前半くらいの修道女に止められてしまった。
「そいつは、すまない。」
「だが、俺の爺様、あー、…、“カーチーの国主”から大聖女への手紙を持って来たんで、面会させてもらいたい。」
フゥーリカンの説明に、
「!!」
顔色を変えた女性が、
「承知しました。」
「このまま少々お待ちください。」
こう告げて、その場から去っていったのである。
紫蓮達は、割と広めの[執務室]に案内されていた。
ちなみに、サーヴァントらは1Fで待機している。
紫蓮たちの眼前には、アンティークなディスク席に腰掛けて、書状を黙読している人物がいた。
座っているので確かな事は分からないが、身長は160㎝といったところだろう。
痩せ型であり、60代半ばの年齢と思しき女性は、穏健そうな印象だ。
纏っている修道服は白く、ところどころに赤糸での刺繍が施されている。
明らかに他の修道女とは格が違う。
「本当に懐かしいわね。」
目を細めた人物が、傍に控えている女性に、
「一つ頼まれてくれるかしら?」
「“ルウェー”を呼んできてほしいの。」
そのように述べた。
先程、エントランスで紫蓮達に対応した修道女が、
「かしこまりました。」
頭を下げた流れで退室していく。
これを見送りながら、
「ところで……、“名も無き旅団”の皆さんは、お元気??」
紫蓮らに訊ねる[大聖女]だった―。
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