GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第四章・西陸行路 ―

第144話 傭兵王

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“カーチーの国主”は[傭兵王]と評されている。

名を“ヴァンギー”という。

ジョブは【戦士】らしい。

ランソワが祖母から聞いた話しや、紫蓮しれんらが大飯店などで仕入れた情報によると、かの御仁は、[名も無き旅団]が解散した後に、暫く各国を渡り歩き、いつしか故郷である“カーチー国”に帰省したのだそうだ。

その時に[傭兵集団]を創立し、数々のいくさで武功を立てたとの事である。

よって、“先々代の国主”に、高く評価されると共に信頼され、〝我が娘を嫁に〟と勧められたらしい。

断る理由もなく、縁談に応じたのは、ヴァンギーが25歳の頃だ。

この、およそ10年後に、しゅうとである“先々代”が寿命で他界した。

跡を継いだのは、彼の子息である。

ヴァンギーにとっては“義弟”にあたる人物だ。

その男は、“明君”と謳われた父を超えようと躍起になり、無茶な政策ばかりを投じてしまったらしい。

結果、僅か一年程で国を傾きかけさせてしまい、多くの人々から“暗君”と呼ばれるようになった。

これにより心が離れた殆どの家臣が、“先々代の国主”にとっての婿であるヴァンギーを〝新たな国主に〟と押し上げたのである。

妻の承諾もあって、クーデターを起こし、成功した彼は、[傭兵王]と呼ばれるようになり、30年近くに亘って国を統治しているとのことだ。


城に在る客間の一つにて。

その本人が、今、紫蓮達の眼前に居る。

椅子に座っているので、確かな背丈は分からないが、おそらく180㎝前後だろう。

肌は黒色と灰色の中間といった感じだ。

ホワイトの布に、ゴールドの刺繍が入った、民族衣装みたいなものを着ている。

この服ごしでもガタイの良さが伝わってきた。

短く刈った髪と、鼻の下に蓄えている髭は、ところどころ白い。

ランソワが手渡した手紙に目を通し終えた“カーチーの現国主”が、

「ふむ…。」
「懐かしい名前が連なっておるのう。」

〝ニッコリ〟と笑みを浮かべる。

だが次の瞬間には、

「しかし、〝一緒に冒険する者を出してあげてほしい〟とは……。」

腕を組んで〝ふぅ~むッ〟と眉間にシワを寄せながら考え込んだ。

待つこと数十秒。

「そなたらと同じくらいの年齢がいいだろうしな。」
「…、やはり、ここは、物怖じしない生格も含めて、アヤツが適任であろう。」

〝うむ!〟と一人で納得した傭兵王が、左手首に填めている[ブレスレット]から“パネル画面”を開き、誰かに連絡する。

ちなみに、様々な国に流通している“ブレスレット”は、[名も無き旅団]が活動していたときには未だ存在していなかったらしい。

初めて世に登場したのは、35年ほど昔の事らしい。

つまり、ヴァンギーなどが30歳あたりだった時代である。

なので、[名も無き旅団]の元メンバーは、それぞれの連絡先を知らないため、書状を届けるしかすべがないそうだ。

ともあれ。

『どうした? 爺様じっさま。』
『急用か??』

画面の向こうから尋ねてきた青年に、

「お前に紹介したい者たちがおる故、“第一客間”に来るが良い。」
「“フゥーリカン”よ。」

このように声を掛ける[カーチーの国主]だった―。
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