GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
136 / 300
― 第四章・西陸行路 ―

第136話 夏の終わりに・後編

しおりを挟む
4番窓口にて、紫蓮しれんらは、[成れの果て]に関する情報を仕入れていた。

担当者は“兎の獣人”である。

椅子に座っているため、詳しくは分からないが、身長は170㎝といったところだろう。

スーツにネクタイの男性である。

彼によれば……。

[イナバ―ンの首都]から北西へ徒歩で一日ぐらいの場所に小高い山があり、その頂上に“古城”が在るのだそうだ。

かつて内乱が起きた際に建てられた代物だが、国が平定されてからは利用価値がなくなってしまい、数百年も放置されていたので、朽ちた廃城になってしまっているらしい。

そこ・・に、10日ほど前から[成れの果て]が住み着いてしまい、近隣のモンスター達が集まってきているとの事である。

ここ何日かで、イナバ―ン国の正規兵や、冒険者たちが、攻略を試みたものの、いずれも失敗に終わったみたいだ。

イナバ―ン国は、長いこと、内外での争いが無かったので、兵力が弱体化しているらしい。

また、冒険者の多くは、イナバ―ンの北東に位置する[ターンゴォン国]が、その東隣の[西陸さいりく第十神国しんこく]と交戦中のため、現地へと赴いているのだそうだ。

特に、腕利き・・・達が。

このため、[成れの果て]の討伐は、上手くいっていないらしい。

タリアノが、

「そもそも、“成れの果て”は、何処どこから古城へと渡ってきたのでしょうか?」

素朴な質問をしてみたところ、

「なんでも、誰も使っていない廃城に出入りしていた怪しげな一団がいたそうでして…、目撃した地元民が不審がって通報し、数十の兵士が駆け付けたところ、“闇商人”がたむろしていたそうです。」
「その集団を捕まえようとしたら、秘かに運び込んでいた“成れの果て”を解き放たれたてしまったと、聞き及んでいます。」
「ですが……、ご存知かと思いますが“成れの果て”はぎょがたいため、敵味方問わず、殆どが命を落としてしまったそうです。」

[兎の獣人]が答えたのである。

「闇商人??」

眉をひそめた撫子なでしこに、

「ええ。」
「〝詳細は不明〟となっている組織でして…。」
「およそ半年前、西陸の神国連合が、北陸ほくりくの魔族領に乗り込んで、戦となった際に、何体かの“成れの果て”を入手したとか……。」
「その闇商人たちは、噂によれば、西の大陸の数ヵ所に“隠れ家”を有しており、頻繁にアジトを変えているので、足取りを掴めず、かしらや幹部を確保できずにいるそうです。」

担当者が説明してくれた。

「魔族との戦争があったのか?」

紫蓮に訊かれたランソワが、

「はい。」
「“西の大陸”にある神々の国のなかでも、北部の七ヵ国ほどが挑んだようですが…、敗北を喫したそうです。」

と、教えてくれたのである。

「そうか……。」

紫蓮は、かつて[東の大陸]で幼馴染を失った出来事がフラッシュバックしたようで、眉間にシワを寄せた。

「で??」
「どうするの?」
「このクエスト、受けるのか、めておくのか。」

全員に問い掛けたのはペイニーだ。

グーランが、

「んん~…。」
「ま、その城に居るモンスターどもの数にもよるだろうけど……、“成れの果て”の一体ぐらい、どうにかなるんじゃねぇか??」
「だったら、受注してもいい気がするぜ、俺は。」

そう述べたら、

「いえ。」
「〝成れの果ては、二体ないし三体、存在している〟との報告がありましたよ。」

窓口の獣人が告げたのである。

この発言に、

「え?!」

フリーズしてしまう[ゴッド・スレイヤーズ]だった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...