GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第四章・西陸行路 ―

第127話 騎士王

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首都の中心地に、石造りの荘厳な城が建っている。

この城に在る20畳ほどの客間に[ゴッド・スレイヤーズ]の姿があった。

サーヴァント達と[ピースメーカーズ]は、別の広間に通されている。

紫蓮しれんらが、女性の給仕たちが出してくれていた冷たい珈琲や紅茶を、それぞれに飲み終えたころ、二人の従者を連れた初老の男性が、

「待たせたなッ!」

笑みを浮かべながら入室してきた。

背丈は170㎝あたりだろう。

肩あたりまでの長さがある天然パーマの白い髪の毛を、オールバックにしている。

また、鼻の下や顎に生えている立派な髭も白い。

青色を基調とした服ごしでもガタイの良さが窺えた。

この人こそが、【騎士王】として名高い“ビィーゼェーンの国主”である。

とは言え、決して本当の王ではない。

紫蓮が世話になった[ヒーゴンの侍王]みたいなものだ。

あの御仁は既に国主の座を譲って“総帥”になっているが…。

[GOD SLAYER’S]が〝スッ〟と立ち上がって会釈する。

その流れで、タリアノが【大魔導師】と謳われる祖父からの書状を手渡した。

椅子に腰かけた騎士王が、手紙を読み始めたところで、紫蓮らも着席していく。

「…………、ふむ。」

タリアノに視線を送ったビィーゼェーンの国主が、

「そなたが“ロッマー”の孫か。」
「確かに、面影があるのぉ。」

穏やかな顔つきになる。

更には、

「しかし、まぁ、〝やがて神を倒すに至る〟ための修行を兼ねて、わざわざ“南の大陸”から渡って来るとは…。」
「お主ら……、見どころがあるのぉッ!!」

愉快そうにする騎士王であった。

「ロッマーからの手紙には、そなたらと一緒に行動してくそうな人物を紹介してやってくれ、みたいな事が記されているが…。」

〝うぅ~む〟と暫し考え込んだ国主が、

「あ奴が適任かもしれんな。」

と、呟いて、

「“グーラン”を、これえ。」

従者の一人に告げる。

「はッ!」

応じた男性が退室していくなか、

「ところで……、書状によれば、その方らは、“清虎きよとら”達との繋がりがあるとか。」
「かつての我が仲間たちが、今はどのようにしておるのか、簡単で良いから、教えてくれ。」

懐かしそうに目を細める騎士王だった…。


話しを聞き終えた国主が、

「そうか……、なんだかんだありながらも、みな、息災か。」

〝ふむ〟と頷いたタイミングで、

「呼んだか?」
「爺さん。」

10代後半であろう青年が足を運んできた。

この若者は、グレーを基調とした衣類を着用している。

身長は180㎝ありそうで、筋肉質な体つきだ。

金色の髪は短めに揃えていた。

「ちと時間が掛かったようじゃが…、何かしておったのか??」

騎士王の質問に、

「ん?」
「ああ、自分のサーヴァント達と鍛錬してて、キリがいいとこまでめられなかったんだよ、なかなか。」
「それよりも……、こちらは??」
「爺さんの友人にしては、全員、若すぎると思うんだが…。」

青年が答えつつ首を傾げた。

「んな訳がなかろう。」

眉間にシワを寄せた国主が、

「儂が初めて冒険を共にした一員の、孫や、家臣だった者たちだ。」

そのように述べたのである。

「あー、……、“名も無き旅団”だったっけか?」
「…、で??」
「俺を呼んだ理由は?」

尋ねた青年に、

「グーランよ……、いつか神どもを滅ぼすべく、彼らと旅に出てみんか??」

騎士王が返す。

詳細を伝えられないまま、唐突に提案された青年が、

「は?!」

〝きょとん〟とした表情になった―。
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