GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第四章・西陸行路 ―

第126話 ビーゼェーン国

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[ビーゼェーン国]は、“西の大陸”の最南端に位置している。

そんなビーゼェーン国の南に拠を構える港町にて、大食堂での朝食を済ませた一同は、首都へと北上していた。

幅広の“土の道”を歩きながら、撫子なでしこが、

「ふ…む?」
「〝西の大陸は、砂漠が多い〟と、かつて聞いた事があったが……。」
「基本的に草原が広がっているし、遠くには森林も見受けられる。」
「あれは、嘘の情報だったのだろうか??」

首を傾げる。

これに、

「この大陸の〝南方の国々は土地が豊かで、中央の諸国が砂漠地帯になっており、北方の各国は冬になると雪が降り積もる〟と、書物で読んだことがあります。」

タリアノが述べた。

「あー、うん、そうね。」

頷いたペイニーが、

「私が子供の頃に、うちのギルドに来た事がある冒険者たちが西の大陸出身で、そんな話しを聞かせてくれたから、きっと間違いないわ。」

そう補足する。

涼音すずねの、

「やはり、砂漠は、暑いのでしょうか?」

との疑問に、

「日中は、そうみたいですが…、夜は冷え込むみたいですよ。」

タリアノが答えた。

「そういやぁ、お前達が目指してる国って、どこだ??」

紫蓮しれんが訊ねたところ、[PEACE MAKER’S]のリーダーであるロンド―が、

「ん?」
「言ってなかったスか??」
「“ハーリマー国”っす。」
「紫蓮の兄貴あにき。」

と、返したのである。

「そこは、どのような国なのだ?」

撫子の問いには、

「“ドワーフの国”で、他にも、人間や獣人など、腕の立つ職人に錬金術師が集まっているそうですよ。」
「撫子の姐御あねご。」

赤髪ボブショートの少女武闘家であるルーシャが説明した。

「何故、その国に赴こうとしているんです??」

涼音が尋ねてみたら、茶髪坊主の少年戦士であるヌラーバが、

「僕らが居た孤児院の、院長が、古くからの友人を紹介してくれたんだけど……、その人が〝ハーリマーの都で生活している親戚に、手紙を届けて欲しい〟って、報酬の前払いで発注してくれたんですよ、涼音の姐御。」

このように伝えたのである。

黒髪ボブの少女弓術士である真凪まなの、

「私たちの年齢や実績だと、ギルドで受けられるのは、畑仕事とか、川や池の掃除だったり、逃げ出したペットの捜索みたいなのしか、ないから…、ロンド―が〝そんなの冒険者らしくない〟って駄々をこねていたのを、見かねた院長が、親友の方に頼んでくれたんじゃないかな?」

そういった予想に、

「え?!」
「マジで??」

ロンド―が驚いて、黒髪ショートヘアーの少年クレリックであるさとるに視線を送ったところ、

「うん。」

と肯定された。

「まぁ、ロンド―以外は、みぃんな、気付いてたけどね。」

茶髪セミロングの少女魔法使いであるララベーリャの指摘に、

「嘘……。」
「なんか、俺だけバカみたいで、ショックだわ。」

ヘコんだ少年騎士を、

「ロンド―は、それぐらいで丁度いいよ。」

少年戦士が慰める。

「いや、フォローになってねぇよ、ヌラーバ。」

ロンド―が顔を引きつらせ、

「そぉう?」

ヌラーバがとぼけたことによって、周囲に笑いが生まれていた…。


[GOD SLAYER’S]が、自分達のテント(ゲル)を、六人の少年少女らにも使わせようとしたものの、

「俺らは、男と女のチームで、ゲルを一つずつ購入しているから、大丈夫っス。」

ロンド―が断ったのである。

しかし、テントの所有者であるタリアノが、

「遠慮する必要はありませんよ。」

と、勧めたので、利用させてもらう事にしたようだ。

結果、〝この選択は正しかった〟とロンド―たちは思ったのである。

なぜなら、快適なので。


日々、鍛錬を積んだり、遭遇した魔物や賊を倒しつつ、北へ進むこと半月。

紫蓮達は、ビーゼェーンの首都に到着したのであった―。
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