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― 第四章・西陸行路 ―
第125話 上陸
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あれから、日中は、船大工たちが、甲板と手すりの修理作業を行っていた。
また、生き残った10人の傭兵や、[GOD SLAYER’S]に[PEACE MAKER’S]は、男性陣と女性陣に分かれて、時おり出現する“海の魔物”らと戦っている。
なかでも、しばしば訪れてくる“セイレーン”は、いささか厄介だった。
タリアノの知識によれば、複数形は“セイレーネス”との呼び方になるらしいが…。
いずれにしろ、このモンスター達は、上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿をしており、背中に翼を有している。
彼女たちは、美しい歌声で航行中の者らを惑わし、遭難や難破を引き起こす。
詳細は不明だが、この世界では〝混乱と魅了が合わさったスキルだろう〟とされている。
それを発動される度に、誰もが次第に我を失っていく。
だが、こちらは、皆が完全に支配されてしまう前に、タリアノのサーヴァントであるホルスタウロスや、黒髪ショートヘアーの少年こと悟などの、[クレリック]が、【インタフィアレンス・リリース】を用いて、周りの正気を取り戻させていった。
その流れで、自由になった面子が、狂わされかけているメンバーに、[異常回復ポーション]を飲ませていく。
こうして、セイレーンの集団である“セイレーネス”を撃破していったのである。
他にも、サハギン・蟹型・亀型の魔物とバトルになっては、それらを倒していった……。
紫蓮らが、[ナーガァートゥ国]を出てから11日目の朝――。
目的の港に船が着いた。
乗客が〝ゾロゾロ〟と船を降りていく一方で、あの冒険者たちが“霊安室”から棺を運んでくる。
そう。
亡き仲間達だ。
甲板にて、
「どこか、埋葬してあげるアテは、あんのかい?」
船長が訊ねた。
これに対して、30代半ばの女性が、
「私らは、全員、“西の大陸”の出身だから、この国の集団墓地にでも…。」
と、返す。
「そうか……。」
キャプテンが頷いて、
「まずは、今回の報酬だ。」
帆布で作られた巾着袋を渡した。
更に、
「それと…、こっちは、命を落とした連中への手向けだから、弔いの足しにしてくれ。」
同じ形状の袋を、もう一つ与えようとする。
さっきの女性が、
「いや、私たちは“クラーケン”に何も出来なかったから、それまで貰うわけには……。」
躊躇するも、
「あれに出くわしっちまったのは、不慮の事故みてぇなもんだ。」
「希少種のアイツらは、世界中の海を巡ってるらしく、何処に現れるかは不明だから、防ぎきれたもんじゃねぇ。」
「つー訳で…、ほれ!」
「お前さんがたには、なんの責任もねぇんだから、遠慮すんな。」
船長が押し切って、通貨の入っている巾着袋を強引に持たせた。
「……、ありがとう、ございます。」
女性を筆頭に、頭を下げたパーティーが、その場を去っていく。
これを、少し離れ場所で見ていた紫蓮らに、
「あんたらのお陰で、無事に辿り着けた。」
「改めて、感謝する。」
キャプテンが敬礼し、近くに居た船員達が、それに倣う。
ロンド―達6人の少年少女は、どこか誇らしげにしていた…。
紫蓮たちも下船したようだ。
撫子やペイニーら数名が、久しぶりの地上に〝んん――ッ〟と背伸びする。
ここに至るまで騒動に巻き込まれた一同ではあったが、表情は穏やかだ。
普段は大地を旅している者たちにとって、海での生活は何かと限りがあるので、解放感に満たされていっているのだろう。
かくして、[ビィーゼェーン国]に足を入れた[ゴッド・スレイヤーズ]と[ピースメーカーズ]だった―。
また、生き残った10人の傭兵や、[GOD SLAYER’S]に[PEACE MAKER’S]は、男性陣と女性陣に分かれて、時おり出現する“海の魔物”らと戦っている。
なかでも、しばしば訪れてくる“セイレーン”は、いささか厄介だった。
タリアノの知識によれば、複数形は“セイレーネス”との呼び方になるらしいが…。
いずれにしろ、このモンスター達は、上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿をしており、背中に翼を有している。
彼女たちは、美しい歌声で航行中の者らを惑わし、遭難や難破を引き起こす。
詳細は不明だが、この世界では〝混乱と魅了が合わさったスキルだろう〟とされている。
それを発動される度に、誰もが次第に我を失っていく。
だが、こちらは、皆が完全に支配されてしまう前に、タリアノのサーヴァントであるホルスタウロスや、黒髪ショートヘアーの少年こと悟などの、[クレリック]が、【インタフィアレンス・リリース】を用いて、周りの正気を取り戻させていった。
その流れで、自由になった面子が、狂わされかけているメンバーに、[異常回復ポーション]を飲ませていく。
こうして、セイレーンの集団である“セイレーネス”を撃破していったのである。
他にも、サハギン・蟹型・亀型の魔物とバトルになっては、それらを倒していった……。
紫蓮らが、[ナーガァートゥ国]を出てから11日目の朝――。
目的の港に船が着いた。
乗客が〝ゾロゾロ〟と船を降りていく一方で、あの冒険者たちが“霊安室”から棺を運んでくる。
そう。
亡き仲間達だ。
甲板にて、
「どこか、埋葬してあげるアテは、あんのかい?」
船長が訊ねた。
これに対して、30代半ばの女性が、
「私らは、全員、“西の大陸”の出身だから、この国の集団墓地にでも…。」
と、返す。
「そうか……。」
キャプテンが頷いて、
「まずは、今回の報酬だ。」
帆布で作られた巾着袋を渡した。
更に、
「それと…、こっちは、命を落とした連中への手向けだから、弔いの足しにしてくれ。」
同じ形状の袋を、もう一つ与えようとする。
さっきの女性が、
「いや、私たちは“クラーケン”に何も出来なかったから、それまで貰うわけには……。」
躊躇するも、
「あれに出くわしっちまったのは、不慮の事故みてぇなもんだ。」
「希少種のアイツらは、世界中の海を巡ってるらしく、何処に現れるかは不明だから、防ぎきれたもんじゃねぇ。」
「つー訳で…、ほれ!」
「お前さんがたには、なんの責任もねぇんだから、遠慮すんな。」
船長が押し切って、通貨の入っている巾着袋を強引に持たせた。
「……、ありがとう、ございます。」
女性を筆頭に、頭を下げたパーティーが、その場を去っていく。
これを、少し離れ場所で見ていた紫蓮らに、
「あんたらのお陰で、無事に辿り着けた。」
「改めて、感謝する。」
キャプテンが敬礼し、近くに居た船員達が、それに倣う。
ロンド―達6人の少年少女は、どこか誇らしげにしていた…。
紫蓮たちも下船したようだ。
撫子やペイニーら数名が、久しぶりの地上に〝んん――ッ〟と背伸びする。
ここに至るまで騒動に巻き込まれた一同ではあったが、表情は穏やかだ。
普段は大地を旅している者たちにとって、海での生活は何かと限りがあるので、解放感に満たされていっているのだろう。
かくして、[ビィーゼェーン国]に足を入れた[ゴッド・スレイヤーズ]と[ピースメーカーズ]だった―。
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