GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
124 / 300
― 第四章・西陸行路 ―

第124話 沖にて・其之伍

しおりを挟む
紫蓮しれんが、

「準備は、いいか?」

周囲を伺う。

用意が整った面子が、首を縦に振る。

それを確認した紫蓮は、涼音すずねに、目で合図を送った。

軽く頷いた涼音が、

「解きます!」

【結界】を解除する。

ませ―ッ!!」

声を荒げる紫蓮に反応した者たちが、魔法やスキルを一斉に発動させていく。

撫子なでしこ・ロンド―(金髪の少年騎士)・撫子のところのアルミラージ・涼音のサーヴァントである九尾の狐&鎌鼬かまいたち・タリアノのところのリザードマンが、【風撃】を飛ばす。

タリアノ/ララベーリャ(茶髪の魔女)/紫蓮のところの美麗みれい/撫子のサーヴァントであるワーキャット(猫の獣人)/涼音のところのワーウルフ(狼の獣人)/ペイニーのサーヴァントである羊の獣人は、【氷撃】を発射した。

これら大小様々な魔法とスキルが、クラーケンにヒットしていく。

[風]で触手を斬られ、[氷]で胴体を陥没されて、

グオオオオ――――ッ!!!!

断末魔の叫びをあげた“海の怪物”が、今度こそ、確実に、沈んでいく。

水の泡を作りながら……。


まさに“キャプテン船長”らしい帽子と制服姿の男性が、

「すまねぇ。」
「恩に着るぜ。」

紫蓮らに礼を述べる。

「気にしなくていい。」
「それよりも…。」

紫蓮が動かした視線の先には、雇われている冒険者たちが居た。

どうやら、立ち上がれているのは半数の10人だけみたいだ。

そのメンバーは、誰もが肩を落としている。

「……、仲間が亡くなっちまったみてぇだな。」
「ま、この船には“霊安室”が在るから、そこに遺体を運ばせてやろう。」
「あとは、手すりと甲板かんぱんの修理だが…。」

船長が後ろを振り向いたところ、全ての船大工と船員が集結していた。

「作業は明日でも問題ないか?」
「今日は、もう、遅い時間だから、これ以上は乗船客を刺激したくねぇ。」
「大工達は破損状況を調べておいてくれ。」
「それ以外の船員らは、お客さんがたに事情を説明して〝脅威は去ったから、もう心配はない〟って伝えるように。」

キャプテンの指示によって、クルーたちが散開していく。

これを見届けた船長が、紫蓮達に、

「相談があるんだが……、ちと、いいかい??」

尋ねてきたのである。

タリアノは、

「これからの、〝船の防衛〟に関して、ですね?」

キャプテンが言わんとすることを、すぐに理解したようだ。

ペイニーと撫子が、

「どういう事??」

「さっぱり分からぬ。」

揃って首を傾げた。

「現在、船を護る傭兵が半減しています。」
「この状態では、今後も現れるであろう魔物たちに対応しきれないでしょう。」
「なので、船長は、我々に助力を願いたい、と…。」

タリアノの分析を、

「うむ。」

船長が肯定する。

[ゴッド・スレイヤーズ]と[ピースメーカーズ]の殆どが、〝あー、なるほど〟といった感じで納得した。

「給金は、きちんと支払うから、どうだい?」
「引き受けちゃあくれねぇか??」

キャプテンの提案に、

「いや、無料で船を使わせてもらってるから、タダ働きで構わねぇよ。」
「“お返し”として。」

そう承諾する紫蓮であった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...