GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第四章・西陸行路 ―

第122話 沖にて・其之参

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甲板かんぱんに等間隔で設置されている篝火かがりびと、月明かりのなかで、20代前半ぐらいの男性が、直径30㎝の魔法陣を構築する。

次の瞬間、クラーケンに対して、【雷撃】を発射した。

しかし、恐怖と焦りで、魔力を充分に流しきれておらず、幅2㎝の雷が一本のみ放たれただけである。

本来であれば、幅5㎝くらいの雷撃を、4~5発は同時に飛ばせただろうに。

それでも、これ・・がヒットした軟体生物の動きが止まった。

ちなみに、クラーケンは、頭から胴体まで10Mほどあり、12本もある触手はどれも30Mぐらいの長さみたいだ。

そんな敵は、雷によって、痺れている。

雇われている冒険者達が〝ホッ〟と安堵したのも束の間、右の触手を一本だけ掲げたクラーケンが、それ・・を容赦なく振り下ろしてきた。

「なッ?!」

唖然とした傭兵たちが、

ズドォオ―ンッ!!

と、叩き付けられる。

やはり、あの程度の雷撃では大したことなく、すぐに、正常に戻ったようだ。

この一打によって、船が〝グラァアッ〟と揺れた。

左側の手すりは壊れており、甲板には亀裂が入っている。

冒険者の全員が倒れてしまった状況で、

「ど、どど、ど、どうすんだ!?」
紫蓮しれん兄貴あにきぃッ!」

ロンド―がテンパりながら声を掛けてきた。

[GOD SLAYER‘S]のメンバーが振り返ってみたところ、[PEACE MAKER’S]の六人は小刻みに震えていたのである。

軽く〝ふぅッ〟と息を吐いた紫蓮が、

「スキルであれ、魔法であれ、忍術であれ、雷系を扱える連中は、準備しろ!!」
「一斉に射撃する!」

指示を出していく。

それに気付いた[海の怪物]が、目玉を〝ギョロッ〟と紫蓮らに向けた。

「5、4、3、」

紫蓮がカウントしていくなか、敵が今度は左の触手を一本だけ上げていく。

「2、1、」

クラーケンが、再び触手を振るってきたタイミングで、

て――ッ!!」

紫蓮の号令が響き渡る。

彼はもとより、黒龍の新羅しんらと、撫子なでしこのところのサンダーバードに、黒髪ボブの少女弓術士である真凪まなが、スキルを発動した。

タリアノにララベーリャが魔法を扱い、撫子は【雷遁】を放つ。

空中と甲板から飛んでいった様々な“雷”が、

ズババババァ―ンッ!!!!

おもいっきり命中し、

ビリビリビリビリィーッ!!

クラーケンを感電させる。

これには、相手も堪らず〝ピクッ ピクッ〟と痙攣していた。

その隙を突いて、

「次ッ!」
「火炎系、用意!!」

紫蓮が新たに促す。

思えば、彼らは、なんの武器と防具も装着していなかった。

かろうじて、魔法使いの系統と、クレリックが、[杖]を握り締めているだけだ。

事態を確認しに来ただけなのに、戦わざるを得なくなったので、装備を変更する余裕がなかったのは、無理もない。

各自、寝やすい軽装になっているのだが…、これでクラーケンの一撃がモロに当たりでもしたら、雇われ兵達みたいに、そこら辺に転がってしまうのがオチであろう。

幾つもの雷撃によって、巨大生物は停止しているものの、いつまで効果があるのかは分からない。

相手が自由になる前に倒すべく、

「放てぇえッ!」

紫蓮が合図を送った―。
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