118 / 300
― 第三章・南陸行路 ―
第118話 二者択一
しおりを挟む
三日後の夕刻――。
一両の馬車と、それを護衛する百数の兵が、砦に到着した。
停まった馬車から降りてきたのは、30代半ばと思しき女性である。
身長は170㎝くらいだろう。
体型はスラッとしていた。
金色の髪はショートで、瞳は青く、色白だ。
男っぽい顔立ちではあるが、なかなか美しい。
黒を基調とした衣装は、男性用の貴族服みたいだ。
いずれにせよ、この女性が、
「砦の奪還、感謝いたす。」
「私は、ここより東に在る町の“副町長”を務めているトヨーラである。」
「約束の報酬を預かってきたので、受け取るが良い。」
「代表は、何処か?」
と述べた。
これに応じて、討伐隊の長を務めたグリューが、前に出る。
二人は、それぞれに、自分の手首に着けているブレスレッドを操作して、[画面]を開き、金貨の送受信を行った。
移し替えを終えたグリューが、各パーティーのリーダーに分配していく。
そこからは、リーダー達が自分の仲間に、平等に渡していった。
ブレスレッドの機能を使って。
現在、砦に残っていたのは約150名である。
2000枚の金貨を平等に配ると、一人頭13枚となった。
サーヴァントの分はマスター達が預かるのが常のため、紫蓮とかの場合は、78枚を得たことになる。
一連の流れが済んだところで、
「さて!」
「諸君らの労をねぎらうため、我らの町から、酒と食料を持参した。」
「大いに、堪能してくれたまえ。」
トヨーラが微笑み、彼女に付き従っている兵士たちが、運んできた幾つかの荷台から、酒樽を下ろしていく…。
野営地は、大いに盛り上がっている。
ここ数日、酒が手に入らなかったのと、保存食で過ごしていたので、その反動だろう。
ちなみに、肉・魚・野菜といった食材は、数台の[冷蔵箱]に入れてきたようだ。
“ブロック型の氷”は数日もつとはいえ、徐々に溶けていくので、こまめにチェックしたらしい。
食べ物などを魔法やスキルで凍らせた状態で[亜空間]にしまえればよいのだが、これは不可能となっている。
空間内では、魔法もスキルも無効化されてしまう仕組みのため。
「ところで……、貴殿らは、これから、どうするのだ??」
トヨーラの問い掛けに、
「うちらは、言うなれば、連合なので、明朝には解散しますが?」
グリューが返した。
「そうか…。」
軽く〝ふむ〟と頷いた副町長が、
「いや、実はな……、ナーガァートゥ国の“西の領土”の、あちらこちらから、新たに砦を守る為の駐屯兵が送り込まれている最中なのだが…。」
「必要最低限の数が集結するまで4~5日はかかる計算なのだ。」
「そこで。」
「全員とまでは言わんが、ある程度は残ってもらえないだろうか??」
「この期間に、魔物や賊に襲撃されたら、防ぎきれんかもしれないのでな。」
「助力してもらえると有り難い。」
「当然、この報酬は、改めて出させてもらう。」
「日当で、一人につき銀貨5枚。」
「敵が現れなければ、これといって何をしなくとも稼げるわけだし……、悪い話しではなかろう?」
と、促す。
「う~む…。」
「じゃあ、ちょいと、皆に聞いてみますんで、明日まで待ってもらえませんかね??」
グリューの答えを、
「ああ、勿論だとも!!」
トヨーラが承諾した……。
日が替わって。
朝食後に、“砦防衛のクエスト”を、討伐隊の半数が受ける事にしたようだ。
グリューが、
「なんだ…、お前たちは、去っちまうのか。」
[ゴッド・スレイヤーズ]の旅立ちを、惜しむ。
レッドミノタウロスを倒すぐらいの手練れ達が残ってくれれば、多くの者が心強かったであろうなだけに、残念そうだ。
「すまないが……、西の大陸に渡りたいんで、これで失礼させてもらう。」
紫蓮のザックリとした説明に、近くに居たロンド―(金髪の少年騎士)が、
「兄貴たちもか?!」
「俺らも、用事があって、向こうに行く予定なんだ。」
「一緒に、ダメかな??」
「俺達だけじゃ、不安だからさぁ…。」
「あ、いや、〝ほんの少ぉ~し〟だぞ!?」
「別に、めちゃめちゃビビッてるわけじゃねぇかんなッ!」
そのように説明した。
ヌラーバ(茶髪坊主の少年戦士)による、
「んー、……、その主張は無理があるんじゃないかな?」
「怖がっているのが、バレバレだよ。」
とのツッコミによって、誰もが〝ドッ!!〟と笑う。
「しょうがないわねぇ~。」
「紫蓮、いいんじゃない??」
「同行させても。」
ペイニーの意見を、
「うむ。」
「賑やかにもなるしな!」
撫子が後押しする。
涼音とタリアノも〝構わない〟との事だったので、
「分かった。」
「そうしよう。」
許可してあげる紫蓮だった―。
一両の馬車と、それを護衛する百数の兵が、砦に到着した。
停まった馬車から降りてきたのは、30代半ばと思しき女性である。
身長は170㎝くらいだろう。
体型はスラッとしていた。
金色の髪はショートで、瞳は青く、色白だ。
男っぽい顔立ちではあるが、なかなか美しい。
黒を基調とした衣装は、男性用の貴族服みたいだ。
いずれにせよ、この女性が、
「砦の奪還、感謝いたす。」
「私は、ここより東に在る町の“副町長”を務めているトヨーラである。」
「約束の報酬を預かってきたので、受け取るが良い。」
「代表は、何処か?」
と述べた。
これに応じて、討伐隊の長を務めたグリューが、前に出る。
二人は、それぞれに、自分の手首に着けているブレスレッドを操作して、[画面]を開き、金貨の送受信を行った。
移し替えを終えたグリューが、各パーティーのリーダーに分配していく。
そこからは、リーダー達が自分の仲間に、平等に渡していった。
ブレスレッドの機能を使って。
現在、砦に残っていたのは約150名である。
2000枚の金貨を平等に配ると、一人頭13枚となった。
サーヴァントの分はマスター達が預かるのが常のため、紫蓮とかの場合は、78枚を得たことになる。
一連の流れが済んだところで、
「さて!」
「諸君らの労をねぎらうため、我らの町から、酒と食料を持参した。」
「大いに、堪能してくれたまえ。」
トヨーラが微笑み、彼女に付き従っている兵士たちが、運んできた幾つかの荷台から、酒樽を下ろしていく…。
野営地は、大いに盛り上がっている。
ここ数日、酒が手に入らなかったのと、保存食で過ごしていたので、その反動だろう。
ちなみに、肉・魚・野菜といった食材は、数台の[冷蔵箱]に入れてきたようだ。
“ブロック型の氷”は数日もつとはいえ、徐々に溶けていくので、こまめにチェックしたらしい。
食べ物などを魔法やスキルで凍らせた状態で[亜空間]にしまえればよいのだが、これは不可能となっている。
空間内では、魔法もスキルも無効化されてしまう仕組みのため。
「ところで……、貴殿らは、これから、どうするのだ??」
トヨーラの問い掛けに、
「うちらは、言うなれば、連合なので、明朝には解散しますが?」
グリューが返した。
「そうか…。」
軽く〝ふむ〟と頷いた副町長が、
「いや、実はな……、ナーガァートゥ国の“西の領土”の、あちらこちらから、新たに砦を守る為の駐屯兵が送り込まれている最中なのだが…。」
「必要最低限の数が集結するまで4~5日はかかる計算なのだ。」
「そこで。」
「全員とまでは言わんが、ある程度は残ってもらえないだろうか??」
「この期間に、魔物や賊に襲撃されたら、防ぎきれんかもしれないのでな。」
「助力してもらえると有り難い。」
「当然、この報酬は、改めて出させてもらう。」
「日当で、一人につき銀貨5枚。」
「敵が現れなければ、これといって何をしなくとも稼げるわけだし……、悪い話しではなかろう?」
と、促す。
「う~む…。」
「じゃあ、ちょいと、皆に聞いてみますんで、明日まで待ってもらえませんかね??」
グリューの答えを、
「ああ、勿論だとも!!」
トヨーラが承諾した……。
日が替わって。
朝食後に、“砦防衛のクエスト”を、討伐隊の半数が受ける事にしたようだ。
グリューが、
「なんだ…、お前たちは、去っちまうのか。」
[ゴッド・スレイヤーズ]の旅立ちを、惜しむ。
レッドミノタウロスを倒すぐらいの手練れ達が残ってくれれば、多くの者が心強かったであろうなだけに、残念そうだ。
「すまないが……、西の大陸に渡りたいんで、これで失礼させてもらう。」
紫蓮のザックリとした説明に、近くに居たロンド―(金髪の少年騎士)が、
「兄貴たちもか?!」
「俺らも、用事があって、向こうに行く予定なんだ。」
「一緒に、ダメかな??」
「俺達だけじゃ、不安だからさぁ…。」
「あ、いや、〝ほんの少ぉ~し〟だぞ!?」
「別に、めちゃめちゃビビッてるわけじゃねぇかんなッ!」
そのように説明した。
ヌラーバ(茶髪坊主の少年戦士)による、
「んー、……、その主張は無理があるんじゃないかな?」
「怖がっているのが、バレバレだよ。」
とのツッコミによって、誰もが〝ドッ!!〟と笑う。
「しょうがないわねぇ~。」
「紫蓮、いいんじゃない??」
「同行させても。」
ペイニーの意見を、
「うむ。」
「賑やかにもなるしな!」
撫子が後押しする。
涼音とタリアノも〝構わない〟との事だったので、
「分かった。」
「そうしよう。」
許可してあげる紫蓮だった―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
双子の姉妹は無双仕様
satomi
ファンタジー
双子の姉妹であるルカ=フォレストとルリ=フォレストは文武両道というか他の人の2~3倍なんでもできる。周りはその事実を知らずに彼女たちを貶めようと画策するが……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる