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― 第三章・南陸行路 ―
第118話 二者択一
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三日後の夕刻――。
一両の馬車と、それを護衛する百数の兵が、砦に到着した。
停まった馬車から降りてきたのは、30代半ばと思しき女性である。
身長は170㎝くらいだろう。
体型はスラッとしていた。
金色の髪はショートで、瞳は青く、色白だ。
男っぽい顔立ちではあるが、なかなか美しい。
黒を基調とした衣装は、男性用の貴族服みたいだ。
いずれにせよ、この女性が、
「砦の奪還、感謝いたす。」
「私は、ここより東に在る町の“副町長”を務めているトヨーラである。」
「約束の報酬を預かってきたので、受け取るが良い。」
「代表は、何処か?」
と述べた。
これに応じて、討伐隊の長を務めたグリューが、前に出る。
二人は、それぞれに、自分の手首に着けているブレスレッドを操作して、[画面]を開き、金貨の送受信を行った。
移し替えを終えたグリューが、各パーティーのリーダーに分配していく。
そこからは、リーダー達が自分の仲間に、平等に渡していった。
ブレスレッドの機能を使って。
現在、砦に残っていたのは約150名である。
2000枚の金貨を平等に配ると、一人頭13枚となった。
サーヴァントの分はマスター達が預かるのが常のため、紫蓮とかの場合は、78枚を得たことになる。
一連の流れが済んだところで、
「さて!」
「諸君らの労をねぎらうため、我らの町から、酒と食料を持参した。」
「大いに、堪能してくれたまえ。」
トヨーラが微笑み、彼女に付き従っている兵士たちが、運んできた幾つかの荷台から、酒樽を下ろしていく…。
野営地は、大いに盛り上がっている。
ここ数日、酒が手に入らなかったのと、保存食で過ごしていたので、その反動だろう。
ちなみに、肉・魚・野菜といった食材は、数台の[冷蔵箱]に入れてきたようだ。
“ブロック型の氷”は数日もつとはいえ、徐々に溶けていくので、こまめにチェックしたらしい。
食べ物などを魔法やスキルで凍らせた状態で[亜空間]にしまえればよいのだが、これは不可能となっている。
空間内では、魔法もスキルも無効化されてしまう仕組みのため。
「ところで……、貴殿らは、これから、どうするのだ??」
トヨーラの問い掛けに、
「うちらは、言うなれば、連合なので、明朝には解散しますが?」
グリューが返した。
「そうか…。」
軽く〝ふむ〟と頷いた副町長が、
「いや、実はな……、ナーガァートゥ国の“西の領土”の、あちらこちらから、新たに砦を守る為の駐屯兵が送り込まれている最中なのだが…。」
「必要最低限の数が集結するまで4~5日はかかる計算なのだ。」
「そこで。」
「全員とまでは言わんが、ある程度は残ってもらえないだろうか??」
「この期間に、魔物や賊に襲撃されたら、防ぎきれんかもしれないのでな。」
「助力してもらえると有り難い。」
「当然、この報酬は、改めて出させてもらう。」
「日当で、一人につき銀貨5枚。」
「敵が現れなければ、これといって何をしなくとも稼げるわけだし……、悪い話しではなかろう?」
と、促す。
「う~む…。」
「じゃあ、ちょいと、皆に聞いてみますんで、明日まで待ってもらえませんかね??」
グリューの答えを、
「ああ、勿論だとも!!」
トヨーラが承諾した……。
日が替わって。
朝食後に、“砦防衛のクエスト”を、討伐隊の半数が受ける事にしたようだ。
グリューが、
「なんだ…、お前たちは、去っちまうのか。」
[ゴッド・スレイヤーズ]の旅立ちを、惜しむ。
レッドミノタウロスを倒すぐらいの手練れ達が残ってくれれば、多くの者が心強かったであろうなだけに、残念そうだ。
「すまないが……、西の大陸に渡りたいんで、これで失礼させてもらう。」
紫蓮のザックリとした説明に、近くに居たロンド―(金髪の少年騎士)が、
「兄貴たちもか?!」
「俺らも、用事があって、向こうに行く予定なんだ。」
「一緒に、ダメかな??」
「俺達だけじゃ、不安だからさぁ…。」
「あ、いや、〝ほんの少ぉ~し〟だぞ!?」
「別に、めちゃめちゃビビッてるわけじゃねぇかんなッ!」
そのように説明した。
ヌラーバ(茶髪坊主の少年戦士)による、
「んー、……、その主張は無理があるんじゃないかな?」
「怖がっているのが、バレバレだよ。」
とのツッコミによって、誰もが〝ドッ!!〟と笑う。
「しょうがないわねぇ~。」
「紫蓮、いいんじゃない??」
「同行させても。」
ペイニーの意見を、
「うむ。」
「賑やかにもなるしな!」
撫子が後押しする。
涼音とタリアノも〝構わない〟との事だったので、
「分かった。」
「そうしよう。」
許可してあげる紫蓮だった―。
一両の馬車と、それを護衛する百数の兵が、砦に到着した。
停まった馬車から降りてきたのは、30代半ばと思しき女性である。
身長は170㎝くらいだろう。
体型はスラッとしていた。
金色の髪はショートで、瞳は青く、色白だ。
男っぽい顔立ちではあるが、なかなか美しい。
黒を基調とした衣装は、男性用の貴族服みたいだ。
いずれにせよ、この女性が、
「砦の奪還、感謝いたす。」
「私は、ここより東に在る町の“副町長”を務めているトヨーラである。」
「約束の報酬を預かってきたので、受け取るが良い。」
「代表は、何処か?」
と述べた。
これに応じて、討伐隊の長を務めたグリューが、前に出る。
二人は、それぞれに、自分の手首に着けているブレスレッドを操作して、[画面]を開き、金貨の送受信を行った。
移し替えを終えたグリューが、各パーティーのリーダーに分配していく。
そこからは、リーダー達が自分の仲間に、平等に渡していった。
ブレスレッドの機能を使って。
現在、砦に残っていたのは約150名である。
2000枚の金貨を平等に配ると、一人頭13枚となった。
サーヴァントの分はマスター達が預かるのが常のため、紫蓮とかの場合は、78枚を得たことになる。
一連の流れが済んだところで、
「さて!」
「諸君らの労をねぎらうため、我らの町から、酒と食料を持参した。」
「大いに、堪能してくれたまえ。」
トヨーラが微笑み、彼女に付き従っている兵士たちが、運んできた幾つかの荷台から、酒樽を下ろしていく…。
野営地は、大いに盛り上がっている。
ここ数日、酒が手に入らなかったのと、保存食で過ごしていたので、その反動だろう。
ちなみに、肉・魚・野菜といった食材は、数台の[冷蔵箱]に入れてきたようだ。
“ブロック型の氷”は数日もつとはいえ、徐々に溶けていくので、こまめにチェックしたらしい。
食べ物などを魔法やスキルで凍らせた状態で[亜空間]にしまえればよいのだが、これは不可能となっている。
空間内では、魔法もスキルも無効化されてしまう仕組みのため。
「ところで……、貴殿らは、これから、どうするのだ??」
トヨーラの問い掛けに、
「うちらは、言うなれば、連合なので、明朝には解散しますが?」
グリューが返した。
「そうか…。」
軽く〝ふむ〟と頷いた副町長が、
「いや、実はな……、ナーガァートゥ国の“西の領土”の、あちらこちらから、新たに砦を守る為の駐屯兵が送り込まれている最中なのだが…。」
「必要最低限の数が集結するまで4~5日はかかる計算なのだ。」
「そこで。」
「全員とまでは言わんが、ある程度は残ってもらえないだろうか??」
「この期間に、魔物や賊に襲撃されたら、防ぎきれんかもしれないのでな。」
「助力してもらえると有り難い。」
「当然、この報酬は、改めて出させてもらう。」
「日当で、一人につき銀貨5枚。」
「敵が現れなければ、これといって何をしなくとも稼げるわけだし……、悪い話しではなかろう?」
と、促す。
「う~む…。」
「じゃあ、ちょいと、皆に聞いてみますんで、明日まで待ってもらえませんかね??」
グリューの答えを、
「ああ、勿論だとも!!」
トヨーラが承諾した……。
日が替わって。
朝食後に、“砦防衛のクエスト”を、討伐隊の半数が受ける事にしたようだ。
グリューが、
「なんだ…、お前たちは、去っちまうのか。」
[ゴッド・スレイヤーズ]の旅立ちを、惜しむ。
レッドミノタウロスを倒すぐらいの手練れ達が残ってくれれば、多くの者が心強かったであろうなだけに、残念そうだ。
「すまないが……、西の大陸に渡りたいんで、これで失礼させてもらう。」
紫蓮のザックリとした説明に、近くに居たロンド―(金髪の少年騎士)が、
「兄貴たちもか?!」
「俺らも、用事があって、向こうに行く予定なんだ。」
「一緒に、ダメかな??」
「俺達だけじゃ、不安だからさぁ…。」
「あ、いや、〝ほんの少ぉ~し〟だぞ!?」
「別に、めちゃめちゃビビッてるわけじゃねぇかんなッ!」
そのように説明した。
ヌラーバ(茶髪坊主の少年戦士)による、
「んー、……、その主張は無理があるんじゃないかな?」
「怖がっているのが、バレバレだよ。」
とのツッコミによって、誰もが〝ドッ!!〟と笑う。
「しょうがないわねぇ~。」
「紫蓮、いいんじゃない??」
「同行させても。」
ペイニーの意見を、
「うむ。」
「賑やかにもなるしな!」
撫子が後押しする。
涼音とタリアノも〝構わない〟との事だったので、
「分かった。」
「そうしよう。」
許可してあげる紫蓮だった―。
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