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― 第三章・南陸行路 ―
第117話 過ぎし日
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皆を一ヵ所に集めたグリューが、
「ついさっき、ギルドからの折り返しの連絡があって、東に在る町から役人が視察に向かって来ているらしく、2~3日中には砦に到着するそうだ。」
「で、確認が終わり次第、報酬が支払われる。」
「だから、まぁ…、それまでの間、砦の辺りで暫く眠らせてもらおうぜ。」
〝ニカッ〟と歯を見せた。
[討伐連合隊]が移動を開始したとろで、
「兄貴がたに、姐御がた!!」
[ゴッド・スレイヤーズ]を呼び止める者がいた。
紫蓮ら一同が振り返ってみたら、救ってあげた少年少女の六人組が佇んでいたのである。
「俺らのことか?」
戸惑う紫蓮に、金髪の少年が、
「ああ、そうさ!」
笑みを浮かべた。
「なんか用か??」
紫蓮が伺ったところ、
「改めて、きちんと、お礼しときたくってさ。」
「助けてくれて、本当に、ありがとう!!」
リーダー格であろう金髪の少年が頭を下げ、他の者たちも続いたのである。
「良い心掛けだけど…、その“兄貴”と“姐御”っていうの、やめてくれない?」
いささか迷惑そうなペイニーに、
「ん??」
「じゃあ……、“兄さん”と“姐さん”で、いいかな?」
金髪の少年が返す。
「そういう事じゃなく…。」
「もう、いいわ、好きにして。」
軽い溜息交じりに諦めるペイニーだった。
砦への道すがら、彼らから自己紹介を受けた。
金髪の少年騎士 = ロンド―
茶髪坊主の少年戦士 = ヌラーバ
黒髪ショートヘアーの少年クレリック = 悟(さとる)
赤髪ボブショートの少女武闘家 = ルーシャ
茶髪セミロングの少女魔法使い = ララベーリャ
黒髪ボブの少女弓術士 = 真凪(まな)
誰もが13歳だというメンバーの名前を聞いた紫蓮は、
(一度に全員は覚えきれそうにねぇな。)
と、秘かに思ったのである……。
連合隊は、伝染病を防ぐために、敵の亡骸を、砦の北側で山積みにして、燃やした。
魔物は消滅して[魔鉱石]が遺る仕組みなので、人間と獣人を火葬したのである。
東門の周辺にテント(ゲル)を張った討伐連合隊は、外で食事しながら交流を深めていく。
なかには、睡魔によって〝うつら うつら〟している人々やサーヴァント達が見受けられる。
辺りに視線を送った涼音が、
「皆さん、限界だったようですね。」
と述べた。
これに、
「うむ。」
「昨日からの強硬策で、誰もが疲労困憊みたいだな。」
撫子が同意する。
「もし、砦を占拠していた敵たちが深酒していなかったなら、こちらが敗北を喫していたかもしれませんね。」
そう分析したのは、タリアノだ。
[GOD SLAYER‘S]が会話している所に、
「よう。」
グリューが訪れ、
「レッドミノタウロスを倒してくれたんだってな。」
「奴らん中じゃ、その牛が最も厄介だったみてぇだから、恩に着るぜ。」
挨拶した。
紫蓮が、
「別に…、こっちには戦わないといけない理由があったから、構わない。」
首を左右に振る。
「ああ、そう言や、白虎にとっての仇だったな。」
〝ふむ〟と頷いたグリューが、やや離れた場所ではしゃいでいる少年少女に目をやりながら、
「しかし、ま、あの6人も世話になった事だし、感謝させてくれ。」
会釈した。
「連中は、隊長の知り合いか??」
紫蓮が質問したところ、
「いんや。」
否定したグリューが、
「あいつらは、冒険者といえ、まだ子供だから、〝今回の討伐に参加したい〟って願い出てきたときにゃ、断ろうとしたんだが……、取り敢えず話しを聞いてみたところ、俺が昔いた施設で育ったそうでよ…。」
「なんだか追い払えなくなっちまったんだ。」
左手で後頭部を〝ポリポリ〟掻いたのである。
「つまり?」
ペイニーが尋ねてみたら、
「んー、……、ナーガァートゥの東に隣接してる“アーキン国”に、古い孤児院が在ってよ。」
「俺は、そこの出身で…、あの小僧たちも同じだったみてぇでさ……。」
「要は俺の後輩って訳だ。」
「その施設は、13~15歳の間に巣立っていく決まりになっていて、多くは農家や商人に職人っていった“一般職”に就くんだが…。」
「俺とかみてぇに、冒険者になるヤツも、たまにいてよ。」
「……、俺が旅に出たのが13の時だったもんだから、いろいろと重なってしまって、つい、連合隊に加えちまったんだ。」
「迷惑かけて、すまんかったな。」
グリューが申しわけなさそうにした。
紫蓮が、
「いや…、気にすることはない。」
少し寂しげな表情になる。
どうやら、六人が“孤児”だと知って、失われた自分の家族を回想したようだ―。
「ついさっき、ギルドからの折り返しの連絡があって、東に在る町から役人が視察に向かって来ているらしく、2~3日中には砦に到着するそうだ。」
「で、確認が終わり次第、報酬が支払われる。」
「だから、まぁ…、それまでの間、砦の辺りで暫く眠らせてもらおうぜ。」
〝ニカッ〟と歯を見せた。
[討伐連合隊]が移動を開始したとろで、
「兄貴がたに、姐御がた!!」
[ゴッド・スレイヤーズ]を呼び止める者がいた。
紫蓮ら一同が振り返ってみたら、救ってあげた少年少女の六人組が佇んでいたのである。
「俺らのことか?」
戸惑う紫蓮に、金髪の少年が、
「ああ、そうさ!」
笑みを浮かべた。
「なんか用か??」
紫蓮が伺ったところ、
「改めて、きちんと、お礼しときたくってさ。」
「助けてくれて、本当に、ありがとう!!」
リーダー格であろう金髪の少年が頭を下げ、他の者たちも続いたのである。
「良い心掛けだけど…、その“兄貴”と“姐御”っていうの、やめてくれない?」
いささか迷惑そうなペイニーに、
「ん??」
「じゃあ……、“兄さん”と“姐さん”で、いいかな?」
金髪の少年が返す。
「そういう事じゃなく…。」
「もう、いいわ、好きにして。」
軽い溜息交じりに諦めるペイニーだった。
砦への道すがら、彼らから自己紹介を受けた。
金髪の少年騎士 = ロンド―
茶髪坊主の少年戦士 = ヌラーバ
黒髪ショートヘアーの少年クレリック = 悟(さとる)
赤髪ボブショートの少女武闘家 = ルーシャ
茶髪セミロングの少女魔法使い = ララベーリャ
黒髪ボブの少女弓術士 = 真凪(まな)
誰もが13歳だというメンバーの名前を聞いた紫蓮は、
(一度に全員は覚えきれそうにねぇな。)
と、秘かに思ったのである……。
連合隊は、伝染病を防ぐために、敵の亡骸を、砦の北側で山積みにして、燃やした。
魔物は消滅して[魔鉱石]が遺る仕組みなので、人間と獣人を火葬したのである。
東門の周辺にテント(ゲル)を張った討伐連合隊は、外で食事しながら交流を深めていく。
なかには、睡魔によって〝うつら うつら〟している人々やサーヴァント達が見受けられる。
辺りに視線を送った涼音が、
「皆さん、限界だったようですね。」
と述べた。
これに、
「うむ。」
「昨日からの強硬策で、誰もが疲労困憊みたいだな。」
撫子が同意する。
「もし、砦を占拠していた敵たちが深酒していなかったなら、こちらが敗北を喫していたかもしれませんね。」
そう分析したのは、タリアノだ。
[GOD SLAYER‘S]が会話している所に、
「よう。」
グリューが訪れ、
「レッドミノタウロスを倒してくれたんだってな。」
「奴らん中じゃ、その牛が最も厄介だったみてぇだから、恩に着るぜ。」
挨拶した。
紫蓮が、
「別に…、こっちには戦わないといけない理由があったから、構わない。」
首を左右に振る。
「ああ、そう言や、白虎にとっての仇だったな。」
〝ふむ〟と頷いたグリューが、やや離れた場所ではしゃいでいる少年少女に目をやりながら、
「しかし、ま、あの6人も世話になった事だし、感謝させてくれ。」
会釈した。
「連中は、隊長の知り合いか??」
紫蓮が質問したところ、
「いんや。」
否定したグリューが、
「あいつらは、冒険者といえ、まだ子供だから、〝今回の討伐に参加したい〟って願い出てきたときにゃ、断ろうとしたんだが……、取り敢えず話しを聞いてみたところ、俺が昔いた施設で育ったそうでよ…。」
「なんだか追い払えなくなっちまったんだ。」
左手で後頭部を〝ポリポリ〟掻いたのである。
「つまり?」
ペイニーが尋ねてみたら、
「んー、……、ナーガァートゥの東に隣接してる“アーキン国”に、古い孤児院が在ってよ。」
「俺は、そこの出身で…、あの小僧たちも同じだったみてぇでさ……。」
「要は俺の後輩って訳だ。」
「その施設は、13~15歳の間に巣立っていく決まりになっていて、多くは農家や商人に職人っていった“一般職”に就くんだが…。」
「俺とかみてぇに、冒険者になるヤツも、たまにいてよ。」
「……、俺が旅に出たのが13の時だったもんだから、いろいろと重なってしまって、つい、連合隊に加えちまったんだ。」
「迷惑かけて、すまんかったな。」
グリューが申しわけなさそうにした。
紫蓮が、
「いや…、気にすることはない。」
少し寂しげな表情になる。
どうやら、六人が“孤児”だと知って、失われた自分の家族を回想したようだ―。
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