GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第三章・南陸行路 ―

第100話 ナーガァートゥ国

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窓口で応対してくれているのは、犬の半獣である女性だ。

小柄な事から“コボルド”であろうと推測される。

丸メガネの彼女に聞いてみたところ、“赤いミノタウロス”は、ナーガァートゥ国の西端に位置する砦を占領したのだそうだ。

多数の魔物や、おぼしき者たちと一緒になって。

その情報に、

「忍び?」

撫子なでしこが〝ピクッ〟と反応した。

「もしかして??」

伺う涼音すずねに、

「可能性は、ありそうね。」

ペイニーが頷く。

「“討伐依頼”は出ていますか?」

タリアノが尋ね、

「ええ。」
「この国と、アーキン国の、双方から。」
「金貨1000枚ずつと、かなり破格ですよ。」
「なにせ、両国において、被害を受けた街や村が何ヵ所かありますからね。」
「どちらも、国の威信をかけているみたいです。」

コボルドが述べる。

更に、

「現在は、砦の近くにある“港町”を脅して、お酒や食べ物を献上させているそうです。」
「断った人達が、殺されたうえに、町の中央広場に晒されるという、目せしめにされたことで、誰もが従っているとの報告があります。」

窓口担当者が補足した。

「なぜ、港町を支配しなかったのでしょう??」

涼音の疑問に、

「攻め込まれた際に守りやすそうな砦を選んだんだろう。」
「おそらく、ミノタウロスではなく、人間の知恵だろうな。」

紫蓮しれんが答える。

「〝定石じょうせきを打った〟という事ですか。」

タリアノが返したら、

「成程、ね。」

ペイニーが納得した。

「ともかく。」
「その砦へ行こう。」
「な? 紫蓮。」

促した撫子に、

「ああ、勿論だ。」

紫蓮が同意したのである……。


“クエスト”を受注した[GOD SLAYER‘S]が、道中、雨に降られたりもしながら、西へと向かって、およそ15日が経った。

砦まで歩いて半日ほどの距離で、テント(ゲル)が幾つも張られているのが、紫蓮らの目に映る。

「あれは??」

撫子が首を傾げ、

「私たち以外にも討伐依頼を受けた冒険者が、あちらこちらから集まっているのでしょう。」

タリアノが予想した。

「あのような所で野営しているのは何故でしょうか?」
「砦のそばではなく。」

涼音の問いに、

「作戦会議でもしているんじゃない??」
「敵が、強かったり、数が多いときには、パーティーが手を組んで連合を結成してに当たるらしいから。」
「〝成功報酬を平等に分け合う〟といった条件でね。」
「割り切れなかったお金は、皆で酒場に赴いて使ったりするそうよ。」
「ともかく…。」
「足並みが揃わないうちは、砦の近くに拠点を構えるのを避けたんじゃないかしら。」
「襲撃されても対応しきれないでしょうからね。」

ペイニーが答えたのである。

一同が納得するなか、

「取り敢えず……、のぞいてみるか。」

と、提案する紫蓮だった―。
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