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― 第三章・南陸行路 ―
第96話 大魔導師
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二週間以上が経ち、[GOD SLAYER‘S]は、“ヒーゼェン国”の首都に訪れていた。
あのギルドを出た際に、
「西へ進もう。」
との意見もあったが、
「いや、それよりも先に、北上して、ペイニーが渡された書状を届けに行こう。」
と、紫蓮が皆を促したのである。
“剣の女王”の旧友だという[大魔導師]は、都の北に在る古城で暮らしているとの事だった。
なんでも、二十年ほど前に、先代の国主に功績を認められ、褒美として授与されたのだそうだ。
その城は、首都の北門から徒歩で一時間くらい掛かるらしい。
今日はもう夜になっているので、彼らは宿に泊まることに決めたのであった…。
翌日のPM14:00過ぎ――。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、ゴシック調で四階建ての黒い城に到着していた。
ここには大魔導師や弟子などが生活しているとの事前情報だ。
城門付近に居た若い女性に、ペイニーが祖母からの紹介状の件を告げる。
ブラウンの“フード付きローブ”を纏っていた彼女の案内で、紫蓮らは、階段を上っていく。
サーヴァント達は、1Fのエントランスで待機させられている。
三階の廊下の十字路で、先頭のウィッチが、誰かしらに気付き、
「あ、タリアノ君!」
と声をかけた。
左の曲がり角で数人と喋っていた青年が、
「はい?」
振り返る。
身長は170㎝くらいだろう。
スラッとしており、金色の髪は、やや短めだ。
細長いメガネと、緑色の“フード付きローブ”を、身に着けていた。
「こちらの方々が、大魔導師様に用事があるそうよ。」
ウィッチの言葉に、
「はぁ、祖父にですか……。」
男性は要を得ないでいる。
「なんでも、サッツゥー国の“剣の女王”からの、お手紙を持参したんですって。」
説明を受けた青年が、
「成程、分かりました。」
「それでは、私が引き受けましょう。」
魔女と交代したのだった。
紫蓮たちは、3Fにある執務室に通された。
室内は、いささか薄暗いようだ。
大魔導師に違いないであろう男性が、黒色でアンティークなディスク席に腰掛けている。
オールバックの髪の毛や、眉に、長めの髭は、白い。
ウィザードローブは黒かった。
「ん??」
「その者らは、お前の新しい友人か?」
祖父に訊ねられた“タリアノ”が、
「いえ。」
「“剣の女王”さんの手紙を持って来たのだそうです。」
と、述べる。
これに、
「ほぉう。」
大魔導師の顔がほころんだ…。
老眼鏡を装着して、手紙を読み終えた大魔導師が、
「ふぅ~む。」
「成蔵に、清虎と、涼楓の、名まであるとは……、懐かしいのぉ。」
目を細める。
「ご存知なのですか?!」
涼音を筆頭に、他の三人も驚く。
「なんじゃ、誰からも聞いておらんのか??」
「やれやれ、困った連中じゃのぉ。」
大魔導師が眉間に軽くシワを寄せたものの、
「儂らは、10人組の冒険者だったのじゃよ。」
「2~3年に亘って諸国を回っていた頃、数人が実家を継ぐ鍛錬の為に帰省することになり、解散したが…、残りは、それぞれに別のパーティーを結成して、旅を続けたのじゃ。」
「しかし、まぁ、儂らにとっては、初めての仲間じゃったからのぉ……、各自、思い入れが強いんじゃろうて。」
「あれから数十年…、当時のメンバーの半分は南陸に、もう半分は西陸に、居を構えておる。」
表情を緩めたのであった―。
あのギルドを出た際に、
「西へ進もう。」
との意見もあったが、
「いや、それよりも先に、北上して、ペイニーが渡された書状を届けに行こう。」
と、紫蓮が皆を促したのである。
“剣の女王”の旧友だという[大魔導師]は、都の北に在る古城で暮らしているとの事だった。
なんでも、二十年ほど前に、先代の国主に功績を認められ、褒美として授与されたのだそうだ。
その城は、首都の北門から徒歩で一時間くらい掛かるらしい。
今日はもう夜になっているので、彼らは宿に泊まることに決めたのであった…。
翌日のPM14:00過ぎ――。
[ゴッド・スレイヤーズ]は、ゴシック調で四階建ての黒い城に到着していた。
ここには大魔導師や弟子などが生活しているとの事前情報だ。
城門付近に居た若い女性に、ペイニーが祖母からの紹介状の件を告げる。
ブラウンの“フード付きローブ”を纏っていた彼女の案内で、紫蓮らは、階段を上っていく。
サーヴァント達は、1Fのエントランスで待機させられている。
三階の廊下の十字路で、先頭のウィッチが、誰かしらに気付き、
「あ、タリアノ君!」
と声をかけた。
左の曲がり角で数人と喋っていた青年が、
「はい?」
振り返る。
身長は170㎝くらいだろう。
スラッとしており、金色の髪は、やや短めだ。
細長いメガネと、緑色の“フード付きローブ”を、身に着けていた。
「こちらの方々が、大魔導師様に用事があるそうよ。」
ウィッチの言葉に、
「はぁ、祖父にですか……。」
男性は要を得ないでいる。
「なんでも、サッツゥー国の“剣の女王”からの、お手紙を持参したんですって。」
説明を受けた青年が、
「成程、分かりました。」
「それでは、私が引き受けましょう。」
魔女と交代したのだった。
紫蓮たちは、3Fにある執務室に通された。
室内は、いささか薄暗いようだ。
大魔導師に違いないであろう男性が、黒色でアンティークなディスク席に腰掛けている。
オールバックの髪の毛や、眉に、長めの髭は、白い。
ウィザードローブは黒かった。
「ん??」
「その者らは、お前の新しい友人か?」
祖父に訊ねられた“タリアノ”が、
「いえ。」
「“剣の女王”さんの手紙を持って来たのだそうです。」
と、述べる。
これに、
「ほぉう。」
大魔導師の顔がほころんだ…。
老眼鏡を装着して、手紙を読み終えた大魔導師が、
「ふぅ~む。」
「成蔵に、清虎と、涼楓の、名まであるとは……、懐かしいのぉ。」
目を細める。
「ご存知なのですか?!」
涼音を筆頭に、他の三人も驚く。
「なんじゃ、誰からも聞いておらんのか??」
「やれやれ、困った連中じゃのぉ。」
大魔導師が眉間に軽くシワを寄せたものの、
「儂らは、10人組の冒険者だったのじゃよ。」
「2~3年に亘って諸国を回っていた頃、数人が実家を継ぐ鍛錬の為に帰省することになり、解散したが…、残りは、それぞれに別のパーティーを結成して、旅を続けたのじゃ。」
「しかし、まぁ、儂らにとっては、初めての仲間じゃったからのぉ……、各自、思い入れが強いんじゃろうて。」
「あれから数十年…、当時のメンバーの半分は南陸に、もう半分は西陸に、居を構えておる。」
表情を緩めたのであった―。
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