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― 第三章・南陸行路 ―
第92話 サッツゥーの忍びの里・中編
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門を開けた忍らの中から、一匹の“猿の獣人”が道案内してくれている。
道中、幾らからの“里の者”たちに遭遇したが、獣人と半獣ばかりだった。
どうやら、ここは、そういう場所らしい。
要は、“人間”がいないのである。
老若男女問わず。
里の中心には、丸太の作で囲まれている一際大きな屋敷があった。
玄関前で、
「申し訳ないが、サーヴァントの方々は、ここで待機していただきたい。」
“猿の獣人”が促す。
紫蓮ら4人で屋敷内に入って騒ぎが起きてしまった場合、窮地に立たされかねないので、不穏な空気が流れる。
だが、撫子が小声で、
「もし、何かあったら、私の忍術でサーヴァント達に連絡する故、大丈夫だろう。」
と、述べた事によって、彼らは意を決したようだ…。
屋敷で最も広い“板の間の部屋”に通されたところ、そこには先客が居たのである。
振り向いて紫蓮と目が合った“鷹の獣人”が、
「ん?」
「お主は…、総帥の近衛兵だった若武者か??」
と意外そうにした。
一方の紫蓮も、
「あんたは、隠密隊の、確か……、“信義”と呼ばれていた…。」
自身の記憶を辿ったのである。
左隣に座った紫蓮に対して、
「旅に出たとは聞いていたが、何故ここに?」
信義が訊ねた。
「ああ、“忍者マスター”の使者に付き添って来たんだが……、そちらは??」
紫蓮が説明する流れで聞いてみたところ、
「うむ。」
「総帥の所に、成蔵殿の使いが訪れて、協力を要請してきたのだが…、真偽の程を確かめるべく、俺がサッツゥーに派遣されたという訳だ。」
「なにせ、俺は、この里で生まれ育った身だからな。」
そのように返してきたのである。
紫蓮と信義が会話している間に、彼らの正面に座している“隼の獣人”に、猿の獣人が報告していた。
「分かった。」
「下がって良い。」
許しを得た猿の獣人が、
「は!」
と、お辞儀して、この場を去っていく。
「それでは、まず、忍者マスター殿からの書状を見せていただこう。」
「つい今しがた、信義から伝えられたので、おおよその内容は理解しておるが……。」
胡坐座りしている着物姿の“隼の獣人”は、身長が2.5Mぐらいありそうだ。
[頭領]に違いないであろう獣人に、撫子が手紙を差し出した。
「…………。」
目を通した頭領が、
「やはり、か…。」
と呟き、〝ふぅー〟と息を吐く。
「まず結論から告げよう。」
「イーガー国で問題を起こしたという賊どもは、この里とは関係ない。」
「……、考えられるのは二つ。」
「一つは、ここを辞めた“抜け忍”の可能性があること。」
「もう一つは…、我らの知らぬ忍び集団が新たに誕生しているのかもしれん。」
「どちらにしろ、“イーガーの忍”と“サッツゥーの忍”を潰し合わせたいのだろう。」
「南陸における“忍びの仕事”を独占するために。」
険しい表情になる頭領だった―。
道中、幾らからの“里の者”たちに遭遇したが、獣人と半獣ばかりだった。
どうやら、ここは、そういう場所らしい。
要は、“人間”がいないのである。
老若男女問わず。
里の中心には、丸太の作で囲まれている一際大きな屋敷があった。
玄関前で、
「申し訳ないが、サーヴァントの方々は、ここで待機していただきたい。」
“猿の獣人”が促す。
紫蓮ら4人で屋敷内に入って騒ぎが起きてしまった場合、窮地に立たされかねないので、不穏な空気が流れる。
だが、撫子が小声で、
「もし、何かあったら、私の忍術でサーヴァント達に連絡する故、大丈夫だろう。」
と、述べた事によって、彼らは意を決したようだ…。
屋敷で最も広い“板の間の部屋”に通されたところ、そこには先客が居たのである。
振り向いて紫蓮と目が合った“鷹の獣人”が、
「ん?」
「お主は…、総帥の近衛兵だった若武者か??」
と意外そうにした。
一方の紫蓮も、
「あんたは、隠密隊の、確か……、“信義”と呼ばれていた…。」
自身の記憶を辿ったのである。
左隣に座った紫蓮に対して、
「旅に出たとは聞いていたが、何故ここに?」
信義が訊ねた。
「ああ、“忍者マスター”の使者に付き添って来たんだが……、そちらは??」
紫蓮が説明する流れで聞いてみたところ、
「うむ。」
「総帥の所に、成蔵殿の使いが訪れて、協力を要請してきたのだが…、真偽の程を確かめるべく、俺がサッツゥーに派遣されたという訳だ。」
「なにせ、俺は、この里で生まれ育った身だからな。」
そのように返してきたのである。
紫蓮と信義が会話している間に、彼らの正面に座している“隼の獣人”に、猿の獣人が報告していた。
「分かった。」
「下がって良い。」
許しを得た猿の獣人が、
「は!」
と、お辞儀して、この場を去っていく。
「それでは、まず、忍者マスター殿からの書状を見せていただこう。」
「つい今しがた、信義から伝えられたので、おおよその内容は理解しておるが……。」
胡坐座りしている着物姿の“隼の獣人”は、身長が2.5Mぐらいありそうだ。
[頭領]に違いないであろう獣人に、撫子が手紙を差し出した。
「…………。」
目を通した頭領が、
「やはり、か…。」
と呟き、〝ふぅー〟と息を吐く。
「まず結論から告げよう。」
「イーガー国で問題を起こしたという賊どもは、この里とは関係ない。」
「……、考えられるのは二つ。」
「一つは、ここを辞めた“抜け忍”の可能性があること。」
「もう一つは…、我らの知らぬ忍び集団が新たに誕生しているのかもしれん。」
「どちらにしろ、“イーガーの忍”と“サッツゥーの忍”を潰し合わせたいのだろう。」
「南陸における“忍びの仕事”を独占するために。」
険しい表情になる頭領だった―。
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