GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第三章・南陸行路 ―

第88話 サッツゥー国

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[GOD SLAYER’Sゴッド・スレイヤーズ]が、トゥーサー国の都を出立して二カ月近くが経っている。

この間に、紫蓮しれんは、16歳になっていた。

撫子なでしこは夏に、涼音すずねは秋に、誕生日を迎えるのだそうだ。

いずれにせよ、ここまでの旅路は順調だった。

たまに現れる賊や魔物を余裕で蹴散らし、もうじき[サッツゥー国]の首都に到着しようとしている。


季節は、すっかり、春となっていた。

肩あたりまで伸びた髪を後ろで縛っている紫蓮は、ブラウンのブーツ/ブラックのパンツ/ブルーのワイシャツ姿だ。

撫子は羽織を脱いで“忍び装束”に、涼音は“巫女装束”となっている。

サーヴァントらも、コートや背広を脱いでいた。

そんな一行が、東門から“サッツゥーの都”に入っていく…。


皆で大通りを歩きつつ、

「それで? 撫子。」
「ここの“しのび”は、首都の何処に拠点を構えているのですか?」

涼音の質問に、

「ん?」
「あ、いや、“サッツゥーの忍”は、都から南西に徒歩で半日ほどの位置に里を設け、そこで暮らしているのだそうだ。」
「なので、南か西の門を抜けて、里に向かおうと思っている。」

撫子が答えた。

「じゃあ、どっかで昼飯にして、ギルドを見付けるか。」

紫蓮の提案に、誰もが賛成したのである。


お昼には未だ少し早いからだろう、彼らが選んだ広めの食堂は、やや閑散としていた。

料理や飲み物を、男女問わず従業員が、入れ代わり立ち代わりで運んでくる。

その一人に、良い頃合いで、

「すまない、ちょっといいか?」
「ギルドについて聞きたいんだが……。」

紫蓮が声を掛け、

「あ、はい。」
「どのような内容でしょう?」

彼らと同じくらいの年齢の女性が対応していく。

涼音の、

「“つるぎの女王”との異名を持つ方がギルド長を務めていらっしゃる所なのですが、ご存知でしょうか?」

との問い掛けに、

「ああー、それでしたら、首都の中央に在りますよ。」

女性従業員が笑顔で教えてくれたのである…。


日暮れ時。

紫蓮たちは、中央広場に来ていた。

この南東には、城が建っている。

目当てのギルドは、その反対側の北西に存在していた。

何故、彼らが赴いたかと言うと、[トゥーサーの大巫女おおみこ]が、孫娘である涼音に渡しておいた書状を、届けるためだ。

紫蓮たちは、受付で5分ぐらい待たされている。

窓口に戻ってきた30代後半で“兎の半獣”である女性に、

「申し訳ございません。」
「本日の面会は無理との事です。」
「ですが、〝明朝の10時であれば会える〟そうなので、改めて、お越しください。」

と、伝えられた。

「ふむ。」
「では、出直すしかあるまい。」

撫子の意見に、

「そうですね……。」

涼音が頷き、

「取り敢えず、大きめの宿を探すとするか。」

紫蓮が促す。

「それでしたら、ここから北へ2~3分の場所にありますよ。」

担当窓口の勧めで、そこに行ってみることにした紫蓮たちだった―。
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