GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第三章・南陸行路 ―

第87話 撫子と涼音の背景

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道すがら、紫蓮しれんらは、いろんな話しをした。

それぞれの生い立ちや現状などを……。


例えば、紫蓮と同じ年齢の撫子なでしこは、孤児なのだという。

七年ほど前に天涯孤独の身となったものの、イーガーの現国主夫妻に養女として引き取られたのだそうだ。

その頃は未だ、[忍者マスター]こと“成蔵せいぞう”が国主だったらしいが…。

イーガーは“忍びの国”であるが故、任務で命を落とす者たちもいる。

彼ら彼女らの忘れ形見であり、親戚などの身寄りがない子供を引き取ってくれたのが、現国主の奥方なのだそうだ。

この国主夫婦には、実子が一人いて、それ以外に九人の養子が存在している。

撫子はそのなかの一人との事だ。

今から約一年前、“忍者マスター”が現役を退き、息子に国主の座を譲った際に、城から少し離れた別邸で暮らすようになり、二十人のしのびが警備に選ばれた。

そのメンバーには、撫子であったり、現国主夫妻に育てられた子らの半数くらいが含まれている。

他の子どもは、まだ10歳前後なので、城で生活しているらしい。

二人の実の息子は18歳だが、跡継ぎなので、親元にいるそうだ。

しかし、此度の侵入事件を重く見て、逃走した犯人どもを捜すべく、彼もまた国を発ったとのことである。

[サッツゥー国]には、この子息が赴く予定だったが、〝次代の跡取りを危険にさらす訳にはいかない〟と撫子が主張して、再三に亘って説得し、役目を変わったらしい。

もし、あの侵入者らが、本当に“サッツゥーの忍”であった場合、これを放った棟梁に面会するなり殺されかねないので。

そこで、実子であれ、養子や養女であれ、我が孫として分け隔てなく接してくれていた成蔵が、撫子を案じて書状をしたため、かつての冒険仲間である[トゥーサーの大巫女おおみこ]に協力を仰いだとの事だ。

まさか、断られるとは思いもよらなかったが……。

彼女としても、自分の身内を危ない目に遭わせたくなかったのだろう。

それでも、孫の一人である涼音すずねを伴わせてくれたのだから、撫子にとっても文句はない。

更には、[ヒーゴンの侍王]に仕えていたという紫蓮にも出会えて、パーティーを組めたのは、嬉しい誤算である。

戦力が増えたのだから。


一方の涼音はというと…。

本人が12歳の頃に、[ヒューガー国]の要請を受けたトゥーサーの国主が、援軍を送ったことがある。

ヒューガー国を制圧すべく南下して来た[南陸なんりく第十二神国しんこく]を撃退すべく。

この時に、御宮おみやからも、それなりの数を送り出した。

その部隊を率いたのが、涼音たち姉妹の母親の婿養子、すなわち、父親である。

だが、彼は、帰らぬ人になってしまったのだそうだ。

神に殺された事によって。

これ以来、涼音は、神々を討つ事を、秘かに誓っていたらしい。

大巫女は、娘婿を始めとして命を落とした者らに胸を痛め、他国のいざこざには関わらぬよう決めたとのことである。

御宮の関係者を守る為に。

懐かしき戦友である“忍者マスター”の頼みに、当初は首を縦に振らなかったのは、そのような内情があったからだ。

だが、自分の娘を促し、旅立ちを許可させてくれた祖母に、涼音は感謝している。

ちなみに、涼音は、紫蓮と撫子の一つ年上であった。


紫蓮も、神々を倒したい理由や、これまでの出来事を、語っていったのである―。
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