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― 第三章・南陸行路 ―
第79話 伴いて
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来夢と権蔵も含めて、装備を解いた紫蓮が、野晒しで積まれている武器や防具に視線を送りながら、
「お前が倒した連中って、どうしたんだ?」
「遺体が見受けられないってことは…、喰ったのか??」
と、黒ミノタウロスこと“夜摩”に問う。
黒龍である“新羅”が間に入り通訳したところ、
〝某は人肉を食しません〟
〝命懸けで戦った者たちの亡骸は、敬意を込めて、埋葬しました〟
との事だった。
「へぇー…、感心だな。」
少なからず意外そうな紫蓮が、
「そもそも、お前は何で、この森に居座ったんだ?」
新たに聞いてみたら、
〝たまたま、森林を通過しようとしたところ、人間たちとの戦闘になりました〟
〝その際に傷を負い、癒えるまで休んでいたら、次々に人や獣人などが襲ってきたのです〟
〝割と回復したので、ここから発とうかと思案していたところに、主君たちが現れ、今に至ります〟
と説明したのである。
「そうか…、分かった。」
「じゃあ、ギルドに報告するから、ちょっと待ってろ。」
皆に伝える紫蓮であった。
来た道を戻っている最中に、白虎たる“美麗”が、
〝赤きミノタウロスを知らぬか?〟
と、夜摩に訊ねた。
夜摩は、
〝さて?〟
〝おそらく亜種であろうが…、某は初耳である〟
と答えたようだ。
ちなみに、この二体は、直接的に会話が成立している。
紫蓮たちには、当然、新羅が通訳してくれたのだった。
森を抜けて、紫蓮が、テント(ゲル)を出現させた。
「これも買い替えねぇとな。」
「流石に、夜摩と美麗までは、入れないだろうから。」
いささか困りながら、右手で後頭部を〝ポリポリ〟と掻く紫蓮に、
「夜摩と美麗は、外で構わんそうじゃ。」
「我が、この者らと一緒に居ろうぞ。」
「何かあった際、己に伝言せねばならんじゃろうからのぉう。」
新羅が述べる。
「……、そうするか。」
同意した後に、
「依頼主が到着するのは、明日になるみたいだから、それまで、ゆっくりしよう。」
と、促す紫蓮であった。
翌日となり、昼食を済ませた頃に、一台の馬車と、それを護衛する10人ぐらいの兵士が、やって来た。
停まった馬車から降りてきたのは、緑色を基調とした貴族の衣服を着た50代前半の男性である。
身長は175㎝くらいで、鼻の下に髭を生やし、髪の毛をオールバックにしていた。
「都市の最高責任者の使いとして、城から罷り越した。」
「……、う~む。」
「ギルドからの連絡にあったとおり、本当にミノタウロスをサーヴァントにしたとは…。」
驚きを隠せない相手に、
「まずかったか?」
紫蓮が確認する。
「いや、森林から追い払ってくれたことになるから、問題はない。」
使者が答えたところ、
「それじゃあ、あれを持って行ってくれ。」
紫蓮が右側の方を指差した。
彼から、やや離れた位置に、幾つもの装備品が山積みになっている。
「はて??」
男性は首を傾げるも、
「ミノタウロスに挑んで、この世を去った連中の遺品だ。」
「遺体は、このミノタウロスが、森の中央に埋めたらしい。」
紫蓮の言葉に、
「なんと!?」
「俄かには信じられんが…、傷み入る。」
「何から何まで、かたじけない。」
頭を下げた。
兵士らのリーダー格が、装備品を[亜空間]に格納していく。
街に帰ったら、遺族を訪問して、手渡していくらしい。
紫蓮は、報酬の“金貨250枚”を受け取った。
今回のクエストは、城塞都市の行政が発行していたのである。
馬車に乗った使いの者が、
「それでは、これにて。」
と、会釈し、
「ああ。」
紫蓮が頷いた。
使者を見送り、
「よし、俺たちも出発しよう。」
と述べた紫蓮に、
「一気に首都を目指しますか?」
権蔵が窺う。
「いや、東に向かいつつ、どこかの街に寄ろうと思っている。」
「魔鉱石を売ったり、いろいろと購入しておきたいからな。」
そのように告げる紫蓮だった―。
「お前が倒した連中って、どうしたんだ?」
「遺体が見受けられないってことは…、喰ったのか??」
と、黒ミノタウロスこと“夜摩”に問う。
黒龍である“新羅”が間に入り通訳したところ、
〝某は人肉を食しません〟
〝命懸けで戦った者たちの亡骸は、敬意を込めて、埋葬しました〟
との事だった。
「へぇー…、感心だな。」
少なからず意外そうな紫蓮が、
「そもそも、お前は何で、この森に居座ったんだ?」
新たに聞いてみたら、
〝たまたま、森林を通過しようとしたところ、人間たちとの戦闘になりました〟
〝その際に傷を負い、癒えるまで休んでいたら、次々に人や獣人などが襲ってきたのです〟
〝割と回復したので、ここから発とうかと思案していたところに、主君たちが現れ、今に至ります〟
と説明したのである。
「そうか…、分かった。」
「じゃあ、ギルドに報告するから、ちょっと待ってろ。」
皆に伝える紫蓮であった。
来た道を戻っている最中に、白虎たる“美麗”が、
〝赤きミノタウロスを知らぬか?〟
と、夜摩に訊ねた。
夜摩は、
〝さて?〟
〝おそらく亜種であろうが…、某は初耳である〟
と答えたようだ。
ちなみに、この二体は、直接的に会話が成立している。
紫蓮たちには、当然、新羅が通訳してくれたのだった。
森を抜けて、紫蓮が、テント(ゲル)を出現させた。
「これも買い替えねぇとな。」
「流石に、夜摩と美麗までは、入れないだろうから。」
いささか困りながら、右手で後頭部を〝ポリポリ〟と掻く紫蓮に、
「夜摩と美麗は、外で構わんそうじゃ。」
「我が、この者らと一緒に居ろうぞ。」
「何かあった際、己に伝言せねばならんじゃろうからのぉう。」
新羅が述べる。
「……、そうするか。」
同意した後に、
「依頼主が到着するのは、明日になるみたいだから、それまで、ゆっくりしよう。」
と、促す紫蓮であった。
翌日となり、昼食を済ませた頃に、一台の馬車と、それを護衛する10人ぐらいの兵士が、やって来た。
停まった馬車から降りてきたのは、緑色を基調とした貴族の衣服を着た50代前半の男性である。
身長は175㎝くらいで、鼻の下に髭を生やし、髪の毛をオールバックにしていた。
「都市の最高責任者の使いとして、城から罷り越した。」
「……、う~む。」
「ギルドからの連絡にあったとおり、本当にミノタウロスをサーヴァントにしたとは…。」
驚きを隠せない相手に、
「まずかったか?」
紫蓮が確認する。
「いや、森林から追い払ってくれたことになるから、問題はない。」
使者が答えたところ、
「それじゃあ、あれを持って行ってくれ。」
紫蓮が右側の方を指差した。
彼から、やや離れた位置に、幾つもの装備品が山積みになっている。
「はて??」
男性は首を傾げるも、
「ミノタウロスに挑んで、この世を去った連中の遺品だ。」
「遺体は、このミノタウロスが、森の中央に埋めたらしい。」
紫蓮の言葉に、
「なんと!?」
「俄かには信じられんが…、傷み入る。」
「何から何まで、かたじけない。」
頭を下げた。
兵士らのリーダー格が、装備品を[亜空間]に格納していく。
街に帰ったら、遺族を訪問して、手渡していくらしい。
紫蓮は、報酬の“金貨250枚”を受け取った。
今回のクエストは、城塞都市の行政が発行していたのである。
馬車に乗った使いの者が、
「それでは、これにて。」
と、会釈し、
「ああ。」
紫蓮が頷いた。
使者を見送り、
「よし、俺たちも出発しよう。」
と述べた紫蓮に、
「一気に首都を目指しますか?」
権蔵が窺う。
「いや、東に向かいつつ、どこかの街に寄ろうと思っている。」
「魔鉱石を売ったり、いろいろと購入しておきたいからな。」
そのように告げる紫蓮だった―。
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