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― 第三章・南陸行路 ―
第76話 ミノタウロス討伐戦・前編
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紫蓮らは、森林の北西に足を踏み入れていた。
前進しながら周囲を見回した来夢が、
「なんか、いろいろ、居る、みたい。」
と告げる。
「そうなのか?」
窺う紫蓮に、
「はい。」
「魔物か、動物かは、分かりませんが、こちらを観察しているようです。」
権蔵が述べた。
「襲ってきそうか?」
紫蓮が質問したところ、
「それは、ない。」
「多分、きっと…。」
来夢が返したのである。
「確かに……、距離を詰めてこようとはしませんね。」
「おそらく、戦いにはならないでしょう。」
そのような見解を示したのは、権蔵だ。
「ふぅむ。」
「我らが、ミノタウロスを倒せるか期待しておるのか、或いは…、どうせ敗れるであろうと哀れんでいるのやもしれんのぉ。」
新羅の言葉を受けて、
「どうであれ、体力やスキルを温存できるのであれば、それに越したことはない。」
「このまま、行こう。」
無駄な戦闘を避けるよう皆に促す紫蓮であった…。
昼食を済ませた紫蓮たちは、森のなか奥深くまで来ていた。
彼らが森林に入ってから四時間ほどが経過している。
現在は、PM14:00くらいだろう。
割と歩いた紫蓮たちの眼前が、突然、開けた。
森の中心部に違いない。
そこに、戦士用と思われる“青銅の鎧”を装着した[黒いミノタウロス]が胡坐座りしている。
背丈は推定で3Mぐらいだろう。
腕を組んで両目を閉じている“黒牛”の右側の地面には、片刃のバトルアックスが置かれていた。
更には、ミノタウロスの左斜め後ろに、様々な武器や防具が無造作に積まれている。
おそらく、この牛に挑んで敗れ去った者らが所持していたのだろう。
紫蓮たちは、木々に隠れつつ、注視している。
「アイツだな。」
紫蓮が呟いたら、
「グ、ガガ、グゥ~、ガ、ググゥ~。」
白虎が何やら言い出した。
それを、
「ふむ?」
「この虎が追っているのは、あ奴ではないそうじゃ。」
「なんでも、竹林を荒らしたミノタウロスは、全身の体毛が赤かったらしい。」
新羅が通訳したのである。
「そうなのか?!」
振り向いた紫蓮に、白い虎が頷く流れで、
「ガァ、グガァ~、グ、ググ、ガ、ガガァ~。」
と、発した。
「まぁ、それでも、〝ここまで来たのだから、共に戦う〟そうじゃ。」
新羅が伝える。
「そうか…。」
「じゃあ、お前の仇は、今後、一緒に探してやるよ。」
紫蓮が、そのように告げたところ、
「グガグゥ~。」
虎が頭を下げて感謝した。
紫蓮・来夢・権蔵が、装備を変更したようだ。
「……よし。」
「突撃!」
紫蓮の合図に、誰もが飛び出す。
「!!」
目を見開いた[黒いミノタウロス]が、バトルアックスを掴みながら立ち上がり、
ヴオオオオ――ッ!!
と吼えた。
少なからず大気が〝ビリビリィッ!〟と震える。
「くッ!」
これによって、紫蓮たちの動きが止まってしまったのだった―。
前進しながら周囲を見回した来夢が、
「なんか、いろいろ、居る、みたい。」
と告げる。
「そうなのか?」
窺う紫蓮に、
「はい。」
「魔物か、動物かは、分かりませんが、こちらを観察しているようです。」
権蔵が述べた。
「襲ってきそうか?」
紫蓮が質問したところ、
「それは、ない。」
「多分、きっと…。」
来夢が返したのである。
「確かに……、距離を詰めてこようとはしませんね。」
「おそらく、戦いにはならないでしょう。」
そのような見解を示したのは、権蔵だ。
「ふぅむ。」
「我らが、ミノタウロスを倒せるか期待しておるのか、或いは…、どうせ敗れるであろうと哀れんでいるのやもしれんのぉ。」
新羅の言葉を受けて、
「どうであれ、体力やスキルを温存できるのであれば、それに越したことはない。」
「このまま、行こう。」
無駄な戦闘を避けるよう皆に促す紫蓮であった…。
昼食を済ませた紫蓮たちは、森のなか奥深くまで来ていた。
彼らが森林に入ってから四時間ほどが経過している。
現在は、PM14:00くらいだろう。
割と歩いた紫蓮たちの眼前が、突然、開けた。
森の中心部に違いない。
そこに、戦士用と思われる“青銅の鎧”を装着した[黒いミノタウロス]が胡坐座りしている。
背丈は推定で3Mぐらいだろう。
腕を組んで両目を閉じている“黒牛”の右側の地面には、片刃のバトルアックスが置かれていた。
更には、ミノタウロスの左斜め後ろに、様々な武器や防具が無造作に積まれている。
おそらく、この牛に挑んで敗れ去った者らが所持していたのだろう。
紫蓮たちは、木々に隠れつつ、注視している。
「アイツだな。」
紫蓮が呟いたら、
「グ、ガガ、グゥ~、ガ、ググゥ~。」
白虎が何やら言い出した。
それを、
「ふむ?」
「この虎が追っているのは、あ奴ではないそうじゃ。」
「なんでも、竹林を荒らしたミノタウロスは、全身の体毛が赤かったらしい。」
新羅が通訳したのである。
「そうなのか?!」
振り向いた紫蓮に、白い虎が頷く流れで、
「ガァ、グガァ~、グ、ググ、ガ、ガガァ~。」
と、発した。
「まぁ、それでも、〝ここまで来たのだから、共に戦う〟そうじゃ。」
新羅が伝える。
「そうか…。」
「じゃあ、お前の仇は、今後、一緒に探してやるよ。」
紫蓮が、そのように告げたところ、
「グガグゥ~。」
虎が頭を下げて感謝した。
紫蓮・来夢・権蔵が、装備を変更したようだ。
「……よし。」
「突撃!」
紫蓮の合図に、誰もが飛び出す。
「!!」
目を見開いた[黒いミノタウロス]が、バトルアックスを掴みながら立ち上がり、
ヴオオオオ――ッ!!
と吼えた。
少なからず大気が〝ビリビリィッ!〟と震える。
「くッ!」
これによって、紫蓮たちの動きが止まってしまったのだった―。
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