75 / 303
― 第三章・南陸行路 ―
第75話 協同
しおりを挟む
翌朝、紫蓮たちは、城塞都市から南東へと向かっていた。
ミノタウロスに占拠されたという森林までは、徒歩で一日ぐらい掛かるらしい。
その途中で、何度か魔物らとの戦闘になり、合計で約20体を倒したようだ。
夕暮れ時になり、紫蓮は野宿するとこに決めた。
テント(ゲル)を張って、焚火を起こし、干し肉をサーヴァント達に配る。
これを受け取った来夢と権蔵が、〝ピクッ〟と反応を示し、南西の方角に視線を送った。
「何か、来る。」
来夢の発言に、
「敵か?」
「数は??」
紫蓮が訊ねたところ、
「人間か、人外かは、分かりませんが、一つのみです。」
権蔵が述べたのである。
ゆったりとした足取りで、彼らの前に現れたのは、気品漂う、青い瞳の“白虎”であった。
全長は、新羅と同じ2.5Mくらいだろう。
紫蓮が刀の柄に手を掛けたら、〝ピタッ〟と止まった白い虎が、
「グゥ~、ガ、ガ、ガウッ、ガ、ググゥ~ッ」
と、唸ったのである。
(威嚇か??)
そう思った紫蓮に、宙に浮いている新羅が、
「ふむ。」
「〝ここら辺で、ミノタウロスを見なかったか?〟と聞いておる。」
と通訳した。
「分かるのか?」
紫蓮が、いささか目を丸くし、
「しつこいようじゃが…、龍族は知能が高いからの。」
新羅が微笑んだ。
〝森林のミノタウロスを討伐しに行く〟ことを、紫蓮が告げる。
この虎は、どうやら人間の言葉を理解できるらしく、
「ガガッ、ガッ、グゥ~、ガ、ガウッ。」
と、返してきた。
それを、
「同行を願っておるようじゃ。」
新羅が解説する。
こんな感じで、白虎の話しを聞いていったところ…、なんでも、二週間ほど前に、住処にしていた竹林を、一頭のミノタウロスに荒らされてしまったらしい。
[オゥスミ―国]の南方領土に在るという竹林には、白い虎以外に、幾らかのモンスターと動物が住んでいたものの、半数近くが命を奪われてしまったそうだ。
また、多くの竹が破損しているとも…。
いずれにせよ、この虎は、仇を討つべく、オゥスミ―からトゥーサーに渡ってきて、ミノタウロスを探しているとの事だった。
「成程…。」
「俺たちは、明日の朝に出発する。」
「取りあえず、腹が減ってんなら、一緒に飯を食うといい。」
「干し肉でも良ければ、だがな。」
促した紫蓮に、
「ガガ、グ、ガウ~ッ。」
白虎が頭を下げ、
「〝かたじけない〟と申しておるぞ。」
新羅が訳す。
「ところで……、お前の性別は?」
紫蓮が窺い、
「グガッ。」
白い虎が答え、
「“メス”のようじゃな。」
新羅が伝えたのであった―。
ミノタウロスに占拠されたという森林までは、徒歩で一日ぐらい掛かるらしい。
その途中で、何度か魔物らとの戦闘になり、合計で約20体を倒したようだ。
夕暮れ時になり、紫蓮は野宿するとこに決めた。
テント(ゲル)を張って、焚火を起こし、干し肉をサーヴァント達に配る。
これを受け取った来夢と権蔵が、〝ピクッ〟と反応を示し、南西の方角に視線を送った。
「何か、来る。」
来夢の発言に、
「敵か?」
「数は??」
紫蓮が訊ねたところ、
「人間か、人外かは、分かりませんが、一つのみです。」
権蔵が述べたのである。
ゆったりとした足取りで、彼らの前に現れたのは、気品漂う、青い瞳の“白虎”であった。
全長は、新羅と同じ2.5Mくらいだろう。
紫蓮が刀の柄に手を掛けたら、〝ピタッ〟と止まった白い虎が、
「グゥ~、ガ、ガ、ガウッ、ガ、ググゥ~ッ」
と、唸ったのである。
(威嚇か??)
そう思った紫蓮に、宙に浮いている新羅が、
「ふむ。」
「〝ここら辺で、ミノタウロスを見なかったか?〟と聞いておる。」
と通訳した。
「分かるのか?」
紫蓮が、いささか目を丸くし、
「しつこいようじゃが…、龍族は知能が高いからの。」
新羅が微笑んだ。
〝森林のミノタウロスを討伐しに行く〟ことを、紫蓮が告げる。
この虎は、どうやら人間の言葉を理解できるらしく、
「ガガッ、ガッ、グゥ~、ガ、ガウッ。」
と、返してきた。
それを、
「同行を願っておるようじゃ。」
新羅が解説する。
こんな感じで、白虎の話しを聞いていったところ…、なんでも、二週間ほど前に、住処にしていた竹林を、一頭のミノタウロスに荒らされてしまったらしい。
[オゥスミ―国]の南方領土に在るという竹林には、白い虎以外に、幾らかのモンスターと動物が住んでいたものの、半数近くが命を奪われてしまったそうだ。
また、多くの竹が破損しているとも…。
いずれにせよ、この虎は、仇を討つべく、オゥスミ―からトゥーサーに渡ってきて、ミノタウロスを探しているとの事だった。
「成程…。」
「俺たちは、明日の朝に出発する。」
「取りあえず、腹が減ってんなら、一緒に飯を食うといい。」
「干し肉でも良ければ、だがな。」
促した紫蓮に、
「ガガ、グ、ガウ~ッ。」
白虎が頭を下げ、
「〝かたじけない〟と申しておるぞ。」
新羅が訳す。
「ところで……、お前の性別は?」
紫蓮が窺い、
「グガッ。」
白い虎が答え、
「“メス”のようじゃな。」
新羅が伝えたのであった―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる