64 / 300
― 第二章・それぞれの成長 ―
第64話 堂々と
しおりを挟む
「して?」
「“神次”が、敵の拠点に何用じゃ?」
侍王の質問に、
「この国を終わらせに来ました。」
「いえ、新たに始めるべく伺ったと、言うべきでしょうか…。」
宮廷魔術師である初老の男が答えた。
「それは、どういう意味かしら?」
幸が怪訝そうにする。
「“南陸第十神国”の王は、周囲の国々に援軍を要請するようにと私に命令しました。」
「しかしながら、私に、その気はございません。」
「なにせ、連戦連敗ですからな…、民心は既に離れ、ヒーゴン軍の完全勝利を願っている者たちが多いようでございます。」
「ならば、それが成就するよう少しでも助力すべく、罷り越した次第です。」
そう述べた男性に、晴清が、
「何が狙いです?」
との疑問を呈した。
「そのようなものはございません。」
「ただ単に、ここらが潮時かと思いましたので、私は、これを機に隠居いたします。」
「……、この地位を得るのにも、守り抜くのにも、いろいろと手を汚してきましたから、どこかの山に籠りて、我が私利私欲で葬ってきた人々を供養していくことに決めました。」
「残りの生涯。」
「なので、引き際ぐらいは真っ当な事をしようと、そう考えたのでございます。」
神次の発言に、
「ふむ…。」
清虎が自身の顎髭を右手で擦りながら、
「それで?」
「如何にして、貢献するつもりじゃ?」
と、訊ねる。
「は。」
「現在、神は、護衛も付けず“玉座の間”におります。」
「そこに、私が、皆さまを“瞬間移動”させようかと…。」
この提案に、幸が、
「罠では?」
と警戒を強めた。
だが、
「滅相もございません。」
「もし仮に、そうであったならば、私の首を即座に刎ねてもらって構いませぬ。」
宮廷魔術師の死を覚悟した表情に、
「よかろう、そなたを信じよう。」
「じゃが、納得いかん者らもおるじゃろうから、執行人を側に置かせてもらうぞ。」
「嘘だった場合、すぐに斬り捨てられるように。」
と、総帥が告げる。
それを受けて、
「はい。」
「承諾いたします。」
頭を下げる初老の男だった…。
侍王は、自分の一族と、近衛兵を、連れて行く事にしたようだ。
他には、相手が騙していたときに備え、“影”が伴うことになっている。
当初、清虎は、“影”と二人で乗り込もうとしていたが、晴清や幸など、周りから猛反対されて、そういった運びになったらしい。
また、神次によれば、城内には、庭園と建物を合わせて一万ほどの兵が待機しているため、〝騒ぎを知れば、玉座の間に駆け付けて来るに違いない〟との話しだった。
「その際に対応する戦力が必要でしょう。」
との晴清の説得もあって、総帥が折れたようだ。
そういう流れがあり、彼らは、宮廷魔術師の【瞬間移動】で、[玉座の間]へと渡ったのである。
豪胆にも―。
「“神次”が、敵の拠点に何用じゃ?」
侍王の質問に、
「この国を終わらせに来ました。」
「いえ、新たに始めるべく伺ったと、言うべきでしょうか…。」
宮廷魔術師である初老の男が答えた。
「それは、どういう意味かしら?」
幸が怪訝そうにする。
「“南陸第十神国”の王は、周囲の国々に援軍を要請するようにと私に命令しました。」
「しかしながら、私に、その気はございません。」
「なにせ、連戦連敗ですからな…、民心は既に離れ、ヒーゴン軍の完全勝利を願っている者たちが多いようでございます。」
「ならば、それが成就するよう少しでも助力すべく、罷り越した次第です。」
そう述べた男性に、晴清が、
「何が狙いです?」
との疑問を呈した。
「そのようなものはございません。」
「ただ単に、ここらが潮時かと思いましたので、私は、これを機に隠居いたします。」
「……、この地位を得るのにも、守り抜くのにも、いろいろと手を汚してきましたから、どこかの山に籠りて、我が私利私欲で葬ってきた人々を供養していくことに決めました。」
「残りの生涯。」
「なので、引き際ぐらいは真っ当な事をしようと、そう考えたのでございます。」
神次の発言に、
「ふむ…。」
清虎が自身の顎髭を右手で擦りながら、
「それで?」
「如何にして、貢献するつもりじゃ?」
と、訊ねる。
「は。」
「現在、神は、護衛も付けず“玉座の間”におります。」
「そこに、私が、皆さまを“瞬間移動”させようかと…。」
この提案に、幸が、
「罠では?」
と警戒を強めた。
だが、
「滅相もございません。」
「もし仮に、そうであったならば、私の首を即座に刎ねてもらって構いませぬ。」
宮廷魔術師の死を覚悟した表情に、
「よかろう、そなたを信じよう。」
「じゃが、納得いかん者らもおるじゃろうから、執行人を側に置かせてもらうぞ。」
「嘘だった場合、すぐに斬り捨てられるように。」
と、総帥が告げる。
それを受けて、
「はい。」
「承諾いたします。」
頭を下げる初老の男だった…。
侍王は、自分の一族と、近衛兵を、連れて行く事にしたようだ。
他には、相手が騙していたときに備え、“影”が伴うことになっている。
当初、清虎は、“影”と二人で乗り込もうとしていたが、晴清や幸など、周りから猛反対されて、そういった運びになったらしい。
また、神次によれば、城内には、庭園と建物を合わせて一万ほどの兵が待機しているため、〝騒ぎを知れば、玉座の間に駆け付けて来るに違いない〟との話しだった。
「その際に対応する戦力が必要でしょう。」
との晴清の説得もあって、総帥が折れたようだ。
そういう流れがあり、彼らは、宮廷魔術師の【瞬間移動】で、[玉座の間]へと渡ったのである。
豪胆にも―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
双子の姉妹は無双仕様
satomi
ファンタジー
双子の姉妹であるルカ=フォレストとルリ=フォレストは文武両道というか他の人の2~3倍なんでもできる。周りはその事実を知らずに彼女たちを貶めようと画策するが……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる