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― 第二章・それぞれの成長 ―
第63話 三者三様の
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「あっちも、片が付いたようじゃのぉ。」
総帥が左斜め前の方角に視線を送っている。
ヒーゴン軍の老将である【騎士】たちと、“隠密隊”の100名が、残る二柱を討ち取ったようだ。
敵兵の多くが恐れをなして、散り散りに逃げていく。
一方で、その場に踏みとどまり、徹底抗戦の構えを見せている気骨ある者らもいる。
「さて…、どう動きますかね?」
「むこうの親玉は。」
セルグの質問に、
「よほどの馬鹿でなければ、ここでの激突は、一旦、避けて、自分の城に立て籠り、援軍を待つじゃろうな。」
清虎が答えた。
その予想通り、[南陸第十神国]の王が、全軍を退却させ始めたのである。
「追わずともよい!」
「戦後処理に掛かれぇ!」
侍王の指示が、ヒーゴン軍の隅々まで伝えられていく…。
王城にて。
[玉座の間]に在る豪華な椅子に腰掛けた神が、側に控えている初老の男に、
「東と西、それから北の神国に、我が名で応援を要請せよ!」
と、命令した。
これを受けた男性は、黒マントのフードを被っている。
おそらく、“宮廷魔術師”であろう。
「はッ!」
頭を下げた男は、何かしら考えている顔つきになったが、王たる一柱には表情を窺うことが出来なかった。
現在――。
この王都に設置されている東西南北の門前に、ヒーゴン軍が布陣している。
南側の野営場では、紫蓮たち“近衛兵”が、いつものように訓練しているみたいだ。
そこには、幸の長女である幸彩に、晴清の息子たち晴虎&清斗の姿もあった。
ちなみに、来夢と権蔵は、サイズの合う軍服やブーツを支給してもらったようだ。
すぐ近くの、軍議用のテント(ゲル)には、主だった面子が揃い踏みしている。
「調査の結果、都にいる軍勢は15万ほどのようです。」
「他は、どこかしらに避難したのでしょう。」
そう告げた“影”に、
「うむ。」
頷いた総帥が、
「こちらの死者は、3万前後じゃったな。」
と確認した。
これに、
「はい。」
「ヒーゴン軍は、およそ42万となっています。」
晴清が述べたのである。
「力責めで陥とすのは可能じゃが、民衆が巻き添えになる故、それは愚策じゃのぉう。」
「かと言って、兵糧が尽きるのを待っている間に敵の援軍が到着すれば、挟み撃ちにされてしまおう…。」
「となれば、翼や羽を有している者らが上空で撹乱している隙に、隠密隊を城に潜入させるか。」
「いや…、敵の王が、どれぐらい強いかまでは分からんから、危険やもな。」
清虎が黙って考え込んでいったところ、表から、
「失礼します!」
「総帥に、お目通りを願っている者がいます。」
との声が聞こえてきた。
「誰じゃ?」
訊ねた侍王に、
「は、なんでも、南陸第十神国の“神次”だそうでございます。」
一兵卒が返す。
テント内がザワつくも、
「よかろう、なかに入れよ。」
と、清虎が許可したのである。
出入口を開き、
「お初にお目にかかります。」
会釈したのは、あの初老の男(宮廷魔術師)だった―。
総帥が左斜め前の方角に視線を送っている。
ヒーゴン軍の老将である【騎士】たちと、“隠密隊”の100名が、残る二柱を討ち取ったようだ。
敵兵の多くが恐れをなして、散り散りに逃げていく。
一方で、その場に踏みとどまり、徹底抗戦の構えを見せている気骨ある者らもいる。
「さて…、どう動きますかね?」
「むこうの親玉は。」
セルグの質問に、
「よほどの馬鹿でなければ、ここでの激突は、一旦、避けて、自分の城に立て籠り、援軍を待つじゃろうな。」
清虎が答えた。
その予想通り、[南陸第十神国]の王が、全軍を退却させ始めたのである。
「追わずともよい!」
「戦後処理に掛かれぇ!」
侍王の指示が、ヒーゴン軍の隅々まで伝えられていく…。
王城にて。
[玉座の間]に在る豪華な椅子に腰掛けた神が、側に控えている初老の男に、
「東と西、それから北の神国に、我が名で応援を要請せよ!」
と、命令した。
これを受けた男性は、黒マントのフードを被っている。
おそらく、“宮廷魔術師”であろう。
「はッ!」
頭を下げた男は、何かしら考えている顔つきになったが、王たる一柱には表情を窺うことが出来なかった。
現在――。
この王都に設置されている東西南北の門前に、ヒーゴン軍が布陣している。
南側の野営場では、紫蓮たち“近衛兵”が、いつものように訓練しているみたいだ。
そこには、幸の長女である幸彩に、晴清の息子たち晴虎&清斗の姿もあった。
ちなみに、来夢と権蔵は、サイズの合う軍服やブーツを支給してもらったようだ。
すぐ近くの、軍議用のテント(ゲル)には、主だった面子が揃い踏みしている。
「調査の結果、都にいる軍勢は15万ほどのようです。」
「他は、どこかしらに避難したのでしょう。」
そう告げた“影”に、
「うむ。」
頷いた総帥が、
「こちらの死者は、3万前後じゃったな。」
と確認した。
これに、
「はい。」
「ヒーゴン軍は、およそ42万となっています。」
晴清が述べたのである。
「力責めで陥とすのは可能じゃが、民衆が巻き添えになる故、それは愚策じゃのぉう。」
「かと言って、兵糧が尽きるのを待っている間に敵の援軍が到着すれば、挟み撃ちにされてしまおう…。」
「となれば、翼や羽を有している者らが上空で撹乱している隙に、隠密隊を城に潜入させるか。」
「いや…、敵の王が、どれぐらい強いかまでは分からんから、危険やもな。」
清虎が黙って考え込んでいったところ、表から、
「失礼します!」
「総帥に、お目通りを願っている者がいます。」
との声が聞こえてきた。
「誰じゃ?」
訊ねた侍王に、
「は、なんでも、南陸第十神国の“神次”だそうでございます。」
一兵卒が返す。
テント内がザワつくも、
「よかろう、なかに入れよ。」
と、清虎が許可したのである。
出入口を開き、
「お初にお目にかかります。」
会釈したのは、あの初老の男(宮廷魔術師)だった―。
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