GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
55 / 294
― 第二章・それぞれの成長 ―

第55話 黒兎

しおりを挟む
敵方から〝カ――ン!〟〝カ――ン!〟と鐘の音が聞こえてきた。

これを合図に前線の兵どもが退がっていく。

それと入れ替わって最後尾の軍が悠々と進んで来る。

「親玉のお出ましか?」

セルグの問いに頷いた“影”が、

「この国の王と、その子息ら、通称“四神将ししんしょう”だ。」

と述べた。

「四神将ねぇ。」
「なんか、ダサくない?」

鼻で笑ったのはフーリィである。

千代ちよが、

「ま、連中の感覚は置いといて、油断は禁物だよ。」

と、皆の気を引き締め直す。

そこへ、伝令が駆けてきた。

先鋒隊を率いている【騎士】の配下との事で、20代後半ぐらいの男性だ。

「大隊長より、〝あれら・・・の左方は我々が受け持つという認識で宜しいか?〟と、総帥へのご確認でございます。」

そう報せた彼に、

「ふむ…、良かろう。」
「ならば、右側の二部隊は儂らが相手をしようぞ。」

と告げる清虎きよとらだった…。


味方の左翼軍に合流したさちが、馬上から結界を張っている。

なかなかに広範囲のようだ。

他にも、あちらこちらに大小様々なドーム型の結界が見受けられる。

“成れの果て”の一体であるワーフル(狼型)が、近くに居る兵士たちに、槍で刺されたり、刀で斬られる度に、幅5㎝×長さ50㎝の[紫色の線光ビーム]を、大量に撃っていた。

ワーウルフの傷は、毎回、向こうのビショップが【ヒール】で治しているみたいだ。

「結界を解かないと攻撃できないし、解いたら危険だしで、面倒ね。」

眉をひそめて、

「あの狼を囲んでいる敵兵を排除できさえすれば、あとはどうにか出来るんだけど…。」

軽く〝ふぅー〟と息を吐いた幸の背後から、

「ならば、わたくしどもにお任せください。」

と、女性が声を掛けた。

背丈は165㎝くらいだろう。

黒装束を身に纏っている。

顔には、黒い兎の半面を被っており、その耳や目元などには赤色で模様が描かれていた。

振り返った幸が、

「あら、あなたは確か、“影”の所の…。」

と尋ねた。

ちなみに、こちらは、巫女装束に銀の胸当て/籠手/脛当てを装備している。

武器は “薙刀”で、その柄には鮮やかな装飾が施されていた。

また、下ろした髪を後頭部で一本に束ねており、白布と銀で作られたハチマキ状の額当てを結んでいる。

そんな幸に、兎面かつアサシン系の一種である【くノ一】が、

「は!隠密隊の副長、“跳風はねかぜ”にございます。」

と、会釈した。

勿論、偽名である。

この部隊の大幹部たちは、それぞれに何かしらの動物の半面と、仮の名を用いているそうだ。

なにはともあれ、跳風の側には100名ほどの部下が控えている。

「それじゃあ、頼もうかしら。」

との幸に、

「でしたら、一瞬だけ結界を解いて戴けると有り難いです。」
「我らが飛び出せるように。」

と跳風が、お願いするのであった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...