46 / 303
― 第二章・それぞれの成長 ―
第46話 動向
しおりを挟む
戦の翌日、南方領主の長男と次男に長女が、自国の王都に辿り着いた。
ちなみに、婿養子であった彼らの父親は、5年ぐらい前に病死している。
神とて完璧ではなく、病にかかるらしい。
白い石を基調に金の装飾を施している王城の、“玉座の間”にて――。
南方領主の子息らが片膝を床に着きながら深々と頭を下げている。
大きな玉座には、50代くらいに見受けられる男が腰掛けていた。
背中から1対の翼が生えている彼もまた“神”であるため、実年齢は不明だ。
身長は、おそらく、4Mに達するであろう。
その頭には冠を被っている。
「それで逃げ込んできたと?」
と口を開いた男神に、三柱が顔面蒼白になりながら、
「は、その…、申し訳ございません。」
「領主が戦死してしまい、混乱した軍勢を制御できませんでしたもので。」
「挽回の機会をお与えくだされば、ヒーゴン軍を撤退させて御覧に入れますので、何卒ご容赦を。」
と、それぞれに窺った。
「ふ…む。」
「ならば、我が手足となり、働いてもらうとしよう。」
「連れていけ。」
との命令に従い、その場に待機していた城兵たちが、彼らの両脇から腕を掴んで引きずっていく。
「何を?!」
と動揺する面子に、男神が、
「己らには、餌になってもらう。」
「優秀な戦闘員をつくるために。」
と、告げる。
〝ハッ!〟と何かを察した三柱が、
「お、お止めください!!」
「どうか、ご慈悲を!!」
「陛下ぁー!!」
と懇願するも、聞き届けてもらえない。
陛下と呼ばれた神こと[南陸第十神国]の“王”が、側に控えていた初老の男に、
「南方領土を奪還する故、軍勢を整えよ。」
「一ヶ月後には出陣いたす。」
と、指示を出した。
それから一週間が経ち、城の近くの神社に、ラルとヴォニーが赴いていた。
どちらも、スーツの喪服を着用している。
目的は、ヒーゴンの新国主である政虎が建てさせた保次とバンヌの墓参りであった。
神主が供養する背後で、二名が、お辞儀している。
墓石に向かって…。
一方、南方領土の都に在る城には、清虎を始め、三千ほどの兵が常駐していた。
それ以外は入りきれないので、都を囲むように野営してもらっているようだ。
城内の一室にて、“影”が隠密隊からの報告を、侍王に伝えていた。
「およそ三週間後にのぉ…。」
「して? 敵数は??」
と訊ねる総帥に、
「まだ確かではありませんが、50万近くになるやもしれません。」
と、影が答える。
「対して、こちらは8万前後か。」
「ちと、分が悪いのぉ。」
「行ったり来たりさせてしまうが仕方ない、本国へと連絡しておこう。」
と眉間にシワを寄せる清虎だった―。
ちなみに、婿養子であった彼らの父親は、5年ぐらい前に病死している。
神とて完璧ではなく、病にかかるらしい。
白い石を基調に金の装飾を施している王城の、“玉座の間”にて――。
南方領主の子息らが片膝を床に着きながら深々と頭を下げている。
大きな玉座には、50代くらいに見受けられる男が腰掛けていた。
背中から1対の翼が生えている彼もまた“神”であるため、実年齢は不明だ。
身長は、おそらく、4Mに達するであろう。
その頭には冠を被っている。
「それで逃げ込んできたと?」
と口を開いた男神に、三柱が顔面蒼白になりながら、
「は、その…、申し訳ございません。」
「領主が戦死してしまい、混乱した軍勢を制御できませんでしたもので。」
「挽回の機会をお与えくだされば、ヒーゴン軍を撤退させて御覧に入れますので、何卒ご容赦を。」
と、それぞれに窺った。
「ふ…む。」
「ならば、我が手足となり、働いてもらうとしよう。」
「連れていけ。」
との命令に従い、その場に待機していた城兵たちが、彼らの両脇から腕を掴んで引きずっていく。
「何を?!」
と動揺する面子に、男神が、
「己らには、餌になってもらう。」
「優秀な戦闘員をつくるために。」
と、告げる。
〝ハッ!〟と何かを察した三柱が、
「お、お止めください!!」
「どうか、ご慈悲を!!」
「陛下ぁー!!」
と懇願するも、聞き届けてもらえない。
陛下と呼ばれた神こと[南陸第十神国]の“王”が、側に控えていた初老の男に、
「南方領土を奪還する故、軍勢を整えよ。」
「一ヶ月後には出陣いたす。」
と、指示を出した。
それから一週間が経ち、城の近くの神社に、ラルとヴォニーが赴いていた。
どちらも、スーツの喪服を着用している。
目的は、ヒーゴンの新国主である政虎が建てさせた保次とバンヌの墓参りであった。
神主が供養する背後で、二名が、お辞儀している。
墓石に向かって…。
一方、南方領土の都に在る城には、清虎を始め、三千ほどの兵が常駐していた。
それ以外は入りきれないので、都を囲むように野営してもらっているようだ。
城内の一室にて、“影”が隠密隊からの報告を、侍王に伝えていた。
「およそ三週間後にのぉ…。」
「して? 敵数は??」
と訊ねる総帥に、
「まだ確かではありませんが、50万近くになるやもしれません。」
と、影が答える。
「対して、こちらは8万前後か。」
「ちと、分が悪いのぉ。」
「行ったり来たりさせてしまうが仕方ない、本国へと連絡しておこう。」
と眉間にシワを寄せる清虎だった―。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる