GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
42 / 300
― 第二章・それぞれの成長 ―

第42話 打開

しおりを挟む
敵どもを倒していく紫蓮しれんたちに、千代ちよらが追い付いた。

「いきなり走り出して、どうし」と言いかけた千代が、保次やすじとバンヌの遺体に気づき、金時きんとき・フーリィ・セルグも口を閉ざす。

更に、彼女たちの後ろから来た清虎きよとらが、馬上で、

「なんじゃ、なんじゃ、一体?」
「勝手に行動しおって!」

と立腹するも、即座に状況を理解して、

「成程、の。」
「保次に、バンヌが、逝ってしもうたか…。」

と、哀しんだ。

しかし、感傷に浸る間もなく、〝ハッ!〟とした侍王が、

「金時! 結界を張れぃッ!!」

と命令する。

狸の獣人である金時が条件反射的に展開した直径10M×高さ5Mでドーム状の結界に、直径1Mの白い光線ビームが、

ドンッ!!

と、ぶつかった。

ラルとヴォニ―を包囲していた連中を既に一掃し終えている結界内にて、その中心に、皆が集まっていく。

その間にも、保次の命を奪ったあの神が、結界に近づきながら、

「このッ! 出て来いッ! 卑怯だぞッ!」
「僕が殺してやるから、結界を解けよッ!」

と怒鳴っている。

ズバンッ!

ズドンッ!

と、光線を当てられ続けている結界内で、狼の獣人であるフーリィが、

「やれやれ、なんだか、ただの“ガキンチョ”って感じだねぇ。」

と呆れ顔になった。

「ふぅむ…。」
「ともあれ、あ奴が疲れるのを待つしかなさそうじゃのぉ。」

と、述べる総帥に、〝フ〟と空を見上げたセルグが、

「いや、そうでもなさそうですよ。」

と伝える。

誰もが「ん?」と首を傾げたところ、上空から、

ヒュゥ――――ッ!!

と、斜めに急降下してくる者がいた。

身長は1.9Mくらいだろう。

着物系の黒装束を身に纏っている鷹の獣人が、神の右肩を左足で、右脇腹を右足で、

ドォンッ!

と押して、地面に倒し、そのまま乗っかったようだ。

これに、金時とフーリィが揃って、

信義のぶよし!!」

と、声をあげ、総帥が「ほ、ほぉう。」と笑みを浮かべた。

余談になるが…、金時/フーリィ/信義は、もう2体の獣人たちと一緒に、清虎の妻であった彩永さえに仕えていたそうだ。

彩永が他界した後に、金時とフーリィは侍王の近衛兵となり、アサシン(忍者)である信義は隠密隊に所属した。

他の2体は「2~3年ほど諸国を旅して見聞を広めとうございます。」との理由で、“武者修行”に出ているらしい。

さて、話しを戻そう…。

横倒れで押さえ付けられている神が、どうにかこうにか左手で、

「このッ!」

と放った直径1Mのビームを、鷹の獣人が大きなバックステップでかわした。

上体を起こしつつ、

「くそッ! 邪魔だッ!」

と、兜を脱ぎ捨て、

「鳥の分際で生意気だぞ!」
「あの世に送ってやるから、向こうで後悔しろッ!!」

と目をギラつかせる神の背後から、

「お前がな。」

と、誰かが告げたようだ。

「何ッ?!」

と驚いた神が振り返ろうとする。

その首を、後ろから、濃い紫色の煙のようなものを発している刀身で、

ズブシュッ!!

と、刺したのは、隠密隊の指揮官である“影”だった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

双子の姉妹は無双仕様

satomi
ファンタジー
双子の姉妹であるルカ=フォレストとルリ=フォレストは文武両道というか他の人の2~3倍なんでもできる。周りはその事実を知らずに彼女たちを貶めようと画策するが……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...