GOD SLAYER’S

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
41 / 296
― 第二章・それぞれの成長 ―

第41話 悲しみと怒りの交錯

しおりを挟む
敵の攻撃に備えて、ラルと、ヴォニ―が、背中を預け合う。

「ごめんね…、私が見境なくした所為で。」

と謝るラルに、ヴォニ―が優しく、

「ま、気にするな。」

と、声を掛ける。

「ふぅ――ッ。」

と息を吐いたラルが、

向こう・・・に行っても、また皆で仲良く楽しく過ごそうね。」

と、力なく微笑み、

「ああ。」

とヴォニ―が憂いながら頷く。

彼女らは〝もはや助かるまい〟と完全に諦めているようだ。


包囲している連中が〝ジリッ、ジリッ〟と滲みよってきた。

その南側から、幅5㎝×長さ4Mの“雷”が、横一文字で、

ビュンッ!

と、飛んできて、7~8人の敵に当たり、

ビリビリビリビリィッ!!

と感電させたのである。

膝から崩れ落ちていくソイツラの先には、刀を手に鬼の形相で駆けてくる紫蓮しれんの姿が見えた。

その左斜め後ろにはスライムの来夢らいむが、右斜め後ろにはゴブリンの権蔵ごんぞうが、並走している。

更には、永虎ながとら幸永歌さえか永美香えみか凛琥りくが、ほぼ横一列で追っているようだ。

先ほど倒れた奴らの左にいる男の顔に、来夢が左の飛び蹴りを〝ズバン!〟ヒットさせ、その近くにいた別の敵に右かかとでの回し蹴りを〝ガツン!〟と当てた。

権蔵は、右側にいた連中に対して、口から直径30㎝の“火の玉”を放つ。

紫蓮たちに倒されて、

「ぐうぅッ。」

と、呻きながら立ち上がろうとするソイツラの足元に、幸永歌が直径2Mの魔法陣を展開した。

そこから、最小幅20㎝×最大幅2M×高さ4Mの“渦巻く風”が出現して、敵を吹き飛ばしたのである。

そうして出来た道を、クレリックの永美香が通過していく。

いささか呆気に取られている西側の敵たちに向けて、永虎が左のてのひらを突き出す。

すると、奴らの膝下あたりに、オレンジ色で直径40㎝の球体が〝ス――ッ〟と現れて、次の瞬間には、

ドッゴオォンッ!!

と爆発し、10人ぐらいを弾いたのである。

東側に構えている連中には、凛琥が、右の掌から最大幅10㎝×長さ20㎝でクリスタル形の“氷の塊”を50発くらい発射して、4~5人にヒットさせた。

ちなみに、ダメージを負っているのは、人間だけでなく、獣人や半獣に、サーヴァントの魔物も、含まれている。


紫蓮たちが肉弾戦での乱闘を展開しつつ、幸永歌が火・水・氷・風・雷・土といった魔法を次々に発動させていく。

そんな喧騒のなか、保次やすじとバンヌを診た永美香が、首を横に振った。

「そっか…。」

と、涙を浮かべるラルを、ヴォニ―が、

「まだ終わってないよ。」
「やっぱり私たちは生き残って、彼らを弔ってあげよう。」
「きちんと、丁寧に、さ。」

と促す。

それを受けて、

「……だね。」
「うん!」
「そうしてあげよう!!」

と、活力を取り戻すラルであった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~

羽月明香
ファンタジー
魔女は災いを呼ぶ。 魔女は澱みから生まれし魔物を操り、更なる混沌を招く。そうして、魔物等の王が生まれる。 魔物の王が現れし時、勇者は選ばれ、勇者は魔物の王を打ち倒す事で世界から混沌を浄化し、救世へと導く。 それがこの世界で繰り返されてきた摂理だった。 そして、またも魔物の王は生まれ、勇者は魔物の王へと挑む。 勇者を選びし聖女と聖女の侍従、剣の達人である剣聖、そして、一人の魔女を仲間に迎えて。 これは、勇者が魔物の王を倒すまでの苦難と波乱に満ちた物語・・・ではなく、魔物の王を倒した後、勇者にパーティから外された魔女の物語です。 ※衝動発射の為、着地点未定。一応完結させるつもりはありますが、不定期気紛れ更新なうえ、展開に悩めば強制終了もありえます。ご了承下さい。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...