GOD SLAYER’S

ネコのうた

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― 第二章・それぞれの成長 ―

第34話 勝敗

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凛琥りくが突き出した右のてのひらから、最大幅50㎝でいびつなクリスタル形の“氷”が、

ビュオッ!

と、紫蓮しれんめがけて飛んでいく。

一方、紫蓮は、鉄刀に、

バチッ!バチバチッ!バチバチィッ!

と“雷撃”をまとわせた。

紫蓮が、両手で握った鉄刀を、上から下へと振るい、

ズバァアンッ!!

と、接近した氷を叩く。

これによって、全体に雷が駆け巡った氷が、

ズッバッボォウッ!!

と複数に砕かれ、地面に、

ドスンッ!

ズドンッ!

と、落ちていき、〝スゥーッ〟と消えたのであった。

「なッ?! お前、“武器伝導”を使えるのか?」

と少なからず驚く凛琥に、

「なんだ? 扱えねぇのか??」

と、紫蓮が返す。

「さっきから、舐めた態度ばかり取りやがってぇッ!」
「泣いて謝っても、許してやんないからなッ!!」

と怒りの形相になった凛琥が、ダッシュで間合いを詰めていき、顔を狙って、鉄剣を右から左へと薙ぎ払う。

だが、頭を〝シュッ〟と下げてかわした紫蓮に、胸の真ん中あたりを、

ドンッ!

と、鉄刀で突かれて、

「がはッ!!」

と苦悶の表情になった凛琥が両膝を屈し、

「ゲホッ! ゲホゲホッ!」

と、咳き込んだ。

そんな彼の、首の右側に、紫蓮が鉄刀を〝ピタッ〟と添えたところで、審判の金時きんときが、

「それまで!」
「勝負あり!!」

と告げたのだった。


凛琥が、右の握り拳で、自身の太腿を、〝ドン!ドン!〟と叩きながら、

「くそッ! くそぉッ!」

と、悔しがっている。

彼の右側から歩いてきた永虎ながとらが、

「立て、凛琥。」

と声を掛けた。

永虎は、白のワイシャツに、赤いネクタイと、カーキ色のスーツを着ている。

ジャケットは膝あたりまでのながさがあり、ショートブーツとロングコートは黒い。

ちなみに、コートのボタンは、一つも締めていなかった。

その永虎が、

「こういうのは、後腐れが無いように、礼で終わるべきだ。」
「勝った側も、負けた側も、互いを称えて。」

と、促すも、凛琥は、

「…………。」

と黙って、動こうとしない。

軽く〝ハァ〟と溜息をいた永虎が、

「お祖父じい様も見ているぞ。」

と、述べたところ、〝ピクッ!〟と反応を示した凛琥が、うつむいたまま立ち上がって、

「……した。」

と呟きながら、〝ペコッ〟と会釈する。

それに対して、紫蓮は、きちんと、お辞儀した。

左手で、凛琥の背中を押しつつ、

「さぁ、行こう。」

と、誘導した永虎が、紫蓮に視線を送り、

「いろいろと、すまなかったな。」

と申し訳なさそうにしたのである。

清虎きよとらが、

「ふむ。」

と、うなずき、

「儂らは鍛錬の邪魔になるじゃろうから、これで退散するかのッ。」

と孫たちを先頭にして出入口へと向かう。

〝フ〟と足を止めた侍王が、紫蓮に、

「手加減せず、よく、やってくれた。」
「あ奴らは裕福かつ周りに守られた環境で育った所為か、永虎と、その兄以外は、精進しようとせん。」
「あまり歳の変わらないお主に、いとも簡単に負けてしもうた事実が、これから先、良い刺激になっていくじゃろうて。」
「凛琥だけではなく、他の者たちものッ。」

と、伝え、微笑んだのであった―。
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